私たちが普段何気なく使っている日本語。「それ、使い方が間違っているよ」なんて指摘されたことはありませんか?でも実は、言葉というのは時代と共に生き物のように変化していくものなんです。かつては真逆の意味で使われていたり、全く違うニュアンスを持っていた言葉がたくさんあります。今日は、そんな「いつの間にか意味が変わってしまった言葉」の世界へご案内します。話のネタにぴったりな雑学を楽しみましょう!
1.貴様は超高級な敬語
今では相手を罵る時に使われる「貴様」ですが、漢字を見てみてください。「貴い(とうとい)様」と書きますよね。実は室町時代末期から江戸時代初期にかけては、目上の人に対する極めて尊敬の度合いが高い呼称だったのです。それが時を経て、親しい間柄で使われるようになり、最終的には相手を見下す言葉へと劇的にランクダウンしてしまいました。言葉のインフレが生んだ悲劇の代表格と言えます。
2.お前も神様レベル
「貴様」と同様に、「お前」も現代では少し乱暴な言い方に聞こえますよね。しかし、もともとは「御前(おんまえ)」と書き、神仏や高貴な人の前を指す言葉でした。そこから転じて、高貴な人そのものを指す尊敬語として使われていたのです。明治時代頃から同等以下の相手に使われるようになりましたが、由緒正しい家柄の言葉だったとは驚きですよね。
3.確信犯の本来の意味
悪いことだとわかっていながら行うことを「確信犯」と言っていませんか?実はこれ、本来は法律用語や哲学的な文脈で使われる言葉で、「自分の信念に基づいて、それが正しいことだと信じて行う行為」を指すんです。テロリストや革命家などがこれに当たります。「悪いことだとわかってやっている」という現代の使い方は、実は誤用から定着したものなんですよ。
4.敷居が高いの勘違い
「高級すぎて入りにくい」という意味で使われがちなこの言葉。本来の意味は、「不義理や迷惑をかけてしまって、その人の家に行きにくい」という心情を表すものです。借金を返していない友人の家などが当てはまりますね。お店の格が高くて入りにくいという意味で使うのは間違いでしたが、最近では辞書に新しい意味として掲載されるほど定着しています。
5.役不足は褒め言葉
「私には役不足です」と謙遜して使っていませんか?これは大変な間違いで、相手に失礼になる可能性があります。本来の意味は「その人の能力に対して、与えられた役目が軽すぎる」ということ。「もっと重要な役をやらせろ!」と言っているのと同じになってしまいます。謙遜したい場合は「力不足」を使うのが正解ですね。
6.煮詰まるは解決間近
会議でいいアイデアが出ず、行き詰まった時に「煮詰まってきたなあ」と言いますよね。でも本来は、料理で煮汁が煮詰まって完成するように、「議論が出尽くして、結論が出る段階に近づいた」というポジティブな意味なんです。真逆の意味で使われている言葉の代表例ですが、今では「行き詰まる」の意味で使う人が圧倒的に多いようです。
7.姑息は卑怯じゃない
「姑息な手段」というと、なんだか卑怯でずるいやり方をイメージしますよね。しかし、本来の意味は「一時しのぎ」や「その場逃れ」のこと。「姑」はしばらく、「息」は休むという意味があります。根本的な解決にはならないけれど、とりあえずその場を凌ぐ対応のことを指すので、必ずしも悪意があるわけではないんです。
8.情けは人のためならず
「人に情けをかけると、その人のためにならないから厳しくしよう」という意味だと思っていませんか?これは全くの逆で、「人に親切にすれば、巡り巡って自分によい報いが返ってくる」という美しい教えなんです。自分自身の幸福のためにも、他人には優しくありたいものですね。誤解している人が非常に多いことわざの一つです。
9.失笑は笑わない?
「呆れて失笑した」のように、呆れて笑うことだと思われがちですが、本来は「おかしくてたまらず、思わず吹き出してしまうこと」を指します。「笑いを失う」のではなく、「笑いをこらえきれずに漏らしてしまう」状態です。もし誰かの発言に「失笑を買った」としても、それは本来「ドッとウケた」という意味になるはずなんです。
10.爆笑は一人じゃ無理
部屋でテレビを見ていて「一人で爆笑した」という使い方は、厳密には間違いとされています。本来の「爆笑」は、「大勢の人がどっと一斉に笑うこと」を指す言葉だからです。一人の場合は「大笑い」などが適切。ですが、現在では辞書によって「一人でも大声で笑うこと」という意味を追加しているものもあり、言葉の変化を感じさせます。
11.破天荒は豪快ではない
「破天荒な人生」というと、無茶苦茶で豪快な人をイメージしますよね。しかし語源は中国の故事で、「天荒(未開の地)」を「破り(切り開き)」、初めて科挙の合格者を出したというエピソードから来ています。つまり、「誰も成し得なかったことを初めて行う」という偉業を称える言葉なのです。単なる暴れん坊には使えない誉め言葉なんですよ。
12.潮時は終わりの合図?
