動物園に行くと、遠くからでもひときわ目を引く背の高いキリン。優雅にゆっくりと歩く姿はとても穏やかで可愛らしいですが、実はその長すぎる首や独特の体の仕組みには、私たちの想像をはるかに超える驚きの秘密がたくさん隠されています。
今回は、そんなキリンにまつわる面白い雑学や豆知識を30個厳選してご紹介します。首の骨の数や睡眠時間のヒミツから、ちょっと意外な歴史のエピソードまで、子ども向けのクイズや会話のネタにも使える知識をたっぷりまとめましたので、ぜひ最後まで楽しんでみてくださいね。
1.首の骨の数は人間と同じ

あんなに長いキリンの首ですが、実は中にある骨(頸椎)の数は、人間やネズミとまったく同じ「7個」しかありません。骨の数が何十個もあるわけではなく、1つひとつの骨が縦に約25〜30センチメートルほどと、大きく引き伸ばされた構造をしています。哺乳類はナマケモノなどのごく一部の例外を除き、どんなに首が長くても短くても頸椎の数は7個と決まっているのは、進化の不思議を感じさせる事実ですね。
2.角は最大で5本もある

キリンの頭には先端が丸い2本の角が生えているイメージが強いですが、実は最大で5本もの角(突起)を持っている個体が存在します。メインの2本のほかに、額の中央に1本、さらに後頭部に小さな2本の突起があるのです。キリンの角は「オシコーン」と呼ばれ、シカのように生え変わることはなく、頭蓋骨とくっついて皮膚や毛に覆われたまま一生伸び続けます。
3.舌は青紫色で50cm

キリンがエサを食べる時に伸ばす舌は、長さが約45〜50センチメートルもあり、黒っぽい青紫色をしているのが大きな特徴です。なぜこんな色をしているのかというと、高い場所にある木の葉を一日中食べ続ける際、強烈なアフリカの紫外線で舌が日焼けして炎症を起こすのを防ぐためだといわれています。メラニン色素がたっぷりと含まれた長い舌を器用に使って、トゲのある枝から葉っぱだけを巻き取って食べます。
4.血圧は動物界で最高峰

心臓から2メートル以上も高い位置にある脳まで血液を押し上げるため、キリンは地上の動物の中で最も血圧が高い生き物として知られています。最高血圧は約250〜300mmHgにも達し、これは人間の健康な数値のなんと2倍以上です。これを支えるために心臓自体も非常に巨大で、重さは約10キログラム、長さは60センチメートルほどもあり、分厚い筋肉の壁で力強く全身に血液を送り出しています。
5.頭を下げても貧血ゼロ

超高血圧のキリンが水を飲むために急に頭を地面まで下げると、頭に血が上って血管が破裂しそうですが、首の血管にある逆流防止弁と特殊な網目構造がそれを防いでいます。脳のすぐ下には「奇網(きもう)」と呼ばれる毛細血管の集まりがあり、ここがスポンジのように急激な血圧の変化を吸収してくれるのです。そのため、急に頭を上げ下げしても立ちくらみや脳出血を起こさずに動くことができます。
6.熟睡は1日たった20分

野生のキリンは肉食動物に襲われる危険が常にあるため、1日の睡眠時間が合計してもわずか20分〜2時間程度と極端に短い動物です。しかも一度にまとめて眠ることは少なく、立ったまま数分間のうたた寝を繰り返して体を休めます。地面に座り込んで首を丸めて深く眠る「熟睡時間」に至っては、1回につき数分、1日合計でもたった20分前後しかとらないというから驚きですね。
7.人間には聞こえない声

動物園でキリンが鳴いているところを見たことがある人は少ないと思いますが、実は鳴かないのではなく、人間には聞き取れない20ヘルツ以下の「超低周波音」で会話しています。かつては「声帯がない」「鳴くのを忘れた動物」などと言われたこともありましたが、立派な声帯を持っており、遠く離れた仲間とも低周波の振動を使ってコミュニケーションをとっています。なお、危機が迫った時や求愛の際には「モー」と聞こえる声で鳴くこともあります。
8.伝説の霊獣「麒麟」が由来

