貴方は今このページを開いたということは、ゴキブリの真実を知る覚悟をお持ちであることと思います。
とは言っても読みはじめは、やっぱりGのことを知らないほうがよかったかも‥そんな気持ちがよぎることもあるかもしれません。けれども終盤まで読み進めれば、きっとあなたにとって有益だと感じてもらえるはずです。
同時に「知らないほうがよかった」という気持ちも確信に変わるかもしれませんが……。いずれにせよ知らないほうがいいなんてことは世の中にありません。「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」。このことわざを心に留め、ぜひ最後までお付き合いくださいな。
生命力の強いゴキブリの歴史
1. 3億年前から存在した大先輩

約3億年前、恐竜が地上を支配するよりも遥か昔、古生代石炭紀に彼らは誕生しました。人類(新人類)の歴史がせいぜい20万年であることを考えると、彼らはその1500倍以上もの時間を生き抜いてきた「地球の大先輩」です。幾度もの大量絶滅期を乗り越えてきたその生存能力は、生物学的な奇跡と言っても過言ではありません。最新の2019年の研究では、現生ゴキブリ目の起源は約2億年前とする説もありますが、いずれにせよ太古の住人であることに変わりありません。
2. 姿を変えぬ生きた化石

約3億年の間、その姿形がほとんど変わっていないため、シーラカンスなどと同様に「生きた化石」と呼ばれています。多くの生物が環境に合わせて進化と淘汰を繰り返す中で、ゴキブリは太古の昔からすでに生物として「完成体」に近かったのです。あの平べったい体や頑丈な構造は、数億年前から変わらず機能し続けており、外見上の大きな進化を必要としなかったという事実は、ある種の畏敬の念すら抱かせます。
3. 縄文時代から共生していた

私たち日本人の祖先である縄文人も、実は彼らに悩まされていたのかもしれません。クロゴキブリとヤマトゴキブリは、縄文時代中期から後期(約5,300〜4,000年前)にはすでに住居に侵入し、共生していた可能性が高いことがわかっています。これは熊本大学などの研究チームが、土器の粘土に残った「卵鞘(らんしょう)の圧痕」を調べた世界初の研究で判明した事実です。彼らとの戦いは、有史以前から続く因縁のものなのです。
4. 人間の居住地に適応して進化

世界中で嫌われている害虫の代表格、チャバネゴキブリ。彼らは自然界の森林ではなく、完全に「人間の居住地」に適応する形で進化を遂げた特殊な種とされています。その起源については諸説ありますが、DNA解析などの研究により、アジア地域から広がったという説が有力視されています。人間が暖かく快適な住処を作れば作るほど、彼らにとっても快適な楽園を提供してしまっているという皮肉な現実があります。
5. 人類文明とともに世界へ拡散

チャバネゴキブリは自力で海を渡ったわけではありません。彼らは人類の貿易活動や軍事活動、輸送手段の発達という「文明の利器」に便乗して世界中に拡散していきました。古くはイスラム貿易やヨーロッパの東方貿易、そして近代における蒸気船や飛行機の発達が、その分布拡大に大きく影響しました。現代のグローバル社会において、彼らもまた世界を股にかけるトラベラーとして、荷物に紛れて国境を越え続けています。
意外な名前の由来と分類
6. 元は「御器かぶり」

今でこそ「ゴキブリ」という名称で定着していますが、元々は「ゴキカブリ」(蜚蠊)と呼ばれていました。この語源は、貴族の食器や神事の器を意味する「御器」(ごき)に、彼らが「かぶりつく(かじる)」虫であることから来ています。かつては食器に残ったデンプン糊などをかじっていた姿が名前の由来となったのです。平安時代の文献にもその記述が見られ、古くから家の中の厄介者として認識されていたことがわかります。
7. 誤植で名前が定着した

現在の「ゴキブリ」という名前が定着したきっかけは、なんと単純なミスでした。明治時代(1884年)に発刊された日本初の生物学辞典『生物学語彙』において、本来「ゴキカブリ」とすべきルビを、誤って「ゴキブリ」と振ってしまったのです。さらにこの誤植が訂正されずに増刷・再版され、教科書などにも掲載されたことで、いつの間にか「カ」が抜けた名称が正式名称として日本中に浸透してしまいました。
8. 学名は「放浪する黒」

