人体は自らの身体の事にもかかわらず、不可解なことばかりではありませんか。学校で習ったことも詰め込み学習でなんだかピンとこないものばかり。もう難しすぎるんだよ!って思われている方、朗報です。この記事では生活に直接役に立つかもな、くらいの一見緩くみえて、真摯に科学的なアプローチの人体の事柄をお伝えしていきます。
目次
心臓・血液・血管の雑学
1. 心臓は握りこぶし大

人の心臓のサイズは、その人の握りこぶし約1つ分(重さ約250〜300g)と意外にコンパクトです。対して脳は、握りこぶし約2つ分(約1,200〜1,400g)の大きさがあります。心臓は全身に血液を送る強力なポンプ機能を、脳は高度な情報処理と指令を一手に担っています。このサイズの差は、単なる筋肉の塊であるポンプと、複雑な神経回路の集合体であるスーパーコンピューターとの、構造的な密度の違いを物語っています。
2. 音楽で心拍が変わる

音楽を聴くと、心臓の鼓動は流れる曲のリズム(BPM)に同調しようとします。これは聴覚からの刺激が脳の大脳辺縁系を通り、自律神経に作用するためです。アップテンポな曲は交感神経を刺激して心拍数を上げ、興奮状態を作り出します。逆にスローテンポな曲は副交感神経を優位にし、心拍を落ち着かせます。この仕組みは、スポーツ選手の集中力向上や、医療現場での音楽療法などにも応用されている、心と体の科学的な同期現象です。
3. 1日ドラム缶35本分

心臓は片時も休まず、1分間に約60〜80回拍動し、1回あたり約60〜80mlの血液を送り出しています。これを1日に換算すると約10万回の拍動となり、送り出す血液の総量は約7,000リットルにも達します。これは一般的なドラム缶(200L)で約35本分、家庭用の浴槽なら約35杯分に相当します。この驚異的なポンプ能力を80年以上の寿命にわたって維持し続ける心臓は、まさに人体で最もタフな筋肉と言えます。
4. 血管は地球2周以上

動脈や静脈といった太い血管から、肉眼では見えないほど細い毛細血管まで、体中の全ての血管を一本に繋ぎ合わせると、その総延長は約10万kmに達すると推定されています。地球の赤道一周が約4万kmなので、なんと地球を2周半も回ることができる長さです。この膨大な長さのネットワークが、37兆個とも言われる体中の細胞一つひとつに、酸素や栄養素を届け、老廃物を回収するという物流システムを支えているのです。
5. 血液は体重の8%

成人の体内を流れる血液量は、その人の体重のおよそ13分の1、つまり約7〜8%を占めています。例えば体重60kgの人であれば、約4.6kg(約4.6リットル)の血液が体内に存在することになります。この量のうち約3分の1を失うと生命に危険が及ぶとされています。血液は単なる赤い液体ではなく、酸素の運搬、病原体との戦い、体温の維持、傷の修復など、生命維持に不可欠な機能を多数兼ね備えた「液体の臓器」なのです。
6. 献血後数時間で再生

人間の体には、失われた血液を素早く補う優れた回復能力が備わっています。献血などで血液が失われると、まず血管内の圧力を保つために、血管外の組織液が血管内に移動し、数時間程度で血液の量(ボリューム)自体は回復します。その後、骨髄が活発に働き出し、減少した赤血球などの細胞成分を増産します。赤血球の数が完全に元通りになるには約2〜3週間かかりますが、体は即座に緊急対応モードに入り再生を始めています。
7. 赤血球の寿命120日

血液の赤さを決めている赤血球は、酸素を運ぶトラックのような役割をしていますが、その寿命は厳密に決まっており、骨髄で作られてから約120日(4ヶ月)でその役目を終えます。老化して柔軟性を失った赤血球は、主に脾臓(ひぞう)という臓器のフィルターに引っかかり、マクロファージによって破壊・処理されます。人体では毎日約2,000億個もの赤血球が壊される一方で、同じ数だけ新しい赤血球が作られ、常に新鮮な状態が保たれています。
8. 一生で送る血液量

人がオギャーと生まれてから天寿を全うするまで、心臓は一度も止まることなく働き続けます。平均寿命を80年、1分間の心拍数を平均70回として計算すると、生涯の拍動数は約30億回に達します。この間に送り出される血液の総量は約2億リットル以上。これは25メートルプール(約360トン)に換算して500杯分以上にもなります。この天文学的な仕事量を、拳大の小さな臓器が一生黙々とこなし続けているのです。
消化器・その他内臓の雑学
9. 胃は4Lまで拡張可能

空腹時の胃の容量は、握りこぶし大より少し大きい程度の約1リットルですが、胃は筋肉でできた非常に伸縮性の高い袋です。食べ物が入ってくると、脳からの指令で胃の筋肉が緩み(適応性弛緩)、風船のように膨らんでいきます。大食いのトレーニングなどを積んだ人の場合、最大で平常時の4倍にあたる約4リットル以上まで拡張することが確認されています。ただし、急激な拡張は胃破裂のリスクもあるため、人体の限界に近い現象です。
10. 胃粘膜は数日で更新

胃液に含まれる塩酸は、pH1〜2という強酸性で、金属の亜鉛さえ溶かすほどの威力があります。この危険な液体から胃自身が消化されないように、胃の内壁は粘液で守られていますが、それでもダメージは避けられません。そのため、胃の粘膜上皮細胞は猛烈なスピードで分裂を繰り返し、約3日から5日という短いサイクルで全面的に新品に入れ替わっています。私たちが胃痛に悩まずにいられるのは、この驚異的な自己再生能力のおかげなのです。
11. 皮膚は最大臓器9kg
「人体最大の臓器は?」と聞かれたら、肝臓や腸ではなく「皮膚」と答えるのが医学的に正解です。皮膚は単なる包装紙ではなく、体温調節、感覚の受容、免疫防御などを担う複雑な器官です。その総面積は成人で畳一畳分強の約1.6〜2.0平方メートル、皮下組織を含めた重量は体重の約16%(体重60kgの人で約9kg)にもなります。この巨大な臓器が、外界の細菌や紫外線、乾燥から私たちの生命を最前線で守り続けています。
12. 最も薄い皮膚は瞼

