日本の国技として親しまれている相撲。テレビ中継で見かける機会も多いですが、実は知られざるルールや歴史がたくさん隠されているのをご存じでしょうか?力士たちが激しくぶつかり合う姿の裏には、日本古来の伝統や、思わず誰かに話したくなるような面白いエピソードが詰まっています。
今回は、明日からの相撲観戦がもっと楽しくなるような、とっておきの雑学を30個ご紹介します。初心者の方から好角家の方まで、ぜひ最後までお付き合いくださいね。
1.土俵の下の埋蔵物
神聖な場所とされる土俵ですが、実はその中心の地下には「鎮め物(しずめもの)」と呼ばれる供物が埋められています。その中身は、スルメ、昆布、勝栗、洗米、塩、カヤの実の6種類。これらは五穀豊穣や土俵の安全を祈願して、本場所が始まる前の土俵祭りで埋納されます。力士たちが踏みしめる足元には、神様への捧げ物が静かに眠っているのですね。
2.塩を撒く深い意味
力士が取組前に塩を撒く姿は有名ですよね。これは単なるパフォーマンスではなく、土俵の邪気を払う「清め」の意味があります。さらに、かつては怪我をした際に塩を塗って消毒していた名残もあり、殺菌効果を期待して撒かれているという側面も。ちなみに、1日に撒かれる塩の量はなんと45キログラムにも及ぶそうですよ。
3.まわしは洗わない
力士が締めている稽古用や本場所用の締め込み(まわし)は、基本的に洗濯をしません。洗ってしまうと生地が弱くなったり、運が落ちると考えられていたりするためです。ではどうやって手入れをするのかというと、アルコール消毒をして天日干しにするのが一般的。使い込むほどに体に馴染み、汗と伝統が染み込んだ「相撲の匂い」が作られていくのです。
4.行司の短刀の覚悟
勝負を裁く立行司(最高位の行司)の腰元を見ると、短刀が差されていることに気づくでしょう。これには「もし判定を差し違えた(間違えた)場合は、切腹して責任を取る」という凄まじい覚悟が込められています。現在では実際に切腹することはありませんが、差し違えた場合には進退伺いを出すのが習わしとなっており、命がけで勝負を見守っているのです。
5.横綱だけの特権
大関までは番付が下がる可能性がありますが、最高位である横綱だけは一度なると降格がありません。その代わり、成績不振が続けば自ら引退を迫られるという厳しい地位でもあります。また、横綱だけが腰に白い注連縄(しめなわ)を巻くことを許されており、これは横綱自身が「御神体」であることを示しています。
6.給料は十両から
相撲界は完全な実力社会です。実は、力士としてお給料(月給)がもらえるのは、「関取」と呼ばれる十両以上になってから。それ以下の幕下、三段目、序二段、序ノ口の力士たちは「力士養成員」と呼ばれ、場所ごとの手当などはありますが、毎月の給料はありません。関取になれるかどうかが、天国と地獄の分かれ目なのです。
7.ちゃんこの定義
相撲部屋の食事といえば「ちゃんこ鍋」が有名ですが、本来「ちゃんこ」とは力士が作る食事全般を指す言葉です。つまり、鍋料理だけでなく、力士が作ればカレーもハンバーグもすべて「ちゃんこ」と呼びます。鍋が主流なのは、一度に大量に作れて、肉や野菜をバランスよく摂取でき、体を温めて代謝を良くするのに適しているからです。
8.髷(まげ)の効果
力士の特徴的な髪型である髷(まげ)には、見た目の美しさだけでなく実用的な役割もあります。それは、土俵下に転落したり頭からぶつかったりした際に、クッションとなって頭部を守るという役割です。特に十両以上の力士が結う「大銀杏(おおいちょう)」は、先が銀杏の葉のように広がっており、高い防護効果と格式を兼ね備えています。
9.懸賞金の手刀
勝った力士が懸賞金を受け取る際、手刀(てがたな)を切る仕草をしますよね。あれは「心・技・体」の三神に感謝を捧げていると言われています。左、右、中央の順に手を動かし、最後に懸賞金を受け取ります。ちなみに、懸賞金の封筒の中身は全額現金ではなく、一部は税金対策として協会が預かる仕組みになっています。
10.決まり手は82手