日本でよく見かける大型の黒いゴキブリ、クロゴキブリ。その学名『Periplaneta fuliginosa』には、彼らの特徴が見事に表現されています。「Periplaneta」は「さまよい歩くもの」を意味し、「fuliginosa」は「すすけた」「黒く汚れている」という意味を持ちます。つまり「黒くすすけた放浪者」といったニュアンスです。夜な夜な家の中を歩き回るあの黒い影に、これほど相応しい名前はないでしょう。
9. ゴキブリは「G」

赤痢菌やサルモネラ菌などの病原体を運ぶ実害に加え、その不快な見た目と動きは人々に生理的な嫌悪感と恐怖を抱かせます。そのため、最近のネットスラングや日常会話では、名前を口に出すことすら忌避され、頭文字を取って「G」(ジー)と呼ばれることが一般的になりました。この呼び名は、恐怖の対象を直接呼ばずに暗喩する、現代人の「名前を呼んではいけないあの人」的な心理の表れとも言えます。
10. 4000種中、害虫はわずか1%

「ゴキブリ=害虫」というイメージが強いですが、実は冤罪に近い側面もあります。世界には約4000種類以上のゴキブリが存在しますが、その大半は森の中でひっそりと暮らしています。屋内に侵入し、人間に害を及ぼすのは、クロゴキブリやチャバネゴキブリなど、たった数種類、多くても30種類ほど。全体から見れば1%以下にすぎません。残りの99%は自然界の掃除屋として生態系を支える、無害な昆虫なのです。
最強説を裏付ける身体能力
11. 秒速で体長50倍を移動

ゴキブリを新聞紙で叩こうとして逃げられた経験は誰にでもあるでしょう。彼らは危険を察知すると、1秒間に体長の約50倍もの距離を移動できます。これは彼らの神経伝達速度が極めて速く、脳で考えるよりも先に体が反応する「反射」のシステムが発達しているためです。人間が筋肉を動かそうと意識する前に、彼らはすでにトップスピードで走り出しているのです。この驚異的な瞬発力こそが生存の要です。
12. 人間サイズなら新幹線並み

もしゴキブリが人間と同じ身長(170cm)だったとしたら、その走る速度はどれくらいになるでしょうか。換算すると、なんと時速300kmを超える新幹線の最高速度レベルに達すると言われています。しかも、徐々に加速するのではなく、静止状態から一瞬でその速度に達するのです。これほどの身体能力を持つ生物が、狭い台所の床を駆け抜けていると考えれば、我々が捕まえられないのも無理はない話かもしれません。
13. お尻の「尾角」で空気を読む

ゴキブリのお尻には「尾角」(尾肢)と呼ばれる2本の突起があります。ここには微細な感覚毛がびっしりと生えており、空気のわずかな動きをレーダーのように感知します。その感度は凄まじく、人間がスリッパを振り上げたり、新聞紙を振り下ろしたりする際に生じる、わずか0.001mm/sという極めて微弱な気流の変化さえ読み取ります。後ろから忍び寄ってもバレてしまうのは、この高性能レーダーのおかげです。
14. 三脚で安定走行

彼らが壁や天井を高速で走り回れる秘密は、その脚の運び方にあります。昆虫の脚は6本ですが、ゴキブリは常に3本の脚(右前・左中・右後、またはその逆)を接地させて三角形を作る「トライポッド歩行」を行います。これにより、常にカメラの三脚のように体を安定させることができ、凹凸のある場所や急な方向転換でもバランスを崩さずに走り続けられるのです。この歩行メカニズムは、災害救助ロボットの開発などにも応用されています。
15. 視力は悪い(0.1程度)

あんなに素早く逃げ回るゴキブリですが、意外なことに目はあまり良くありません。視力は人間に換算すると0.1程度とされ、ぼんやりとした明暗や大きな動きが分かる程度です。彼らの俊敏な回避行動は、視覚情報よりも、お尻の「尾角」による気流感知や、長い「触角」による嗅覚・触覚情報に大きく依存しています。だからこそ、音もなく静かに近づくことよりも、空気を動かさないように近づくことの方が難しいのです。
16. 弾力性に富むボディ