全身を覆う約2平方メートルの皮膚ですが、その厚さは場所によって大きく異なります。最も厚いのは全体重と摩擦を受け止める足の裏(特にかかと)で、約数ミリの厚さがあります。対照的に、最も薄いのは「まぶた」の皮膚で、その厚さはわずか0.6mm程度、卵の薄皮ほどしかありません。これは、まばたきという高速運動を1日に何万回も繰り返すため、極限まで薄く、かつ柔軟である必要があるからです。
13. 感情で胃も赤くなる

恥ずかしい時や興奮した時に顔が赤くなるのは、交感神経が活発になり、頭部の血流量が増えるためです。実はこの時、顔だけでなく、胃の粘膜も充血して赤くなっていることが観察されています。逆に、恐怖で顔が青ざめる時は、胃の粘膜も血流が引いて白くなっています。「腹が立つ」「断腸の思い」といった言葉があるように、感情と内臓(特に胃腸)は自律神経を通じて直結しており、心の状態はダイレクトに胃の顔色を変えているのです。
14. 歯は再生しない

人間の体は、皮膚が切れても、骨が折れても、肝臓の一部を切り取っても、自然治癒力によって再生・修復することができます。しかし、唯一の例外が「歯」です。歯のエナメル質や象牙質は、一度虫歯菌によって溶かされたり欠けたりすると、二度と自然に元通りになることはありません。これは歯が代謝を行わない組織だからであり、日々のケアが一生を左右する重要なパーツとされています。
骨・歯の雑学
15. 成人の骨は206本

生まれたばかりの赤ちゃんは、全身に約305〜350本もの骨を持っています。これは、産道を通る際に体を小さく変形させやすくするためや、急激な成長に対応するためです。成長するにつれて、離れていた骨同士(特に頭蓋骨や骨盤、背骨の一部など)が融合して一つの大きな骨になっていきます。その結果、成人になる頃には骨の総数は206本(個人差あり)にまで減少し、体を支える強固な骨格が完成します。
16. 骨の30%は水分
骨というと、カルシウムの塊で乾いた石のようなイメージがありますが、実は生きた組織であり、その重量の約20〜30%は水分で構成されています。残りの成分のうち、約50%がカルシウムやリンなどのミネラル成分(硬さの元)、約20%がコラーゲンなどのタンパク質(粘り強さの元)です。水分とコラーゲンが含まれているおかげで、骨はただ硬いだけでなく、衝撃をしなやかに吸収する弾力性を持ち、簡単には折れない構造になっています。
17. 骨は鋼鉄並みに強い

人間の骨は、重量あたりの強度で比較すると、鋼鉄(スチール)に匹敵するほどの強さを持っています。特に大腿骨(太ももの骨)は非常に頑丈で、垂直方向からの圧力に対しては約1トンもの重量に耐えられると言われています。骨の内部は、ハニカム構造のような「海綿質」というスポンジ状の構造になっており、これにより「軽さ」と「強度」という相反する要素を高いレベルで両立させ、効率的に体を支えることができているのです。
18. エナメル質は最硬

歯の表面を覆っている半透明の層「エナメル質」は、水晶(石英)と同じくらいの硬度を持ち、モース硬度では「7」に分類されます。これは鉄やプラチナよりも硬く、人体で作られる組織の中で最強の硬度を誇ります。この圧倒的な硬さがあるからこそ、私たちは毎日硬い肉や繊維質の野菜を噛み砕くことができます。しかし、酸には弱く、口内が酸性になると溶け出してしまうため、最強の盾もメンテナンスなしでは維持できません。
19. 骨は10年で入替る

骨は一度できたら変わらない不変の組織に見えますが、実は内部では常に代謝が行われています。「破骨細胞」が古い骨を壊して吸収し、「骨芽細胞」が新しい骨を作るという「骨のリモデリング」が絶えず繰り返されているのです。このサイクルにより、微細なヒビが修復され、強度が保たれます。全身の骨はこの新陳代謝によって、約3年から10年(部位や年齢による)ですべて新しい骨に置き換わっていると言われています。
脳・神経の雑学
20. 脳細胞は860億個

かつて脳の神経細胞(ニューロン)は1,000億個と言われていましたが、最新の研究手法による再計測で、約860億個であるという説が有力になっています。この数は銀河系の星の数(数千億)には及びませんが、それぞれの細胞が数千から数万の他の細胞と繋がり、ネットワーク(シナプス)を形成しています。その結合パターンの数は宇宙の原子の数よりも多いとされ、人間の複雑な思考を生み出しています。
21. 脳は微弱電気を発す

脳が活動する時、神経細胞同士は微弱な電気信号を使って情報のやり取りをしています。脳全体で起きているこの電気活動のエネルギーを合計すると、約12〜20ワット程度になると言われています。これは冷蔵庫の庫内灯や、小さなLED電球を点灯させることができるくらいの電力です。私たちが何かを考えたり、思い出したりしているその瞬間にも、頭の中では常に自家発電が行われ、思考という名の明かりが灯されているのです。
22. 脳の記憶容量は膨大

脳の記憶容量をデジタルのバイト数で表すのは難しいですが、脳内のシナプス結合の数から推測すると、数ペタバイト(1ペタバイトは約100万ギガバイト)に相当すると言われています。これは高画質のテレビ番組を300年以上録画し続けられるほどの容量です。もちろん、人間の記憶は曖昧で消えやすい性質がありますが、潜在的な収容能力としては、一生かかっても使いきれないほどの広大なストレージ領域を持っていることになります。
23. 神経速度は時速430km

