スーパーの鮮魚コーナーや食卓でおなじみの「イワシ(鰯)」。手頃な価格で味わえる庶民の味方ですが、実はその小さな体には驚くほどユニークな生態や歴史の秘密がたくさん隠されているのをご存知でしょうか?
今回は、誰かに話したくなるイワシの面白い雑学・豆知識を30個厳選してご紹介します!名前の由来や英語表現、健康に嬉しい栄養パワーから偉人との意外なエピソードまで幅広くまとめましたので、ぜひ最後まで楽しんでみてくださいね。
1.名前の由来は「弱し」

イワシという名前の由来には諸説ありますが、最も有力なのは水から揚げるとすぐに弱ってしまう「弱し(よわし)」という言葉が転じたという説です。実際にイワシはウロコが非常にはがれやすく、人の手で触れるだけでも体温でヤケドをして弱ってしまうほどデリケートな魚です。また、かつて貴族の間で庶民が食べる「卑しい(いやしい)魚」と呼ばれていたことが語源になったという説も残されています。
2.漢字の「鰯」は日本生まれ

魚へんに弱いと書く「鰯」という漢字は、実は中国から伝わったものではなく、日本人が独自に作り出した「国字(和製漢字)」です。先ほどの語源と同じく、陸に揚げるとあっという間に死んでしまう弱々しい性質をそのまま文字に表しています。ちなみに、平安時代の古い記録や木簡などでは「伊和志」や「伊委之」といった万葉仮名のような当て字で表記されており、時代とともに「鰯」の字が定着していきました。
3.実は「イワシ」という種はない

私たちが普段呼んでいる「イワシ」は、実は1種類の特定の魚を指す名前ではありません。日本で食用として流通しているイワシは、「マイワシ」「ウルメイワシ」「カタクチイワシ」という3種類の魚の総称として使われています。さらに驚くことに、生物学上の分類ではマイワシはニシン科、ウルメイワシはウルメイワシ科、カタクチイワシはカタクチイワシ科と、それぞれ異なる科に属している別々の魚なのです。
4.7つの黒点があるマイワシ

一般的なイワシのイメージとして最もなじみ深いのが「マイワシ」です。体の側面に黒い斑点が1列に7個ほど並んでいることから、別名「ナナツボシ(七つ星)」という美しい呼び名を持っています。ただし、よく観察すると黒点の数が7つではない個体や、2列・3列に並んでいる個体も珍しくありません。3種類の中で最も脂の乗りが良く、お刺身や塩焼き、煮付けなど幅広い料理で主役になる品種です。
5.目が潤んでいるウルメイワシ

「ウルメイワシ」は、その名の通り大きくて黒々とした瞳が潤んでいるように見えることから名付けられました。実際には悲しくて涙ぐんでいるわけではなく、目の表面が分厚い透明な脂の膜(脂瞼・しけん)で覆われているため、うるうるとした瞳に見えます。イワシ3種の中では最も体が大きく、30センチ近くに成長することもあります。マイワシに比べて脂が控えめでさっぱりしており、干物にすると絶品です。
6.シラスはイワシの赤ちゃん

ご飯のお供に大人気の「シラス」や「ちりめんじゃこ」は、実は主にカタクチイワシやマイワシの稚魚(赤ちゃん)を加工したものです。生まれたばかりの頃は体が透き通っていますが、成長するにつれて銀色のウロコが作られていきます。ちなみに、釜茹でしただけの柔らかい状態のものを「釜揚げしらす」、そこから少し乾燥させたものを「しらす干し」、さらにしっかり天日干しして硬くしたものを「ちりめんじゃこ」と呼び分けます。
7.アンチョビもイワシから作られる

ピザやパスタのアクセントに欠かせないイタリア食材の「アンチョビ」ですが、これは「カタクチイワシ」を塩漬けにして発酵・熟成させた保存食です。そもそも英語でカタクチイワシのことを「アンチョビ(anchovy)」と呼び、食材名としてもそのまま使われています。カタクチイワシは上アゴが突き出ていて、下アゴが極端に小さい(片口に見える)のが特徴で、世界中で出汁や発酵食品として愛されています。
8.オイルサーディンの英語の由来