ゴキブリを叩いたと思っても、隙間に逃げ込まれて生きていたことはありませんか? 彼らの体は非常に平たく、かつ柔軟で弾力性に富んでいます。外骨格は硬いイメージがありますが、ゴキブリのそれは適度にしなるため、上からの衝撃を受け流すことができます。多少踏まれたり叩かれたりしても、外骨格がクッションとなって内臓を守り、ダメージを最小限に抑えて復活することができるのです。まさに生存に特化したボディです。
17. 厚みを半分以下に圧縮

彼らの体の柔軟性は、防御だけでなく侵入にも役立ちます。ゴキブリは背中と腹を押しつぶすようにして、体の厚みを平常時の半分以下にまで圧縮することができます。骨格の継ぎ目がスライドするようにできており、無理だと思われるような狭い隙間でも、体をペシャンコにして強引に潜り込むことが可能です。この能力がある限り、家中のあらゆる場所が彼らの隠れ家候補となってしまうのです。
18. 1ミリ以下も侵入可能

特に警戒すべきは、成虫よりも小さな幼虫や赤ちゃんゴキブリです。チャバネゴキブリの幼虫などは、1ミリメートル以下の隙間でも難なく通り抜けることができます。生まれたばかりの個体に至っては、わずか0.5mmの隙間(名刺数枚分)さえあれば侵入可能です。網戸のわずかな歪み、段ボールの隙間、排水溝の蓋のズレなど、私たちが見落としがちな微小な穴が、彼らにとっては正門のように開かれた入り口なのです。
19. 脚の先端に滑り止め

ゴキブリがガラス窓やツルツルのキッチンパネル、さらには天井までも自由に歩き回れるのはなぜでしょうか。彼らの脚の先端には「爪」だけでなく、「爪間盤(そうかんばん)」と呼ばれる吸盤のような器官があります。ここから特殊な油分を分泌し、表面張力を利用して壁面に張り付くことができるのです。この「天然のスパイクタイヤ」と「吸盤」のダブル機能により、あらゆる地形を走破する全地形対応能力を持っています。
20. 構造上、バック走行は苦手

無敵に見えるゴキブリにも、身体構造上の明確な弱点があります。それは「バック走行」ができないことです。前進や旋回は得意ですが、脚の関節の構造上、素早く後ろに下がる機能はありません。行き止まりに追い詰められれば、必ず旋回して向きを変えようとします。この習性を利用し、逃げ道の先に先回りして殺虫剤を撒いておく「待ち伏せ」戦法は、非常に理にかなった有効な駆除方法と言えます。
驚異の生命力
21. 水があれば1ヶ月以上生存

ゴキブリは変温動物であり、基礎代謝が低いため、エネルギー消費が極めて少ないエコな生き物です。そのため飢餓には滅法強く、水さえ摂取できれば、固形物の食料が一切なくても1ヶ月以上生存できることが実験で証明されています。中でも大型で生命力の強いワモンゴキブリの場合、水だけで平均89日間、つまり約3ヶ月も生き延びたという衝撃的なデータも存在します。兵糧攻めは彼らには通用しにくいのです。
22. 水なしでは意外と弱い

食べ物がなくてもしぶとく生きるゴキブリですが、弱点は「水」と「乾燥」です。水が一滴もない環境では、およそ1週間〜2週間程度で脱水症状を起こして死んでしまいます。彼らの体は油膜で覆われていますが、完全な保水機能はなく、乾燥した環境は大の苦手。だからこそ、彼らは常に湿気のある台所のシンク周りや風呂場、洗面所などを好んで生息場所として選ぶのです。水回りの水気を拭き取ることが一番の予防になります。
23. 頭がなくても1週間生きる
ホラー映画のような話ですが、ゴキブリは頭部を切断されても即死せず、その後1週間程度は生存し続けます。これは、人間のように脳が呼吸や血圧をコントロールしているわけではなく、腹部の「気門」で呼吸を行い、体内の神経節が基本的な反射を制御しているためです。また、血圧が低いため、首を切っても出血多量で死ぬことがありません。最終的には口がないため水を飲めず、渇きで死ぬことになります。
24. 白い液体の正体は「脂肪体」