脳から手足へ、あるいは目や耳から脳へ伝わる神経の信号速度は、神経の種類によって異なります。痛みや温度を伝える細い神経はゆっくり伝わりますが、筋肉を動かしたり触覚を伝えたりする太い神経(有髄神経)の場合、その伝達速度は秒速約120メートル、時速に換算すると約430kmにも達します。この新幹線以上の超高速通信のおかげで、私たちは熱いものに触れた瞬間に手を引っ込めることができるのです。
24. あくびは脳冷却機能

「あくび」は眠い時や退屈な時に出るため、酸素不足を解消するためだと思われがちですが、近年の有力な説は「脳の冷却(クールダウン)」です。脳はコンピューターと同じで、使いすぎると熱を持ち、処理能力が低下します。あくびで大きく口を開けて冷たい空気を吸い込み、同時に顎の筋肉を伸縮させて頭部への血流をポンプのように促すことで、熱くなった血液を交換し、脳の温度を下げて覚醒を促していると考えられています。
25. 脳は失神で自己防衛

極度の恐怖、激しい痛み、あるいは強烈なショックなどを受けた時、人は気絶することがあります。これは脳が処理しきれない過剰なストレスから自身を守るための「強制シャットダウン」機能です。急激に血圧を下げて脳への血流を減らし、意識を遮断することで、脳の回路が焼き切れるのを防ぎ、同時に体を横たわらせて脳への血流回復を優先させる、究極の自己防衛本能なのです。
26. 脳は加齢で萎縮する

人間の脳の重さは、20歳頃にピークを迎え、その後は加齢とともにゆっくりと減少(萎縮)していきます。特に40代以降になるとその傾向が見え始め、神経細胞の減少や、細胞間のネットワークの縮小が起こります。しかし、悲観することはありません。近年の研究では、知的な活動や運動、社会的な交流を続けることで、新しい神経回路が形成されたり、萎縮のスピードを遅らせたりできることがわかっており、脳は一生変化し続ける臓器なのです。
27. 1日の思考は数万回

人間は起きている間、常に何かを考えています。「今日の夕飯は何にしよう」といった意識的な思考から、歩く、バランスを取る、といった無意識の処理まで含めると、1日に脳が処理する思考の断片(思考回数)は数万回、一説には6万回にも及ぶと言われています。しかもその思考の約8割はネガティブな内容や、昨日と同じことの繰り返しであるという研究もあり、脳がいかに休むことなく情報を反芻し、処理し続けているかがわかります。
筋肉・運動の雑学
28. 小指なしで握力半減

小指は飾りではありません。実はものを強く握る「パワーグリップ」という動作において、主役は小指と薬指です。これらは尺骨神経に支配されており、手のひらの土台として機能します。もし小指を失うと、テコの原理が効かなくなり、握力全体が最大で約半減するとも言われます。重い荷物を持つ時や剣道の竹刀を振る時、小指側を意識して締めると力が入りやすいのは、この解剖学的な理由によるものです。
29. 指の筋肉は前腕にある

自分の指を見て動かしてみると、指自体には筋肉の膨らみがないことに気づくはずです。指を曲げ伸ばしするエンジンの本体は、実は「前腕(肘から手首の間)」にあります。ここにある筋肉が収縮し、そこから伸びる長い「腱」が、操り人形の糸のように指の骨を引っ張ることで指が動きます。指がスリムで細かい作業ができるのは、かさばる筋肉をあえて離れた場所に配置しているおかげなのです。
30. 指一本で体重を支える

指の関節や腱は、非常に高い負荷に耐えられる構造をしています。ロッククライミングをするクライマーの中には、指一本(ワンフィンガー)で全体重を支えて懸垂できる人がいます。これは指の腱鞘(けんしょう)が非常に強靭であることに加え、脳のリミッターを外して筋力を最大限に発揮するトレーニングの結果です。理論上、人体の構造としては、それだけの荷重に耐えうるポテンシャルが指には秘められています。
31. 人は草を消化できない

野菜などの植物細胞壁の主成分である「セルロース」は、ブドウ糖が鎖状に繋がったものですが、人間はこの鎖を断ち切る消化酵素「セルラーゼ」を持っていません。そのため、草を食べても栄養(エネルギー)として吸収できず、そのまま排泄されます。しかし、この消化できない繊維質(食物繊維)が腸内を通過する際に、腸壁を刺激して便通を良くしたり、善玉菌の餌になったりと、健康維持には欠かせない役割を果たしています。
32. 1歩で200の筋肉使用

私たちが無意識に行っている「歩く」という動作は、実は高度な身体制御の結果です。足を前に出す、着地の衝撃を吸収する、バランスを取る、腕を振る…これらの一連の動作のために、全身の約600ある筋肉のうち、3分の1にあたる200以上の筋肉が総動員されています。ただ歩くだけで脳の活性化や全身運動になると言われるのは、これほど多くの筋肉を協調させて動かす複雑なプロセスだからです。
33. 箸操作に12の筋肉

2本の棒で小さな豆をつまみ上げる「箸」の操作は、人類の道具使用の中でも極めて繊細な技術の一つです。この動作には、親指、人差し指、中指の微細なコントロールに加え、手首や前腕の筋肉など、およそ12種類の筋肉が複雑に連動する必要があります。この精密動作は脳の運動野を広く刺激するため、幼少期の知育や、高齢者の認知機能維持のリハビリテーションとしても有効であるとされています。
体温・体臭・体毛の雑学
34. 発熱量は電球1個分

人間は生きている限り、常に細胞が活動し熱を生み出しています。成人が安静にしている時に放出する熱エネルギーは、およそ100ワットの白熱電球1個分に相当します。これは昔ながらの白熱電球1個分と同じくらいの熱量です。満員電車や狭い会議室が暑苦しくなるのは、そこにいる全員が100ワットのヒーターとなって熱を放出し、室温を上げているからなのです。
35. 持久走は動物界トップ

チーターは短距離なら時速100km以上で走れますが、体温が上がりすぎるためすぐにバテてしまいます。対して人間は、全身にある数百万の汗腺から汗をかき、気化熱で効率的に体温を下げる冷却システムを持っています。この機能のおかげで、人間は炎天下や長距離でも走り続けることができます。狩猟採集時代、獲物がバテて倒れるまで追いかけ続ける「持久狩猟」が可能だったのは、この冷却能力のおかげだと言われています。
36. 人体は微かに光る