イワシの油漬け缶詰である「オイルサーディン」の「サーディン(sardine)」は、英語でマイワシなどの小型のイワシ類を指す言葉です。この言葉のルーツは地中海に浮かぶイタリアの島にあり、かつて「サルデーニャ島」の周辺海域でイワシが大量に獲れたことに由来しています。アンチョビが塩辛く熟成させて調味料のように使うのに対し、オイルサーディンは塩分が控えめで、そのままおつまみや具材として楽しめます。
9.実は外敵から身を守るための大群

水族館や海の映像で、何万匹ものイワシが一斉に渦を巻くように泳ぐ「イワシトルネード」を見たことがある方も多いでしょう。マグロやサバなどは獲物を効率よく捕らえるために群れを作りますが、イワシが大群を作るのは自分を大きく見せて天敵の目をくらませ、捕食される確率を下げるためです。武器を持たない小さなイワシたちが、弱肉強食の厳しい海を生き抜くために身につけた究極の防衛術なのです。
10.群れにはリーダーがいない

まるで1つの巨大な生き物のように息ぴったりに動くイワシの大群ですが、実は先頭で指示を出すリーダーや司令塔は1匹も存在しません。イワシの体の側面には「側線(そくせん)」という水の流れや水圧の変化を敏感に感じ取る器官が備わっています。隣の仲間との距離や動きを瞬時に察知して「近づきすぎたら離れる、離れたら近づく」という単純なルールを全員が繰り返すことで、絶対にぶつからない見事な連携が生まれています。
11.口を開けて泳ぐのは呼吸のため

泳いでいるイワシをよく観察すると、パクパクと口を大きく開けたまま進んでいることに気づきます。これはエサとなる小さなプランクトンを海水ごと飲み込んでエラでこし取って食べるためでもありますが、最大の理由は常に新鮮な海水を口からエラへと流し込んで酸素を取り込むためです。イワシは自分の力でエラ蓋を動かして水を送り込むのが苦手なため、泳ぎ続けることで呼吸を維持しているのです。
12.背中が青くお腹が白い理由

イワシをはじめとする「青魚」は、背中側が濃い青緑色をしていて、お腹側がキラキラとした銀白色をしています。これは「カウンターシェーディング」と呼ばれる自然界の巧妙なカモフラージュ(迷彩)です。上から狙う海鳥からは暗い海の色に溶け込み、下から見上げる大型魚からは太陽の光に紛れることで、上下どちらの天敵からも姿を見つけられにくくしています。
13.年輪のように年齢がわかるウロコ

マイワシの寿命はおよそ4〜5年ほど(長生きな個体で8年ほど)と言われていますが、その正確な年齢はウロコを顕微鏡で調べることでわかります。イワシのウロコには木の年輪のような細かい筋(輪紋)が刻まれており、水温が下がって成長がゆっくりになる冬場に、筋の間隔がギュッと狭くなるため、その帯の数を数えることで何歳なのかを特定できるのです。耳の奥にある「耳石(じせき)」でも同じように年齢を調べられます。
14.実はうなぎより栄養価が高い?

安くて庶民的なイメージのイワシですが、その栄養価は高級魚のうなぎにも引けを取りません。血液をサラサラにする「EPA」や脳の働きをサポートする「DHA」が豊富なのはもちろん、カルシウムの吸収を助けるビタミンDや、細胞の再生を促すビタミンB2・核酸などがぎっしり詰まっています。さらに血圧の上昇を抑える「イワシペプチド」も含まれており、まさに天然のマルチサプリメントと呼べる優秀な健康食材です。
15.梅雨のイワシが絶品の理由

イワシは1年を通して漁獲されますが、特に6月〜7月の梅雨の時期に水揚げされるマイワシは「入梅(にゅうばい)いわし」と呼ばれ、1年で最も脂が乗って美味しいと重宝されます。これは、秋から冬にかけての産卵期に向けて、春先から栄養豊富な植物プランクトンをたっぷり食べて体に脂肪を蓄えるためです。この時期のイワシはとろけるような甘みがあり、お寿司屋さんでも高級ネタとして扱われるほどの味わいです。
16.「七度洗えば鯛の味」の意味