ゴキブリを新聞紙などで潰した際、中から白いドロッとした液体が出てきてゾッとした経験はありませんか? あれは単なる体液や内臓ではなく、「脂肪体」と呼ばれる、肝臓と脂肪組織の役割を兼ね備えた重要な器官です。代謝や解毒を行うこの脂肪体にたっぷりと栄養を蓄え込んでいるからこそ、彼らは長期間の絶食にも耐えうる驚異的なスタミナを発揮できるのです。
25. 放射線に人間の10倍強い

「核戦争が起きてもゴキブリだけは生き残る」という都市伝説がありますが、これには科学的な根拠があります。ゴキブリは人間と比較して、致死レベルの放射線に対して約10倍〜15倍の耐性を持っています。放射線は細胞分裂が活発な時に最もダメージを与えますが、ゴキブリは脱皮の時以外は細胞分裂が遅いため、影響を受けにくいのです。ただし、ショウジョウバエなど他の昆虫に比べれば弱い方であり、最強ではありません。
26. 40分間息を止める

ゴキブリをトイレに流しても、数時間後にまた這い上がってくることがあります。これは彼らが極めて高い呼吸耐性を持っているからです。ゴキブリは気門を閉じることで、最大40分間も息を止めることができます。そのため、水没しても30分以上は溺死せずに耐えることが可能です。殺虫剤を使わずに水攻めで仕留めようとするのは、彼らのこの潜水能力を考えると、あまり効率的な方法とは言えないかもしれません。
27. 寿命は3ヶ月から2年

ゴキブリの寿命は種類によって大きく異なります。一般家庭によく出る小型のチャバネゴキブリは、成長が早くサイクルも短いため、成虫の寿命は約3ヶ月〜半年程度です。一方、大型のクロゴキブリは成長に時間がかかり、成虫になってからも半年〜1年、幼虫期間を含めるとトータルで約2年近く生きることもあります。あの黒い巨体は、日本の四季を乗り越え、長い時間をかけて育まれた執念の結晶なのです。
28. 寒さは苦手

南国由来の生物であるゴキブリは、基本的に寒さが大の苦手です。彼らが最も活発になるのは20度〜30度前後の暖かい時期。気温が10度を下回ると活動が鈍くなり、繁殖能力も著しく低下します。そして気温がマイナスになると、多くの種は死滅してしまいます。しかし、現代の住宅は冬でも暖房が効いており、彼らにとっては「常春」の楽園。冬だからといって油断していると、暖房器具の裏で越冬されてしまいます。
爆発的な繁殖力
29. 群生で繁殖力最大

ゴキブリは「1匹いたら100匹いると思え」と言われるように、単独行動よりも集団生活(群生)を好みます。彼らは暗くて狭く、暖かく、湿気があり、餌場に近い場所を見つけると、そこに集まってコロニー(巣)を形成します。集団で生活することで、交尾の相手を見つけやすくし、繁殖の効率を極限まで高めているのです。一匹を見かけたということは、その背後に巨大な繁殖システムが稼働している可能性が高いのです。
30. 糞が仲間を呼ぶ

なぜゴキブリは特定の場所に集まるのでしょうか。その秘密は彼らの「糞」にあります。ゴキブリの排泄物には「集合フェロモン」という化学物質が含まれており、これが仲間に対して「ここは安全で快適だぞ」という信号を送ります。糞により汚染された場所には次々と新しいゴキブリが誘引され、やがて巨大な巣窟となります。駆除した後は、周囲を徹底的に掃除してフェロモンを除去しなければ、またすぐに新たな侵入を許すことになります。
31. メス一匹で数百匹

ゴキブリの繁殖力は、ネズミ算ならぬ「ゴキブリ算」とも言うべき爆発力を持っています。種類にもよりますが、1匹の健康なメスは一生のうちに数百匹以上の子孫を残す能力があります。環境条件が整えば、たった1組のチャバネゴキブリのつがいから、1年後には理論上2万匹〜数万匹にまで増殖する可能性があるという試算もあります。放置すればするほど、指数関数的に事態は悪化していくのです。
32. 卵鞘(らんしょう)というカプセル