ホタルや深海魚のように、実は人間も発光しています。これは「バイオフォトン(超微弱発光)」と呼ばれる現象で、細胞内の代謝プロセスで発生する活性酸素などが化学反応を起こす際に生じます。光の強さはホタルの光の約1000分の1程度と極めて微弱なため、人間の肉眼では見えませんが、高感度カメラを使えば、体表面、特に顔や首のあたりがぼんやりと光っている様子を撮影することができます。
37. 汗は無臭、菌が原因

「汗臭い」という表現がありますが、分泌された直後の汗そのものは、実は99%が水で、ほぼ無臭です。時間が経つにつれて、皮膚の表面に住んでいる常在菌(バクテリア)が、汗に含まれる皮脂や垢、わずかなタンパク質を餌にして分解・酸化させます。この分解された物質(ガス)があの独特の不快なニオイの正体です。つまり、かいた汗をすぐに拭き取れば、バクテリアの宴会は始まらず、ニオイは発生しません。
38. 体臭は人それぞれ

指紋が一人ひとり違うように、体臭も「体臭指紋」と言えるほど個人差があります。これは遺伝子(特に免疫に関わるHLA遺伝子)の型によって、分泌される化学物質の構成が微妙に異なるためです。警察犬はこの個人の匂いの違いを嗅ぎ分けて追跡を行います。また、人間も無意識のうちに、自分とは遠い遺伝子の匂いを持つ相手をパートナーとして好ましく感じる傾向があるという研究もあり、遺伝子レベルの相性に関係しています。
39. 髭の総延長は13m

ヒゲの伸びる速さは1日に約0.3〜0.4mm程度です。もし男性が20歳から80歳までの60年間、一度もヒゲを剃らず、かつヒゲが抜け落ちずに伸び続けるという(現実にはありえませんが)計算をすると、その長さは約8〜9メートル、条件が良ければ13メートルにも達します。実際には毛周期があるため数年で抜け落ちますが、毎日剃り落としているヒゲの総量を繋げると、それだけの長さのものを生産し続けていることになります。
40. 体毛より髭が速い

男性のヒゲは、人体の中で最も成長スピードが速い毛の一つです。これは男性ホルモン(テストステロン)の影響を強く受けるためです。面白いことに、男性ホルモンは頭髪に対しては成長を抑制(薄毛の原因)するように働くことがありますが、ヒゲや体毛に対しては逆に成長を促進するように働きます。昼間よりも、成長ホルモンの分泌が活発になる夜間から明け方にかけての方が、より伸びやすいと言われています。
41. 1日100本脱毛は正常

シャンプーの時に髪がたくさん抜けて不安になることがありますが、日本人の髪の毛は約10万本あり、それぞれ2〜6年のサイクル(毛周期)で生え変わっています。計算上、1日に約50〜100本が寿命を迎えて自然に抜け落ちるのは生理的に正常な現象です。特に秋口などは換毛期の名残で抜け毛が増える傾向があります。抜けた毛の根元がふっくらしていれば自然脱毛ですので、過度な心配は不要です。
42. 金髪は毛量が多い
髪の色と本数には統計的な相関があります。一般的に、金髪(ブロンド)の人は約14万本と最も多く、次いで茶髪(ブルネット)が約11万本、黒髪が約10万本、赤毛が約9万本とされています。これは、色素が薄く細い髪を持つ金髪の人は、頭皮を紫外線から守るために密度を高くして本数を増やす必要があったという進化的な適応の可能性があります。つまり、黒髪は本数が少なくても太くて丈夫なのです。
爪の雑学
43. 爪は角と同じ成分

爪は骨のようにカルシウムでできていると思われがちですが、実は皮膚が変化したもので、主成分は「ケラチン」という硬いタンパク質です。これは髪の毛や、サイの角、鳥のくちばし、牛のひづめと同じ素材です。指先の皮膚だけでは柔らかすぎて小さな物をつまんだり、力を入れたりできませんが、背面にこの硬いケラチンの板(爪)があることで圧力が逃げず、私たちは器用な指先作業を行うことができるのです。
44. 爪は秒速1ナノm

爪は1日に約0.1mm、1ヶ月で約3mm伸びます。これを微視的な世界で見ると、1秒間に約1ナノメートル(10億分の1メートル)伸びている計算になります。これは地球の大陸移動の速度と同じくらいのスケールです。手の爪が根元から先端まで完全に生え変わるには約半年、足の爪は約1年かかります。爪の状態には過去数ヶ月の健康状態や栄養状態が記録されているため、「健康のバロメーター」とも呼ばれます。
45. 中指の爪が最速
爪の成長速度は指によって微妙に異なります。一般的に、指が長いほど、またよく使う指ほど早く伸びる傾向があり、手の指では「中指」が最も早く伸びます。逆に一番遅いのは、短くて太い「親指」や「小指」です。また、利き手の方がよく動かして血流が良くなるため、非利き手よりも爪が早く伸びると言われています。わずかな差ですが、爪切りの際によく観察してみると違いに気づくかもしれません。
46. 足爪は手の3倍遅い

足の爪を切る頻度は、手の爪よりも少なくて済むと感じたことはありませんか? 実際、足の爪の伸びる速さは手の爪の約3分の1から半分程度です。これは、足が心臓から最も遠い場所にあり血液循環の恩恵を受けにくいことや、手のように常に細かく動かして刺激を受けることが少ないためです。また、靴下や靴で圧迫されていることも成長を遅くする要因の一つと考えられています。
47. 加齢で爪成長は鈍る

子供の頃、爪を切ってもすぐに伸びていた記憶があるかもしれませんが、爪の成長速度は20歳頃をピークに、年齢とともに徐々に遅くなっていきます。50代以降になると、爪の厚みが増したり、縦筋が入ったりといった変化も現れます。これは全身の新陳代謝が低下する影響です。しかし、爪は死ぬまで成長し続ける組織の一つであり、高齢になってもケアが必要な大切な身体の一部です。
その他身体的特徴の雑学
48. 仰向け寝は人間だけ