古くからイワシにまつわることわざとして「鰯も七度洗えば鯛の味」という言葉があります。これは文字通り7回洗えという意味ではなく、「丁寧な下処理で血や内臓、ウロコの生臭さをしっかり取り除けば、高級魚の鯛にも負けないほど美味しい」という先人の知恵を表しています。イワシは傷みやすく臭みが出やすい魚ですが、新鮮なうちに手早く水洗いして調理すれば、驚くほど上品な旨味を引き出すことができます。
17.梅干しと一緒に煮る科学的な理由

イワシの定番料理といえば「イワシの梅煮」ですが、梅干しを入れるのは単なる風味付けだけが目的ではありません。梅干しに含まれる「クエン酸」などの有機酸には、イワシの生臭さの元となるアルカリ性の成分「トリメチルアミン」を中和して消臭する働きがあります。さらに、酸の力でイワシの骨が柔らかくなり、カルシウムが体内に吸収されやすくなるという一石三鳥の科学的メリットがあるのです。
18.包丁いらずの「手開き」ができる

魚をさばくのはハードルが高いと感じる方も多いですが、イワシは包丁を使わずに指先だけでさばく「手開き」ができる珍しい魚です。頭を落としたあと、お腹から中骨に沿って親指をスーッと滑らせるだけで、簡単に身と骨を剥がすことができるほど身が柔らかいのが特徴です。洗い物も減り、小骨も一緒に取り除きやすいため、お料理初心者やお子様のお手伝いにもぴったりの調理法として親しまれています。
19.紫式部は隠れてイワシを食べた

平安時代、イワシは味が良いものの「庶民が食べる下魚(げざかな)」とみなされ、宮廷の貴族が口にするのは恥ずかしいことだとされていました。しかし、『源氏物語』の作者である紫式部は大のイワシ好きで、夫の藤原宣孝が留守の隙にこっそり焼いて食べていたという逸話が残っています。帰宅した夫に見つかって咎められた際、紫式部は「日の本に はやらせ給ふ いはしみず まいらぬ人は あらじとぞ思ふ(石清水八幡宮にお参りしない人がいないように、イワシを食べない人なんていませんわ)」と和歌で粋に切り返し、夫を感心させたそうです。
20.イワシを「おむら」と呼んだ宮中

紫式部だけでなく、実は多くの公家や女房たちも脂の乗った美味しいイワシの虜になっていました。そこで室町時代以降の宮中では、イワシを食べていることが周囲にバレないように、紫式部の「紫(むらさき)」にちなんでイワシを「おむら」や「むらさき」という隠語(女房詞)で呼ぶようになりました。ちなみに現在私たちが醤油のことを「むらさき」と呼ぶのも女房詞の名残ですが、かつてはイワシも同じ呼び名で愛されていたのです。
21.節分に飾る「柊鰯」の由来

節分の時期になると、ヒイラギの枝に焼いたイワシの頭を刺した「柊鰯(ひいらぎいわし)」を玄関先に飾る風習があります。これは平安時代から続く魔除けの儀式で、「イワシを焼くときに出る強い煙と匂いで邪気(鬼)を遠ざけ、ヒイラギの鋭いトゲで鬼の目を刺す」という意味が込められています。現代では匂いやカラス対策から飾る家庭が減りましたが、関西や奈良などの地域では今も大切に受け継がれています。
22.「鰯の頭も信心から」の本当の意味

よく耳にすることわざ「鰯の頭も信心から」は、先ほどの節分の「柊鰯」がルーツになっています。その意味は、「イワシの頭のような一見つまらないものでも、深く信じる気持ちがあれば尊くありがたいお守りに見える」という、人間の信仰心の不思議さを表した言葉です。決してイワシをけなしているわけではなく、信じる心の強さや思い込みの力をユーモラスに例えた江戸時代からの表現です。
23.お米の別名「ごまめ」はイワシ

おせち料理に欠かせない「田作り(たづくり)」は、カタクチイワシの稚魚を乾燥させて甘辛く炒り煮にした料理です。かつてイワシを干したものは農作物の高級な肥料として使われており、イワシを撒いた田んぼから驚くほどたくさんのお米が収穫できたことから、豊作を願って「田作り」と呼ばれるようになりました。また、別名の「ごまめ(五万米)」にも「五万俵ものお米が穫れるように」という縁起の良い願いが込められています。
24.江戸の夜を照らしたイワシの油