相撲の勝敗を決する技を「決まり手」と呼びますが、日本相撲協会が定めている決まり手は現在82手あります。さらに、勇み足や腰砕けなどの「非技(ひぎ)」が5つあり、合計で87種類の勝ち方が存在します。寄り切りや押し出しが一般的ですが、中には「撞木反り(しゅもくぞり)」や「合掌捻り(がっしょうひねり)」といった、滅多に見られない幻の技もあるんですよ。
11.呼出の仕事は多忙
土俵上で力士の名前を呼び上げる「呼出(よびだし)」さん。実は彼らの仕事は呼び上げだけではありません。土俵の築造や補修、太鼓叩き、懸賞幕を持って回る、力士に水やタオルを渡すなど、競技運営の裏方全般を担っています。彼らがいないと相撲興行は成り立たないと言われるほど、多才で重要な存在なのです。
12.弓取り式の起源
全取組終了後に行われる「弓取り式」。勝者の舞として知られていますが、その起源は平安時代にまで遡ります。もともとは相撲の勝者に弓を与えた儀式が始まりとされ、現在では結びの一番の勝者に代わって、作法を心得た力士が弓を振ります。この役を務める力士は、横綱のいる部屋や一門から選ばれることが多いです。
13.化粧まわしの額
十両以上の関取が土俵入りで着用するきらびやかな「化粧まわし」。これらは後援会などから贈られることが多いのですが、その値段は安くても1本100万円以上、高価なものだと数千万円から億単位になることもあります。金糸や銀糸、刺繍をふんだんに使い、博多織や西陣織で作られたまさに「動く芸術品」なのです。
14.股割りの重要性
新弟子が入門して最初に泣かされるのが「股割り」です。開脚して胸を床につける柔軟運動ですが、これは怪我を防ぐために絶対に必要なこと。体が柔らかければ、投げられた際にも受け身が取りやすく、大怪我のリスクを減らすことができます。どんなに体が大きくても、股割りができなければ一人前の力士とは認められません。
15.砂かぶり席の謎
土俵に最も近い「溜席(たまりせき)」は、通称「砂かぶり」と呼ばれます。ここは迫力満点の特等席ですが、実は飲食禁止、携帯電話の使用禁止、そして万が一力士が落ちてきても怪我は自己責任という厳しいルールがあります。本来は「維持員」と呼ばれる相撲協会の支援者のための席であり、観戦には高いマナーが求められる場所なのです。
16.座布団は投げるな
横綱が格下の力士に負ける「金星」が出た際など、観客席から座布団が舞う光景を見たことがあるかもしれません。しかし、実は座布団投げは禁止行為です。観客に当たって怪我をする恐れがあるため、館内放送でも「座布団を投げないでください」と注意喚起されています。興奮してもグッとこらえて、拍手で健闘を称えましょう。
17.猫だましの効果
立合いの瞬間に相手の目の前で手を叩く奇襲技「猫だまし」。相手を驚かせて一瞬目をつぶらせるのが狙いですが、これは決まり手ではありません。あくまで相手の隙を作るための陽動戦法です。失敗すると無防備な状態をさらすことになるため、使う側にも大きなリスクがある、一か八かの作戦といえます。
18.相撲字の縁起
番付表などに書かれている独特の文字は「相撲字(すもうじ)」と呼ばれます。この文字は太く、隙間なくびっしりと書かれているのが特徴。これには「お客さんが隙間なく入りますように」という満員御礼の願いが込められています。行司さんが筆を使って書き上げるこの伝統文字も、相撲文化の大切な一部です。
19.千秋楽の意味
本場所の最終日(15日目)を「千秋楽(せんしゅうらく)」と呼びます。この言葉はもともと雅楽の曲名で、演奏の最後に「千秋楽」という曲が奏でられたことに由来します。「千秋」は千年、「楽」は楽しみや音楽を意味し、長く続く繁栄と平和を願う、とてもおめでたい言葉が語源となっているのです。
20.力士の昼寝仕事
力士にとって、稽古の後の昼寝はサボりではなく立派な「仕事」です。激しい朝稽古の後にちゃんこをたっぷり食べ、すぐに寝ることで、摂取した栄養を効率よく体に吸収させ、体を大きくすることができます。食べた後に動いてしまうとエネルギーが消費されてしまうため、あえて寝ることで巨大な体を作り上げているのです。
21.教習所へ通う
新弟子たちは入門すると、半年間「相撲教習所」に通うことが義務付けられています。ここでは実技の稽古だけでなく、相撲の歴史、運動医学、一般社会の常識、さらには書道や詩吟といった教養まで学びます。力士はただ強いだけでなく、品格や教養も身につけるべきであるという相撲道の精神が表れています。