犬や猫がお腹を見せて寝るのは安心している時だけですが、人間は「仰向け」を基本の睡眠姿勢として長時間維持できる珍しい動物です。これは、人間が直立二足歩行に進化したことで背骨がS字カーブを描き、骨盤が広がって平らになったため、背中を地面につけても安定しやすくなったからです。また、仰向けは重力の影響を分散させ、内臓や背骨への負担を減らして脳を休めるのに適した姿勢でもあります。
49. 舌の模様も固有

指紋認証や顔認証は一般的ですが、実は「舌」も個人識別に使えます。舌の表面にある味蕾(みらい)の分布やシワの形状、つまり「舌紋(ぜつもん)」は、指紋と同じように一生変わらず、誰一人として同じパターンを持つ人はいません。怪我をしにくく偽造も難しいため、セキュリティ技術としての研究も進められていますが、スキャナーに舌を出して舐める必要があるため、実用化には心理的な壁があるようです。
50. 唇に境目がある

鏡を見て唇を確認すると、赤い部分と普通の肌の間にくっきりとした境界線があるのがわかります。この「赤唇縁(せきしんえん)」と呼ばれる明確な境目を持つのは、実は人間だけです。猿やチンパンジーの唇は、顔の皮膚からめくれ上がったような形状で、人間のようにプリッとした独立したパーツには見えません。この特徴は、言葉を話すための複雑な口の動きや、表情によるコミュニケーションの進化と関係していると考えられています。
51. 唇は血管が透けてる

唇はなぜ赤いのでしょうか。それは、唇の皮膚の角質層が極めて薄く、メラニン色素もほとんどないため、その直下を走る毛細血管の血液の色が透けて見えているからです。通常の皮膚は約16層の細胞層がありますが、唇はわずか3〜5層しかありません。そのため非常にデリケートで乾燥しやすく、また体調が悪くて血流が滞るとすぐに紫色(チアノーゼ)になるなど、健康状態が色に現れやすい部位でもあります。
身体の長さの雑学
52. 鼻と耳は成長し続く

「おじいちゃんの耳や鼻って大きくない?」と思ったことはありませんか。骨の成長は思春期で止まりますが、鼻と耳を形作っている「軟骨」は、加齢とともに徐々に変化し続けます。正確には細胞分裂で成長するというよりは、長年の重力の影響で軟骨が垂れ下がって広がったり、皮膚の弾力が失われたりすることで、結果的に大きく見えるようになります。これを「老人性拡大」と呼ぶこともあります。
53. 朝は背が1.5cm高い

身長測定をするなら朝一番がおすすめです。背骨は椎骨という骨と、その間のクッションである「椎間板」が積み重なってできています。日中活動していると、重力で頭や体幹の重さがかかり、椎間板の水分が押し出されて少しずつ縮みます。しかし、夜横になって寝ると重力から解放され、椎間板が水分を吸収して元の厚さに戻ります。この差により、朝と夜では身長が1〜2cm程度変化するのです(重力の影響)。
54. 宇宙で身長3%伸びる

宇宙に行くと背が伸びます。国際宇宙ステーションのような無重力空間に長期間滞在すると、地球上の重力による背骨への圧迫が完全になくなるため、椎間板が最大限まで膨らみ、背骨全体が伸びます。その伸び率は身長の約3%、人によっては5cm以上伸びることもあります。しかし、これは一時的なもので、地球に帰還して重力を受けると、数ヶ月かけて元の身長に戻ってしまいます。
55. 両手幅は身長と同じ

レオナルド・ダ・ヴィンチの有名なドローイング「ウィトルウィウス的人体図」にも描かれている通り、両手を水平に広げた長さ(ウィングスパン)は、多くの人で身長とほぼ同じになります。これは人間の身体が持つ美しい対称性の一つです。ただし、バスケットボール選手や水泳選手などは、身長よりも腕を広げた長さの方が長い(猿手)傾向があり、これが競技において有利に働く身体的特徴となっています。
56. 足裏と前腕は同じ
信じられないかもしれませんが、靴を脱いで足の裏を自分の腕に合わせてみてください。「足の裏の長さ」と「手首から肘の内側までの長さ(前腕)」は、驚くほど同じ長さになります。これは人体寸法の不思議な黄金比の一つです。靴のサイズがわからなくて困った時や、自分の体に合った靴下を選びたい時、腕に当てがってみることで、おおよそのサイズ感を確認することができる実用的なライフハックです。
57. 鼻と親指は同じ長さ

これも人体の不思議な比率の一つです。自分の親指の長さ(爪の先から付け根まで)と、鼻の長さ(眉間から鼻先まで)を比べてみてください。個人差はありますが、多くの人でほぼ同じ長さになります。美術解剖学では、顔を描く際のアタリ(目安)として使われることもあります。人体にはこうした隠れた「定規」がいくつも備わっており、身体のバランスを保っています。
目の雑学
58. 10%は瞬きしている

私たちは無意識に、1分間に約15〜20回もの瞬き(まばたき)をしています。1回の瞬きの時間は約0.3秒程度ですが、これを積み上げると、起きている時間の約10%に相当します。つまり、16時間起きているなら、そのうち約1時間半は目を閉じて暗闇の中にいるのです。これは目の乾燥を防ぐだけでなく、脳が視覚情報を遮断して一瞬の休息を取る(脳のリセット)ためにも必要な時間だという研究もあります。
59. 瞬きは1日1.5万回

1日に換算すると約15,000回から20,000回も繰り返されるまばたき。この回数は性別や状況によって変化します。一般的に女性は男性よりもまばたきの回数が多く、また人は嘘をついている時や緊張している時にまばたきが増える傾向があります。逆に、読書やスマホ画面に集中している時は、回数が数分の一に激減するため、目が乾いてドライアイになりやすくなります。意識的なまばたきが推奨されるのはこのためです。
60. 乳児は涙が出ない