日本語の「キリン」という名前は、中国の神話に登場する伝説上の瑞獣(ずいじゅう)である「麒麟」に由来しています。15世紀の明の時代、航海家の鄭和(ていわ)がアフリカから連れてきたキリンを皇帝に献上した際、その気高く美しい姿と、現地ソマリ語の呼び名「ゲリ(Geri)」の響きが「麒麟(キリン)」に似ていたことから、生きた伝説の獣として大歓迎されたのがきっかけです。
9.脚が長すぎて水が飲みにくい

高い木の葉を食べるには便利な長い脚ですが、実は首よりも前脚のほうが長いため、地面の水を飲む時は前脚を大きく左右に開くという無防備な姿勢をとらなければなりません。この体勢になると、ライオンなどの天敵が近づいてきてもすぐに立ち上がって逃げることができないため、キリンにとって水飲み場は命がけの場所です。そのため、普段の水分は主に食べている木の葉から効率よく摂取しています。
10.時速50km以上で走る

普段はゆったりと優雅に歩いているキリンですが、天敵から逃げる時など本気を出して走ると、最高で時速50〜60キロメートルもの猛スピードを出すことができます。一歩のストライド(歩幅)が5メートル近くもあるため、見た目以上にぐんぐんと距離を稼げるのです。また、歩く時は右の前脚と後ろ脚を同時に出し、次に左の前脚と後ろ脚を同時に出す「側対歩(そくたいほ)」という珍しい歩き方をします。
11.ライオンを倒すキック力

草食動物でおとなしいイメージのあるキリンですが、実はライオンを一撃で倒してしまうほどの凄まじいキック力を秘めています。体重が1トン近くもある巨体から繰り出される、長くて硬い蹄(ひづめ)を使った蹴りはまさに凶器そのものです。さらに前脚だけでなく後ろ脚でもあらゆる方向に蹴りを放つことができるため、百獣の王ライオンであっても、大人の健康なキリンを正面から襲うことはめったにありません。
12.親戚はシマ模様のオカピ

動物界の中でキリンの最も近い親戚にあたるのは、お尻と脚に白黒の縞模様がある「オカピ」という動物です。オカピは見た目がシマウマやシカに似ていて首も長くありませんが、分類上はキリンと同じ「キリン科」に属する唯一の現存種です。オカピもキリンと同じように皮膚に覆われた小さな角(オシコーン)を持っており、青黒くて長い舌を使って木の葉を巻き取って食べるなど、共通点がいくつもあります。
13.赤ちゃんは2mから落下

お母さんキリンは出産をする時も立ったままの姿勢で行うため、生まれてくる赤ちゃんは地上約2メートルの高さから地面へ真っ逆さまに落下してこの世に誕生します。一見すると乱暴に思えますが、この落下の衝撃によってへその緒が自然に切れ、赤ちゃんが最初の呼吸を始めるための大切な刺激になるのです。生まれたばかりの赤ちゃんはすでに身長が1.8メートルほどあり、なんと生後数十分〜1時間ほどで自力で立ち上がります。
14.網目模様は体温調節の窓

キリンの体にある美しい網目模様は、サバンナの木漏れ日に溶け込むカモフラージュの役割だけでなく、体の熱を逃がす「体温調節」の役割も果たしています。茶色い模様のパッチの下には太い血管がぐるりと取り囲むように走っており、そこから汗腺を通じて効率よく熱を放出する仕組みになっているのです。ちなみにこの網目模様は人間の指紋と同じで、世界に同じ模様の個体は一頭もいません。
15.胃が4つあり反芻する

キリンはウシやヒツジなどの仲間と同じ「偶蹄類(鯨偶蹄目)」に分類されるため、胃が4つの部屋に分かれており、食べたものを吐き戻して噛み直す「反芻(はんすう)」を行います。一度飲み込んだ木の葉を胃の中の微生物の力で発酵させ、休憩中に長い首を通って口まで戻し、再びモグモグと噛み砕いて消化・吸収しやすくするのです。動物園でキリンを観察していると、長い首の途中がポコッと膨らんで食べ物が上下に移動する様子が見られます。
16.大好物はトゲのある木