江戸時代、イワシは食べるだけでなく、暮らしを支えるエネルギー源としても大活躍していました。大量に獲れたイワシを大釜で煮て圧搾すると、肥料になる「〆粕(しめかす)」と一緒に大量の「イワシ油」が採れます。当時の菜種油は非常に高価だったため、庶民の間では安価なイワシ油が行灯(あんどん)の燃料として広く使われ、江戸の夜の街を明るく照らしていたのです。火を灯すと独特の魚臭さが漂ったそうですが、江戸の発展には欠かせない存在でした。
25.木綿栽培を支えた「干鰯」

江戸時代に日本中で木綿(コットン)の着物や藍染めが普及した背景にも、実はイワシの力がありました。木綿や藍を育てるには大量の栄養が必要でしたが、そこに革命を起こしたのがイワシを天日干しにした肥料「干鰯(ほしか)」でした。九十九里浜(千葉県)などで水揚げされた膨大なイワシが肥料として全国の農村へ運ばれ、日本の農業生産と繊維産業を劇的に発展させる原動力となったのです。
26.「いわし雲」と大漁の不思議な関係

秋の高い空に白い小石を並べたように広がる「いわし雲(巻積雲)」は、その名の通りイワシの群れやウロコに似ていることから名付けられました。昔から漁師の間では「いわし雲が出るとイワシが大漁になる」と言い伝えられています。これは迷信ではなく、いわし雲が現れる時は低気圧や前線が近づいて海が適度にかき混ぜられ、プランクトンが浮上してイワシが沿岸に集まりやすくなるという気象学的な根拠があるのです。
27.数十年周期で数が激変する謎

マイワシの漁獲量は、数十年単位で爆発的に増えたり、逆にほとんど獲れなくなったりする不思議なサイクルを繰り返しています。例えば1980年代には日本で年間400万トン以上も獲れていたマイワシが、2000年代には数万トンまで激減し、近年また回復傾向にあります。これは乱獲だけでなく、地球規模の気候変動や海水温の変化に合わせて、イワシとカタクチイワシなどの主役が交代する「魚種交替(レジーム・シフト)」という自然現象が起きているためです。
28.鮮度が落ちるとお腹が破れる理由

鮮度が落ちたイワシを見ると、お腹の皮が破れて内臓や骨が飛び出していることがあります。これは外から傷つけられたわけではなく、イワシが持っている非常に強力な消化酵素が、死後に自分自身の胃袋やお腹の肉を溶かしてしまう「自己消化」という現象が原因です。プランクトンを素早く消化するために発達した酵素が、水揚げされた途端に自分の体を分解し始めてしまうため、イワシは誰よりも鮮度管理が難しい魚なのです。
29.美味しいイワシを見分けるコツ

スーパーで本当に新鮮で脂が乗った美味しいイワシを選ぶには、いくつかのチェックポイントがあります。まずは黒目が澄んでいて、背中の青色とお腹の銀色の境目がくっきりしているものを選びましょう。さらに重要なのが体型で、頭が小さく見えて、首の後ろから背中にかけてぷっくりと丸く盛り上がっている個体は、皮の下に良質な脂がたっぷり蓄えられている極上のイワシです。
30.世界の海を支える「海の米」

イワシは私たち人間にとって大切な食材であるだけでなく、海の生態系全体を支える極めて重要な存在です。植物プランクトンを食べて育つイワシは、マグロやカツオ、イルカ、クジラ、さらにはペンギンや海鳥にいたるまで、あらゆる海の生き物たちの主食となることから「海の米(海の牧草)」と呼ばれています。イワシが元気に海を泳ぎ回っているからこそ、豊かな海の命のバトンが今日も繋がっているのです。
まとめ
今回は、身近な魚「イワシ」にまつわる面白い雑学を30個ご紹介しました。水から揚げるとすぐに弱ってしまう繊細さを持ちながら、大群を作って外敵から身を守り、海の生態系や日本の歴史まで支えてきたイワシの奥深い魅力を感じていただけたのではないでしょうか。
スーパーの鮮魚コーナーや食卓でイワシやシラス、アンチョビを見かけたときは、ぜひ今回の豆知識を思い出してみてくださいね。「実は紫式部も隠れて食べていたんだよ」「シラスとアンチョビは同じ仲間なんだよ」と家族や友人にシェアすれば、いつもの食事がもっと楽しく盛り上がること間違いなしです!
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