新生児が大声で泣いている時、よく見ると涙が出ていないことに気づくでしょう。生まれたばかりの赤ちゃんは涙を作る機能(涙腺)が未発達で、目を潤すための最低限の水分しか分泌されません。悲しい時や目にゴミが入った時にボロボロと涙が出る「反射性の涙」や「情動性の涙」が作れるようになるのは、生後1ヶ月から3ヶ月頃にかけてです。涙が出るようになるのは、心と体の成長の証なのです。
61. 涙は最も綺麗な液体

涙は血液から赤血球を取り除いた液体(血漿)が原料ですが、その成分の98%は水です。残りの2%にタンパク質、ナトリウム(塩分)、殺菌作用のある酵素「リゾチーム」などが含まれています。このリゾチームのおかげで、涙には細菌を溶かして殺す強い作用があります。つまり涙は単なる水ではなく、眼球という露出した臓器を守るための、体内で生成される「天然の殺菌消毒液」なのです。
62. 感情で涙の味変る

涙の味は、その時の感情によって微妙に変化します。悔しい時や怒っている時は、交感神経が優位になりナトリウム(塩分)を多く含むため、「しょっぱい涙」になります。逆に、悲しい時や嬉しい時は、副交感神経が優位になり水分量が増えるため、塩分濃度が薄まり「水っぽい(甘く感じる)涙」になります。涙の味を確認すれば、自分の本当の心理状態がわかるかもしれません(自律神経の状態)。
63. 眉毛は汗除け機能

まゆ毛は顔の印象を決めるパーツですが、生物学的な本来の役割は「汗止め」です。額から流れ落ちた汗や雨水が目に入って視界を遮らないよう、毛の生え方が外側に向かってアーチを描いており、水を顔の横へと受け流す構造になっています。片方のまゆ毛の本数は平均して約1,300本。毛の寿命(毛周期)は短く、数ヶ月で生え変わるため、髪の毛のように長く伸びすぎることは通常ありません。
64. まつ毛は目のバリア
まつ毛は、空気中のホコリやゴミ、小さな虫などが目に飛び込むのを物理的に防ぐ「フィルター」の役割を果たしています。また、まつ毛の根元には知覚神経が敏感に張り巡らされており、何かが触れると反射的にまぶたを閉じる「瞬目反射」のトリガーとしても機能します。さらに、まぶたの縁から分泌される油分を拡散させ、涙の蒸発を防ぐという重要な働きも担っています。
65. まつ毛にダニがいる

鏡を見ても見えませんが、成人の約半数からほぼ全員のまつ毛の毛根には、「デモデックス(ニキビダニ)」という0.3mmほどの微小なダニが住み着いています。彼らは過剰な皮脂を食べてくれる掃除屋でもあり、通常は無害な共生関係にあります。しかし、免疫力が低下したり、洗顔不足で不潔になってダニが増えすぎると、炎症やかゆみ(眼瞼炎)の原因になることがあります。
66. 白人は眩しがり

欧米人がよくサングラスをかけているのは、ファッションだけではありません。目の「虹彩(茶目)」の色はメラニン色素の量で決まりますが、白人のように色素が薄いブルーやグリーンの目は、光を遮るカーテン機能が弱く、眼内に多くの光を通してしまうため、日本人よりも「まぶしさ」を強く感じます。彼らにとってサングラスは、強すぎる紫外線から目を守るための必需品なのです。
67. 薄い目は痛みに強い

ピッツバーグ大学の研究によると、目の色が薄い(青や緑)妊婦は、目の色が濃い(茶や黒)妊婦に比べて、出産時の痛みをあまり感じず、産後うつや不安感も少なかったという報告があります。メラニン色素の生成と神経伝達物質の関連などが推測されていますが、まだ確実なメカニズムは解明されていません。遺伝的な背景が、痛みの感受性にも影響している可能性を示す興味深いデータです。
68. 青い瞳と依存症

バーモント大学の遺伝学研究によると、青い瞳を持つ人は、暗い色の瞳を持つ人に比べて、アルコール依存症になるリスクが高い傾向が見られたと報告されています。これは、アルコール依存に関連する遺伝子と、瞳の色を決定する遺伝子が、染色体上で物理的に近い場所に位置している(連鎖している)ためではないかと推測されていますが、あくまで統計的な傾向であり、絶対的な因果関係ではありません。
69. 視力完成に7年

生まれたばかりの赤ちゃんの視力は0.01〜0.02程度しかなく、色はぼんやりとしか認識できません。そこから「見る」という刺激を脳に送り続けることで、視覚野が発達していきます。3歳頃にようやく0.6〜0.9程度になり、大人と同じ1.0以上の視力に達するのは、小学校に入学する6〜7歳頃です。この発達期間中に強い遠視や斜視があると、視力が育たない「弱視」になるリスクがあるため、早期発見が重要です。
70. 二重は脂肪量できまる
一重まぶたと二重まぶたの構造的な違いは、まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)の枝分かれにあります。二重の人はこの筋肉の一部が皮膚にくっついているため、目を開けると皮膚が折り畳まれます。一方、一重の人はこの付着がないか、あるいはまぶたの脂肪(眼窩脂肪)が厚くて皮膚が折り畳まれるのを邪魔している状態です。加齢やダイエットで脂肪が減ると、一重から二重になることがあるのはこのためです。
71. 角膜は空気呼吸する

人体のほぼ全ての細胞は血液から酸素をもらいますが、黒目の表面にある「角膜」には血管がありません。もし血管があったら、視界が赤く遮られてしまうからです。そのため角膜の細胞は、涙に溶け込んだ空気中の酸素を直接取り込んで呼吸しています。コンタクトレンズを長時間つけると目が充血するのは、角膜が酸欠になり、酸素を求めて白目の血管が無理やり伸びようとするSOSサインなのです。
微生物・限界・異常の雑学
72. 体内微生物は0.5kg