22.断髪式のハサミ
力士が引退する際に行われる断髪式。髷(まげ)にハサミを入れますが、一度で切り落とすのではなく、何百人もの関係者が少しずつハサミを入れていきます。これには、これまで応援してくれた人たちへの感謝と、力士としての魂との別れを惜しむという意味があります。最後に師匠が止め鋏(どめばさみ)を入れて髷を切り落とし、第二の人生が始まります。
23.雷電の強すぎ伝説
江戸時代に活躍した伝説の力士「雷電爲右エ門(らいでんためえもん)」。彼の勝率はなんと9割6分2厘という驚異的な数字を誇ります。あまりに強すぎたため、「張り手」「かんぬき」「鉄砲」という技を禁じられたという逸話があるほど。それでも勝ち続けた彼は、間違いなく相撲史上最強の力士の一人と言えるでしょう。
24.土俵の土の種類
大相撲の土俵に使われている土は、どこにでもある土ではありません。伝統的に「荒木田土(あらきだつち)」と呼ばれる、粘り気が強くて滑りにくい特別な土が使われています。現在は埼玉県川越市などで採取されたものが使用されており、その粘土質の土が、激しい動きの中でも崩れにくい強固な土俵を作り上げているのです。
25.制限時間の決まり
仕切り直しを繰り返して気合を高める時間には、実は制限時間があります。幕内力士なら4分以内と決まっており、時間が来ると行司が「時間です」と声をかけます。昔は制限時間がなく、お互いが納得するまで延々と仕切りが続いた時代もありましたが、現在はテレビ放送や進行の都合もあり、厳格に管理されています。
26.不知火と雲龍
横綱の土俵入りには「雲龍(うんりゅう)型」と「不知火(しらぬい)型」の2種類があります。雲龍型は攻守兼備を表し、左手を胸に当て右手を伸ばすスタイル。不知火型は攻撃型を表し、両手を広げるスタイルです。かつて不知火型は「短命」というジンクスがありましたが、近年では白鵬などが長く活躍し、その不吉なイメージを払拭しました。
27.初っ切りとは
巡業などで見られる「初っ切り(しょっきり)」をご存じでしょうか?これは相撲の禁じ手や珍しい決まり手を、コントのように面白おかしく紹介する見世物です。力士が足を使ったり、行司を驚かせたりと、本場所では絶対に見られないコミカルな動きが人気で、会場はいつも大きな笑いに包まれます。
28.水入りのルール
取組が長引いて両者が動かなくなった場合、行司が一時中断させることを「水入り」と言います。力士は一度土俵を降りて水を飲み、休憩してから全く同じ体勢で取組を再開します。行司は足の位置や組み手を正確に記憶していなければならず、非常に高い集中力が求められる場面です。それでも決着がつかない場合は引き分け(再試合)になることも。
29.国技館の焼き鳥
両国国技館の名物といえば「国技館やきとり」。実はこれ、国技館の地下にある工場で作られています。なぜ焼き鳥なのかというと、鶏は「二本足で立ち、手をつかない」ことから、相撲において縁起が良い動物とされているためです。冷めても美味しく食べられるように独自の製法で作られており、観戦のお供として大人気です。
30.四股名の由来
力士の名前である「四股名(しこな)」。これには師匠からの一字をもらったり、出身地の地名を入れたり、あるいは「海」「山」「風」といった自然を表す言葉を使ったりと、様々な由来があります。本名で取る力士もいますが、由緒ある四股名を継承することは、その名に恥じない活躍を誓う決意の表れでもあるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、相撲にまつわる30の雑学をご紹介しました。土俵の下に埋められた鎮め物から、まわしを洗わない理由、そして国技館の焼き鳥の秘密まで、知れば知るほど相撲の奥深さを感じていただけたのではないでしょうか。
次にテレビや国技館で相撲を見る際は、ぜひこれらの雑学を思い出してみてください。「あ、今、手刀を切った!」「あれが呼出さんの仕事か」といった新しい発見があり、今までとは違った視点で楽しめるはずです。ぜひ周りの方にも教えてあげて、一緒に相撲談義に花を咲かせてみてくださいね。