ゴキブリの卵を見たことがありますか? 実は彼らは卵を一つずつ産むのではなく、「卵鞘(らんしょう)」と呼ばれる硬いカプセルに数十個の卵をまとめてパッケージングして産み落とします。クロゴキブリの卵鞘は黒褐色で、見た目はまるで「小豆」や「がまぐち財布」のよう。このカプセルは非常に堅牢で、乾燥や外敵から中の卵を守るシェルターの役割を果たしています。このカプセル一つが、数十匹の幼虫爆弾なのです。
33. クロゴキブリは一生で500匹

日本の一般家庭で最もよく見られるクロゴキブリ。このメスは成虫になってから生涯に15~20回ほど卵鞘を産みます。1つの卵鞘の中には22~28個の卵が整然と並んで入っています。これを単純計算すると、1匹のメスが一生に産み落とす子どもの数は約500匹にも達します。春先に侵入した1匹のメスを見逃すことは、その夏に500匹の予備軍を家の中に招き入れることと同義なのです。
34. チャバネは卵を身につけて守る

飲食店などで見かけるチャバネゴキブリは、さらに厄介な習性を持っています。メスは卵鞘を産みっ放しにするのではなく、お腹の先端にくっつけたまま持ち運びます。卵が孵化する直前までの約3週間、母体からの水分供給を受けながら常に保護されているのです。この「過保護」な育児システムにより、卵の生存率は極めて高く、確実に次世代を世に送り出します。卵を持ったメスを駆除することは、40匹の敵を一度に倒す価値があります。
35. チャバネのスピード繁殖

チャバネゴキブリの恐ろしさは、そのサイクルの速さにあります。彼らは生まれてから成虫になるまでが早く、次々と世代交代を繰り返します。メスの寿命は約4ヶ月ほどですが、その間に5回ほど卵鞘を産みます。一回の産卵数が多いため、一匹の雌から200匹以上の子が短期間で生まれます。このハイスピードな繁殖サイクルこそが、飲食店やビルで一度発生すると完全駆除が難しい最大の理由です。
36. 卵鞘には薬剤が効かない

くん煙剤(バルサンなど)を焚いてゴキブリを一掃したと思っても、数週間後にまた小さいのが出てきた経験はありませんか? それは「卵鞘」が原因です。卵鞘の殻は非常に密度が高く丈夫なため、殺虫剤の成分を通しません。親は死んでも、カプセルの中の卵は無傷で守られ、薬剤の効果が消えた頃に孵化してくるのです。卵鞘を見つけたら、薬をかけるのではなく、物理的に踏み潰して処分するのが最も確実な方法です。
37. オスなしでも増える「単為生殖」

ゴキブリの繁殖力に対する執念は凄まじく、極限状態ではオスさえ必要としません。メスしかいない環境下になると、メス単独で卵を産み、孵化させる「単為生殖」モードに切り替わることがあります。生まれてくる子は母親の遺伝子をそのまま受け継いだメスのクローンです。つまり、たった一匹のメスが荷物に紛れて侵入しただけで、そこからオスなしで増殖できる生物学的な機能を持っているのです。
38. メス3匹寄れば繁殖スピードアップ
北海道大学の研究により、さらに驚くべき事実が判明しました。ワモンゴキブリのメスを「1匹」で飼うよりも、「3匹」一緒に飼育した方が、単為生殖による卵鞘形成のスタートが早くなり、産む回数も増えるというのです。これは触角で互いに触れ合う刺激がトリガーになっていると考えられています。「3人寄れば文殊の知恵」と言いますが、ゴキブリの場合は「3匹寄れば爆発的繁殖」となるわけです。
39. メスは出不精