野生のキリンが好んで食べるのは、サバンナに生えている鋭いトゲがびっしり生えた「アカシア」という木の葉です。他の草食動物が痛くて食べられないような長いトゲのある枝でも、キリンは分厚く強靭な唇と長い舌、そしてトゲを包み込むネバネバした大量の唾液を使って、傷つくことなく器用に葉っぱだけを絡め取ります。高い場所にあるうえにトゲまであるため、他の動物とエサの取り合いにならずに済むというわけです。
17.首をぶつけ合う激しい戦い

オスのキリン同士が縄張りやメスをめぐって争う時は、長い首をムチのようにしならせて相手に叩きつける「ネッキング」と呼ばれる激しい戦いを行います。重さ100キログラム以上ある首と、硬い角が生えた頭部をハンマーのように振り回してぶつけ合うため、その衝撃音は遠くまで響き渡るほどです。時には相手の肋骨が折れたり、打ちどころが悪くて気絶してしまったりすることもある、まさに命がけのバトルです。
18.脚の皮膚が着圧ソックス

キリンほど背が高いと、重力によって血液や水分がすべて脚の下のほうに溜まってむくんでしまいそうですが、脚の皮膚が分厚くピンと張っていて「着圧ソックス」のような役割を果たしています。強靭な皮膚と筋膜が脚の血管を外側からギュッと締め付けることで、血液が下に滞るのを防ぎ、心臓へとスムーズに押し戻しているのです。この仕組みにヒントを得て、宇宙飛行士が着用する重力スーツの研究も行われました。
19.実は泳ぎが苦手な動物

ほとんどの哺乳類は本能的に水に入って泳ぐことができますが、キリンは極端に脚が細長くて重心が高いため、水に入るとバランスがとれず泳ぐのが非常に苦手だと考えられてきました。近年のコンピュータシミュレーション研究では「理論上はギリギリ浮いて進める可能性がある」とも発表されましたが、首が重すぎて溺れるリスクが高いため、野生のキリンが深い川を泳いで渡ることはまずありません。
20.初来日は1907年の上野

日本に初めて生きたキリンがやってきたのは、今から100年以上前の明治40年(1907年)の上野動物園でのことでした。ドイツの有名な動物商から購入されたオスの「ファンジ」とメスの「グレー」というペアで、当時はまだ「キリン」という名前が定着しておらず、伝説の霊獣「麒麟」にちなんで漢字で「麒麟」と紹介されました。そのあまりの珍しさに、当時の東京中から大勢の見物客が詰めかけたそうです。
21.学名はラクダとヒョウ

キリンの英語名「Giraffe(ジラフ)」のもとになった学名には「カメレパルダリス(Camelopardalis)」という言葉が使われており、これは古代ギリシャ語で「ラクダ(キャメル)+ヒョウ(レパード)」という意味を持っています。古代ヨーロッパの人々が初めてキリンを見たとき、「ラクダのように体が大きくて首が長く、ヒョウのような美しい斑点模様がある不思議な生き物」だと感じたことから、このユニークな名前がつけられました。
22.6月21日はキリンの日

毎年6月21日は、国際的な保護団体によって「世界キリンの日(World Giraffe Day)」に制定されています。なぜ6月21日なのかというと、北半球において1年で最も昼の時間が長い「夏至(げし)」の日と、地上で「最も首が長い動物」であるキリンをかけ合わせているからです。この日は世界中の動物園や保護団体で、野生のキリンの減少や環境保護について楽しく学ぶイベントが開催されています。
23.視力は非常に優れている

約5メートルもの高さに目があるキリンは、遠くの景色を見渡せるだけでなく、草食動物の中でもトップクラスに視力が優れており色覚も持っていることが分かっています。顔の側面に大きな目が配置されているため、首を動かさなくてもほぼ全方位を見渡すことができ、数キロメートル先にいるライオンなどの天敵もいち早く発見できます。そのためサバンナでは、シマウマやダチョウなどの他の動物たちも「キリンが逃げたら危険」と頼りにしています。
24.大人のオスはツノがハゲる