私たちの体、特に腸内には約40兆個、種類にして1000種類以上もの細菌が住み着いています。これは人間の体細胞数(約37兆個)とほぼ同等かそれ以上です。かつてはこれらの細菌の重さは1〜2kgあると言われていましたが、最新の計算(2016年)では約200g〜500g程度だと修正されています。重さは軽くても、彼らは消化を助け、ビタミンを作り、免疫を調整する、生命維持に不可欠なパートナーです。
73. 最高体温記録46.5度

人間の平熱は36〜37度ですが、1980年にアメリカで熱射病により病院に搬送された男性が、体温46.5度を記録しました。通常、体温が42度を超えるとタンパク質が変性し始め、脳や臓器に不可逆的なダメージを負って死に至りますが、彼は24日間の入院を経て奇跡的に後遺症なく回復し、ギネス世界記録に認定されました。これは人体の限界を超えた極めて稀な事例です。
74. 我慢した屁は血中へ

会議中やデート中にオナラを我慢すると、行き場を失ったガスはどうなるのでしょうか。実は、腸の粘膜から血液中に吸収されてしまいます。血液に溶けたガスは全身を巡り、最終的には肺に運ばれて、呼吸(呼気)と一緒に口から排出されます。つまり、オナラを我慢しすぎると、口臭が「オナラ臭く」なる可能性があるのです。また、一部は皮膚からも排出され、体臭の原因にもなり得ます。
75. 精子は体内で5日生存
精子は非常にデリケートで、外気や乾燥には弱く数時間で死滅します。しかし、女性の体内(特に排卵期の子宮頸管粘液の中)は、精子にとって栄養豊富で守られた環境です。この条件下では、精子は約3日から最大で5日間(場合によっては7日)生存し、受精能力を維持できます。つまり、性行為の数日後に排卵が起きたとしても、待ち構えていた精子によって妊娠が成立する可能性があるのです。
76. 内臓逆位は1万人に1人

心臓は左、肝臓は右というのが通常ですが、まるで鏡に映したように全ての内臓の配置が左右逆になっている人がいます。これを「全内臓逆位」と呼び、約1万人に1人程度の確率で現れます。多くの場合は健康上の問題はなく、レントゲン撮影や聴診器を当てる時まで本人も気づかないことがあります。現実に存在する身体的特徴であり、医療処置の際には重要な情報となります。
77. 脳細胞再生には限界
皮膚や血液と違い、脳や脊髄の中枢神経細胞は、一度死滅すると基本的には再生しないと長く信じられてきました。近年の研究で、記憶を司る「海馬」などごく一部の領域では大人になっても新しい神経細胞が生まれる(神経新生)ことがわかっていますが、脳全体の損傷をカバーできるほどではありません。脳卒中などで失われた機能を回復させるのが難しいのは、この再生能力の低さが大きな壁となっているからです。
78. 生存限界3のルール

サバイバル状況における人体の限界目安として「3のルール」が知られています。これは、空気なしで3分、水なしで3日、食料なしで3週間生きられるという一般的な目安です。もちろん環境や個人差で大きく変わりますが、人間にとって何が最優先の生命維持要素なのか、酸素と水がいかに重要であるかを端的に表しています。
免疫力と健康の雑学
79. 免疫の7割は腸にある

「腸は最大の免疫器官」と呼ばれます。食事と共にウイルスや細菌が侵入してくるリスクが最も高いのが腸だからです。これに対抗するため、白血球などの免疫細胞の約60〜70%が腸壁(特に小腸のパイエル板など)に待機し、外敵の侵入を監視しています。腸内環境が悪化すると風邪を引きやすくなったりアレルギーが出たりするのは、この体全体の防衛システムの司令塔が機能不全に陥るためです。
80. 涙はストレス排出

「泣くとスッキリする」のは気のせいではありません。感情的な涙には、ストレスを感じた時に体内で生成されるホルモン(ACTHやコルチゾールなど)が含まれていることがわかっています。つまり、涙を流すことは、体内に溜まったストレス物質を物理的に体外へ「デトックス」する行為なのです。泣くことを我慢するのは、ストレス排出のチャンスを逃すことになり、メンタルヘルスにとって逆効果と言えます。
81. 成長ホルモンと免疫

「寝る子は育つ」と言いますが、大人の睡眠も重要です。睡眠中、特に深いノンレム睡眠の時に分泌される「成長ホルモン」は、骨や筋肉を育てるだけでなく、傷ついた細胞を修復し、免疫細胞の働きを活性化させる作用があります。睡眠不足が続くと風邪を引きやすくなるのは、このメンテナンス時間が不足し、免疫システムの機能維持ができなくなるためです。
82. 笑うと免疫力向上

「笑い」は副作用のない良薬です。大笑いすると、がん細胞やウイルス感染細胞を攻撃するリンパ球の一種「NK(ナチュラルキラー)細胞」が活性化するという実験結果が多数報告されています。笑うことで神経伝達物質が分泌され、ストレスホルモンが減少し、結果として免疫系がのびのびと活動できる環境が整うのです。作り笑いでも一定の効果があると言われています。
83. 作り笑いでストレス減

「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」という言葉がありますが、科学的にも一理あります。顔の筋肉を動かして笑顔の形を作ると、脳が「今は楽しい状況だ」と錯覚し、ドーパミンなどの快楽物質を分泌したり、心拍数を下げてリラックスさせたりする効果が確認されています。辛い時こそ口角を上げることは、脳を騙してストレスを和らげる有効なライフハックです。
84. 体温高いと免疫活発

平熱が低い人より高い人の方が、免疫力が高い傾向にあります。体温が1度上がると、血流が良くなり、免疫細胞は一時的に5〜6倍も活性化すると言われています。風邪を引いた時に熱が出るのは、体がわざと体温を上げてウイルスにとって居心地の悪い環境を作りつつ、自身の免疫軍団を活性化させて戦うための、理にかなった防衛反応なのです。
85. ストレスは免疫低下