家の中でゴキブリに遭遇して退治した時、「よし、これで一安心」と思っていませんか? 実はあなたが目撃して退治したのは、活発に歩き回るオスである可能性が高いのです。メスのゴキブリは基本的に巣(コロニー)の近くに留まり、餌場と巣を往復する程度の「出不精」です。特に卵を持っているメスは重いため、あまり動き回りません。つまり、オスを一匹見かけた背後には、巣の奥で卵を産み続けるメスが潜んでいるのです。
共食いも厭わない食性
40. 何でも食べる最強の雑食性

ゴキブリの辞書に「好き嫌い」という言葉はありません。彼らは極めて強い雑食性で、生ゴミ、油汚れ、お菓子、肉、野菜はもちろんのこと、人間が食べ物だと思っていないものまで餌にします。本の装丁に使われる糊、石けん、壁紙、皮革製品、さらには人間の剥がれ落ちた垢や抜け落ちた髪の毛、爪まで、有機物であれば何でも栄養源に変えます。家の中にこれらが存在する限り、彼らが餓死することはまずありません。
41. 餌不足で共食い
食料が豊富な時は平和に共存しているゴキブリたちですが、ひとたび餌がなくなると、その獰猛な本性を現します。彼らは生き残るために仲間を襲い、食べる「共食い」を始めます。特に弱った個体や死骸は格好のタンパク源です。ゴキブリホイホイなどの粘着トラップに捕まった仲間さえも、放置すれば後から来たゴキブリの餌になってしまいます。死骸を見つけたらすぐに片付けないと、それが新たな呼び水になってしまうのです。
42. ビタミンを細菌から自給自足

人間ならバランスの良い食事をしないとビタミン不足で病気になりますが、ゴキブリは偏食でも健康体です。その秘密は、体内の脂肪体に住まわせている「共生細菌(ブラッタバクテリウム)」にあります。この細菌が、ゴキブリの体内で必須アミノ酸やビタミンを合成して供給してくれるのです。この完璧な共生システムのおかげで、彼らは栄養価の低い餌しかなくても生き延びることができます。
43. 自然界の分解者としての顔

家の中では嫌われ者のゴキブリですが、一歩外に出れば、彼らは「森の掃除屋さん」としての重要な役割を担っています。森林に生息する野生のゴキブリたちは、落ち葉や朽ち木、動物の死骸などを食べて分解し、栄養豊富な土として自然に還す働きをしています。もしゴキブリがいなければ、森は枯れ葉や死骸で埋め尽くされてしまうかもしれません。彼らは本来、生態系の物質循環を支える不可欠な存在なのです。
44. 他の動物の重要な食料

自然界の食物連鎖において、ゴキブリは「分解者」であると同時に、多くの動物たちの重要な「栄養源」でもあります。鳥類、爬虫類(トカゲなど)、両生類、クモ、ムカデ、そしてハチの一種(セナガアナバチなど)は、ゴキブリを好んで捕食します。特にその豊富なタンパク質と脂肪分は、野生動物にとってご馳走です。彼らの圧倒的な繁殖力は、多くの捕食者のお腹を満たし、自然界のバランスを保つためにあるとも言えます。
45. 体重の43倍のメタンガス

環境問題の文脈で語られることは少ないですが、実はゴキブリは「歩くガス発生装置」でもあります。特にワモンゴキブリなどの一部の種類は、食べたものを体内で発酵させる過程でメタンガスを生成し、おならとして放出します。その量は年間で約35gにもなり、これは彼らの体重の約43倍に相当します。地球温暖化への影響は微々たるものですが、密集した飼育ケース内ではガス濃度が高まることもあるとか。
人間への実害
46. 病原菌の運び屋

ゴキブリが嫌われる最大の理由は、その不衛生さにあります。彼らは下水道、排水溝、ゴミ捨て場、トイレなど、あらゆる汚い場所を徘徊します。その際、脚や体の表面に赤痢菌、サルモネラ菌、大腸菌、コレラ菌、さらにはポリオウイルスなどの危険な病原体を付着させます。そしてそのままキッチンのまな板や食器の上を歩き回ることで、病原菌をまき散らす「機械的伝播」を行う、まさに生きた細菌兵器と言えるでしょう。
47. 電化製品を破壊