キリンの角の先には黒いフサフサとした毛が生えていますが、大人のオスは角の先端の毛がすり減ってツルツルにハゲていることがよくあります。一方、メスや子どものキリンは大人になっても角の先に毛がしっかり残っています。これはオス同士が首をぶつけ合う「ネッキング」の戦いを何度も繰り返すうちに、角の先端の毛が摩擦で抜け落ちてしまうためで、遠くからでもオスとメスを見分ける簡単なポイントになります。
25.おしっこで発情を確かめる

オスのキリンはメスが赤ちゃんを産める状態(発情期)にあるかどうかを確かめるため、メスのおしっこを直接口に含んで匂いや成分を調べるという驚きの行動をとります。オスのキリンがメスのお尻を鼻先でつついて排尿を促し、その尿を口に含んで唇をキュッとめくり上げる「フレーメン反応」を見せることで、ホルモンバランスを正確に察知するのです。人間から見ると少しびっくりしてしまいますが、子孫を残すための大切な儀式です。
26.鳥と共生し虫を取ってもらう

野生のキリンの体にはいつも「ウシツツキ」という小さな鳥が止まっていますが、これはキリンの皮膚についたダニなどの寄生虫を鳥が食べてくれる「共生関係」にあるからです。キリンは首や脚が長すぎて自分で体の隅々まで毛づくろいをすることができないため、鳥が虫をついばんで掃除してくれるのは大助かりです。ただし、時には鳥がキリンの傷口をつついて血を吸ってしまうこともあるため、ちょっぴり複雑な関係でもあります。
27.植物もトゲや毒で対抗する

キリンに葉っぱを食べられ続けるアカシアの木もただ黙っているわけではなく、キリンにかじられると葉の中に「タンニン」という苦い渋み成分を急増させて撃退する仕組みを持っています。さらに驚くべきことに、葉をかじられた木は空気中に「エチレンガス」を放出し、風下にある仲間のアカシアの木に「今キリンが来ているぞ!」と知らせて、周囲の木々も一斉に葉を苦くさせます。そのためキリンは、わざわざ風上に向かって移動しながら食事をするのです。
28.あくびをしない珍しい動物

ライオンやイヌ、ネコ、そして私たち人間など、脊椎動物のほとんどは眠い時やリラックスしている時に「あくび」をしますが、キリンは動物界でも非常に珍しい「あくびをまったくしない動物」として知られています。これまで世界中の研究者や動物園の飼育員が長年にわたって観察を続けてきましたが、キリンがあくびをしたという確実な記録はほとんどありません。なぜキリンだけがあくびをしないのか、その理由は今も謎に包まれています。
29.キリンの保育園がある

群れで暮らすメスのキリンたちは、子育てをする際に1頭のお母さんキリンが幼稚園の先生のように複数の子どもたちを見守る「託児所(クレッシュ)」のような仕組みを作ります。他の母親たちがエサを探しに出かけている間、当番のメスが子キリンたちを集めて天敵から守り、夕方になるとそれぞれのお母さんのもとへ帰っていくのです。広いサバンナで大切な命を守り抜くための、とても微笑ましい助け合いの知恵ですね。
30.実は4種類に分けられる

これまでキリンはすべて同じ「1種類(キリン種)」で、模様や住む場所によっていくつかの亜種に分かれると考えられていましたが、近年の遺伝子研究により実は遺伝的に異なる「4つの別種」に分けられる可能性が高いことが判明しました。アミメキリン、マサイキリン、ミナミキリン、キタキリンの4種は、見た目は似ていても野生下で交雑することはほとんどなく、ヒグマとホッキョクグマくらい遺伝子の違いがあるといわれています。
まとめ
今回は、動物園の人気者であるキリンに関する面白い雑学を30個ご紹介しました。首の骨が人間と同じ7個しかないことや、超高血圧に耐えるための特殊な血管・着圧ソックスのような皮膚など、あの長い首と脚を維持するために全身が驚くべき進化を遂げていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
次に動物園でキリンを見る機会があれば、ぜひ「青紫色の長い舌」や「角の数と先端の毛」「側対歩の歩き方」などに注目して観察してみてください。知っているだけで見方がガラリと変わる動物の豆知識を、ぜひご家族や友人にクイズとして出題して盛り上がってみてくださいね!
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