精神的なストレスを感じると、副腎から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。このホルモンは、短期的には体を戦闘モードにしますが、長期間分泌され続けると、リンパ球の働きを抑制し、免疫力を著しく低下させてしまいます。受験生が風邪を引きやすかったり、悩み事があると口内炎ができたりするのは、ストレスによって自衛隊である免疫細胞が武装解除されてしまうからです。
86. 肥満は免疫を下げる

免疫にとって「中庸」は重要です。肥満(脂肪細胞の過剰)は、慢性的な微弱炎症を引き起こし、免疫細胞を疲弊させます。逆に痩せすぎ(栄養失調)は、免疫細胞を作るための材料(タンパク質やビタミン)が不足し、戦力が整いません。BMIが標準範囲(18.5〜25程度)にあることが、免疫システムが最も効率よく稼働できる条件の一つです。
87. ビタミンB1は重要

ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えるだけでなく、免疫の要である腸の「パイエル板」の維持にも関わっています。B1が不足すると、免疫細胞へのエネルギー供給が滞り、指令系統が乱れる可能性があります。豚肉や玄米、豆類などに多く含まれていますが、水溶性ですぐに排出されるため、毎日こまめに摂取することが免疫機能の維持には必要です。
88. 朝食抜きは免疫低下

寝ている間、人間の体温は下がっています。朝食を食べて消化管を動かすことは、内臓での熱産生(DIT:食事誘発性熱産生)を促し、体温を活動モードへと引き上げるスイッチになります。朝食を抜くと体温が低い状態が続き、午前中の免疫活性が上がらないまま過ごすことになります。バナナ一本やスープ一杯でも、お腹に入れることが免疫エンジンの始動には不可欠です。
89. 咀嚼で酵素が働く

唾液は「最初の消化液」であると同時に「最初の免疫バリア」です。唾液に含まれる「IgA抗体」や「リゾチーム」などの酵素は、口に入ってきた細菌の繁殖を抑えたり、活性酸素を除去したりする働きがあります。よく噛むと唾液の分泌量は最大で10倍近く増えると言われます。早食いは肥満の元になるだけでなく、この強力なバリア機能を使わずに飲み込むことになり、免疫面でも損をしているのです。
90. タンパク質が免疫作る

免疫細胞も抗体も、その主成分はタンパク質です。どんなにビタミンをとっても、材料となるタンパク質が不足していては、ウイルスと戦う武器も兵隊も作れません。特に体内で合成できない9種類の必須アミノ酸をバランスよく含む「良質なタンパク質(卵、肉、魚、大豆製品など)」を毎食片手一杯分程度とることが、強固な免疫システムを構築する基礎工事となります。
91. ビタミンACEは抗酸化

免疫細胞がウイルスと戦う際、活性酸素が発生して自らの細胞も傷つけてしまうことがあります。これを防ぐのが「ビタミンACE(エース)」と呼ばれる抗酸化ビタミンです。ビタミンAは粘膜を強化し、Cは白血球の働きを助け、Eは細胞膜の酸化を防ぎます。これらは互いに助け合って働くため、単体でとるよりも、緑黄色野菜やナッツ、果物などからセットで摂取するのが効果的です。
92. ビタミンAは粘膜守る

ウイルスが体内に侵入する主なルートは、鼻、のど、腸などの「粘膜」です。ビタミンAは、この粘膜の上皮細胞を正常に保ち、粘液の分泌を促して乾燥を防ぐ働きがあります。「粘膜のビタミン」とも呼ばれ、不足すると風邪を引きやすくなったり、肌がカサカサになったりします。レバー、うなぎ、人参(βカロテン)などに多く含まれています。
93. 亜鉛は免疫向上

亜鉛は「セックスミネラル」として有名ですが、実は「免疫ミネラル」でもあります。新しい細胞が分裂する際に必須の栄養素であり、免疫の司令塔であるT細胞や、NK細胞の発育・活性化に深く関わっています。亜鉛が不足すると、味覚障害だけでなく、免疫機能の著しい低下や、傷の治りが遅くなるといった症状が現れます。牡蠣や牛肉、ナッツ類が良質な供給源です。
94. 善玉菌で免疫向上

腸内には善玉菌、悪玉菌、日和見菌がいますが、善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)が優勢な状態だと、腸内が弱酸性に保たれ、悪玉菌の増殖が抑えられます。さらに善玉菌は、腸の免疫細胞を刺激してトレーニングさせ、免疫力を適切なレベルに保つよう働きかけます。発酵食品や食物繊維をとり、腸内フローラを「お花畑」のような良い状態にしておくことは、全身の健康防衛に直結します。
95. 適度な運動で免疫活性

ウォーキングや軽いジョギングなどの適度な運動をすると、血流やリンパの流れが良くなり、免疫細胞が体中をパトロールしやすくなります。しかし、フルマラソンのような激しすぎる運動は、逆にストレスホルモンを増やし、運動直後に一時的に免疫力が下がる「オープンウィンドウ」と呼ばれる無防備な時間帯を作ってしまいます。健康のためには「息が弾む程度」の運動を継続するのがベストです。
96. 入浴で免疫細胞活性

シャワーだけで済ませず湯船に浸かることは、免疫力アップに非常に有効です。体が温まると血管が拡張して血行が良くなり、免疫細胞が全身に行き渡ります。また、体温が上がると「ヒートショックプロテイン(HSP)」という、傷ついた細胞を修復するタンパク質が増加し、免疫増強作用を発揮します。40度くらいのぬるめのお湯に10〜15分浸かり、深部体温を上げることが推奨されます。
まとめ
結局のところ私たちの身体は、誰もが持っているにもかかわらずまだ謎に満ちた小宇宙(ミクロコスモス)です。今回ご紹介した「真摯な科学的アプローチ」でわかった人体の事柄を、ぜひ日々の健康や行動のヒントとして活かしてみてはいかが? 身体のちょっとしたサインや不思議な現象への好奇心こそが、あなたの生活をより豊かにする、最も身近な科学なのですから(小並感)