現代社会ならではの被害として深刻なのが、精密機器への侵入です。炊飯器、ポット、ルーター、ゲーム機などの内部は、通電により適度に暖かく、暗くて狭いため、ゴキブリにとって最高のマンションになります。内部に侵入して基板の上で糞をしたり、卵を産んだり、配線をかじったりすることで、ショートや漏電、故障、最悪の場合は火災の原因になります。メーカー保証外の故障原因として、虫の侵入は意外に多いのです。
48. 寝ている人間を噛む

「ゴキブリは人間を襲わない」と思っていませんか? 基本的には逃げますが、彼らの数が爆発的に増えて餌が不足した場合や、就寝中で人間が全く動かない場合、餌を求めて人間に近づくことがあります。そして、柔らかい皮膚や手足の指先、唇などを鋭いアゴで噛じることがあります。実際に海外や不衛生な環境下では、就寝中に耳の中に侵入されたり、噛まれて怪我をしたりする被害例が数多く報告されています。
食用・薬用としての利用
49. 世界では揚げ物が人気

日本では悲鳴を上げて逃げ惑う対象ですが、世界に目を向ければ、ゴキブリは貴重なタンパク源として愛されています。タイ、カンボジア、メキシコなどでは、専用に養殖されたコオロギやゴキブリなどが市場で売られています。調理法は素揚げや炒め物が一般的で、スパイスを効かせてスナック感覚で食べられます。カリッとした食感と香ばしさは、ビールのおつまみに最適だと言われ、昆虫食愛好家の間では人気が高い食材です。
50. 味は「エビ」に似ている

気になるその味ですが、実際に食べた人々の感想を総合すると「エビやカニなどの甲殻類に似ている」という意見が圧倒的です。生物学的にも昆虫と甲殻類は近縁であり、外骨格の成分(キチン質)も似ているため、味が似るのは当然かもしれません。内臓を取り除いてカリッと揚げれば、エビの殻揚げのような風味が楽しめるそうです。ただし、その姿形を直視しながら口に運ぶには、かなりの勇気が必要でしょう。
51. 中国では漢方薬

「良薬口に苦し」と言いますが、中国の伝統医学(中医学)では、ゴキブリは「蜚蠊(ひれん)」や「シャチュウ」という名で立派な生薬として扱われています。乾燥させたものを粉末にしたり、エキスを抽出したりして利用され、血行促進、解毒、消腫(腫れを引かせる)、骨折の治療などに効果があるとされています。最近では、傷の治りを早める再生能力に着目した研究も進んでおり、医療分野での可能性を秘めています。
52. 化粧品需要で価格が10倍に

中国では近年、ゴキブリの養殖が巨大ビジネスに成長しています。2010年代には、製薬会社や化粧品会社が原料として乾燥ゴキブリを大量に買い求めたため、取引価格が数年で10倍以上に高騰しました。ゴキブリから抽出される成分には、肌の再生を助けるコラーゲンやアミノ酸が豊富に含まれており、「若返りの秘薬」として美容クリームなどに配合されているのです。知らず知らずのうちに、あなたも恩恵を受けているかもしれません。
53. 欧州や南米でも薬の歴史

ゴキブリを薬として利用してきたのはアジアだけではありません。かつてヨーロッパでは、粉末にしたゴキブリをハチミツに混ぜて、胸膜炎や心膜炎の特効薬として処方していた歴史があります。また、ペルーやジャマイカなどの南米・カリブ海地域でも、民間療法として風邪や消化不良の治療に使われてきました。嫌われ者でありながら、世界各地で「病気を治す力がある」と信じられてきた不思議な存在なのです。
54. 食用リスク

昆虫食がブームになりつつありますが、その辺にいる野生のゴキブリを捕まえて食べるのは自殺行為です。彼らは病原菌の塊であり、体内に寄生虫を宿している可能性も極めて高いからです。2012年にアメリカで開催された「ゴキブリ大食い大会」では、優勝者が直後に死亡する事故が起きました。食べるなら、必ず食用に衛生管理された養殖ものを選びましょう。
進化する知能と耐性
55. 殺虫剤への抵抗性

人類とゴキブリの戦いは、いたちごっこの歴史です。私たちが強力な殺虫剤を開発すればするほど、生き残ったゴキブリたちはその成分を分解する能力を身につけ、遺伝子レベルで進化します。特に近年、ピレスロイド系などの一般的な殺虫成分が効かない「薬剤抵抗性チャバネゴキブリ」が都市部で増加しており、プロの駆除業者さえも手を焼く存在になっています。彼らは薬の雨を浴びても平然と歩き回る耐性を獲得しつつあるのです。
56. 毒餌を避ける「スーパーゴキブリ」

さらに恐ろしい進化を遂げたのが、毒餌(ベイト剤)を食べない個体の出現です。従来の毒餌には、誘引剤としてブドウ糖などの甘い成分が使われていました。しかし、突然変異により「ブドウ糖を苦いと感じる」味覚を持つゴキブリが現れたのです。彼らは目の前に置かれた美味しそうな毒餌を見向きもせず回避し、生き延びて繁殖します。この「スーパーゴキブリ」の出現は、味覚すら変えて生き残ろうとする彼らの執念の証です。
57. テカテカボディで清潔を保つ

ゴキブリといえばあの不快な黒光りする背中ですが、あれは伊達や酔狂でテカっているわけではありません。彼らは自分の体を守るため、脂質を含んだ分泌物(ワックス)で体表をコーティングしています。これにより体内の水分の蒸発を防ぐと同時に、汚れや病原菌が体に付着するのを防いでいます。あのテカテカは彼らなりの「清潔さ」と「バリア機能」の維持なのです。
58. コンセントは最高級マンション

ゴキブリ対策で意外と見落とされがちなのがコンセントです。壁の内部は断熱材があり、電気配線が通っているためほんのり暖かく、彼らにとって快適な通路になっています。コンセントの差込口やカバーのわずかな隙間は、壁裏の世界と部屋をつなぐトンネルです。特に赤ちゃんゴキブリにとって、コンセントの隙間は正門のような広さ。ここから部屋に侵入し、家具の裏でひっそりとコロニーを拡大させていくのです。
59. 結局これが効く!最強の対策アイテム

敵の生態を知り尽くしたところで、最後はやはり物理的な対策が必要です。現在、日本のドラッグストアで手に入る、実績と信頼のある「最強の布陣」を具体的に紹介します。
- ブラックキャップ(アース製薬)
置き型タイプ(ベイト剤)の王様です。「フィプロニル」という強力な成分が配合されており、薬剤に強い「抵抗性ゴキブリ」にも効きます。最大の特徴は、毒餌を食べたゴキブリが巣に帰り、その糞や死骸を食べた仲間も連鎖して死ぬ「ドミノ効果」で巣ごと全滅させられることです。 - コンバット(KINCHO)
ブラックキャップと双璧をなす有名毒餌剤です。こちらも連鎖駆除効果が高く、1年用や玄関・ベランダ用などバリエーションが豊富です。置くだけで巣ごと退治可能です。 - ゴキブリムエンダー(KINCHO)
「煙じゃないのに煙の効き目」というキャッチコピーの新しい空間噴射剤です。部屋の広さに応じて数回プッシュするだけで、部屋の隅々に成分が行き渡り、隠れたゴキブリを駆除します。くん煙剤のように家電をカバーする必要がなく、姿を見ずに退治したい人に最適です。 - ゴキジェットプロ(アース製薬)
遭遇してしまった時の「近接戦闘用」必須アイテム。秒速で動く彼らを仕留めるには、この即効性の高いスプレーが一番です。「秒殺ノックダウン」の効果は伊達ではありません。
まとめ:敵を知り、対策へ
ゴキブリの雑学、堪能していただけましたか。
正直なところ、対策としては「敵を知った」上で、上記のような最新の対策商品を適切に置くこと、そして「隙間を塞ぐ」「生ゴミを放置しない」という基本を徹底する以外に近道はありません。
この記事を読むメリットは、ゴキブリに対する得体の知れない恐怖を、知識によって「対処可能な相手」という認識に変えることだったのかもしれません。
え? より不快感が増しただけだった? 不快感が増すというのも、二度と奴らに会わないために掃除や対策を徹底する原動力になります。
さあ、これからもGと戦い、清潔な生活を守り抜きましょう!