「そろそろ潮時かな」と言うと、引退や諦めるタイミングのように聞こえますが、本来は「物事を始めるのにちょうど良い機会」という意味です。漁師が船を出すのに最適な満ち潮の時間を指す言葉が由来。本来は「チャンス到来!」という前向きな言葉なのですが、なぜか引き際の意味で使われることが多くなってしまいました。
13.さわりは最初の部分?
「話のさわりだけ教えて」と言われたら、冒頭部分を話していませんか?これは義太夫節(浄瑠璃)の用語で、「一番の聞きどころ、クライマックス」を指す言葉なんです。曲で言えばイントロではなく「サビ」の部分。一番おいしい部分だけを聞かせて、という意味なので、最初の部分だけ話すと相手は物足りなく感じるかもしれません。
14.世間ずれのズレ
「世間ずれしている」というと、世間の常識からズレている(外れている)と思いがちですが、漢字で書くと「世間擦れ」。世の中を渡って揉まれた結果、「ずる賢くなっている」という意味です。「純粋さを失っている」というニュアンスですね。常識知らずという意味で使うと、真逆の解釈になってしまうので要注意です。
15.割愛はただの省略?
「時間の都合で割愛します」とよく聞きますが、これは単に「カットする」という意味ではありません。「惜しいと思いながらも、やむを得ず省略する」というニュアンスが含まれています。「愛」を「割く」と書く通り、本当は見せたいし話したい!という気持ちが込められているのです。不要だから削る場合には使いません。
16.噴飯ものは激怒?
「あの態度は噴飯ものだ!」と怒っている人を見かけますが、本来は「食べかけのご飯を吹き出してしまうほどおかしい」という意味で、相手を嘲笑する言葉です。腹が立ってむかつくことではありません。もし怒りの表現として使うと、「君の態度は笑っちゃうよ」と言っていることになり、逆に煽っているように聞こえるかもしれませんね。
17.檄を飛ばすの勘違い
「選手に檄を飛ばす」というと、監督が大声で「頑張れ!」と励ますシーンを想像しますよね。しかし本来は、「自分の主張や考えを人々に知らせて同意を求める」という意味。「檄」とは古代中国で使われた、召集をかける木の札のことです。単なる声援や気合いを入れることではないのですが、今では応援の意味で定着しています。
18.奇特は変な人?
「奇特な人ですね」と言われたら、変わり者扱いされたと思いますか?実はこれ、最高の褒め言葉なんです。本来は「優れていて感心なこと」を意味します。他人がしないような良い行いをする、殊勝な心がけの人を指します。現代では「奇妙」のイメージに引きずられて「物好き」という意味で使われがちですが、胸を張って良い言葉です。
19.うがった見方は鋭い
「うがった見方をするね」と言うと、ひねくれている、疑ってかかるといったネガティブな意味で捉えられがちです。しかし、「穿つ(うがつ)」は穴を開けること。つまり「物事の本質を鋭く捉える」というポジティブな意味なのです。本来は「君は鋭いね!」という褒め言葉なのですが、嫌味として受け取られないよう注意が必要です。
20.流れに掉さす
「順調な流れに掉(さお)さす」というと、水を差して邪魔をするイメージがありませんか?これは逆で、川の流れに乗って竿を使い、「勢いをつけてさらに進める」という意味です。物事が順調に進むのを後押しすることですね。「水を差す」と混同されやすい言葉ですが、本来は勢いを加速させる良い意味なんですよ。
21.やおらはゆっくり
「やおら立ち上がった」と言うと、急にガバッと立ち上がる様子を想像する人が多いようですが、正解は「ゆっくりと静かに」です。「徐(おもむろ)に」と同じような意味ですね。時代劇などで落ち着いた所作を表す時に使われます。音の響きが慌ただしい感じがするのか、急な動作と勘違いされやすい言葉の一つです。
22.他山の石は悪い手本
「他山の石とする」を、他人の良い行いを手本にすると解釈していませんか?これは「よその山から出た粗悪な石でも、自分の宝石を磨く砥石(といし)にはなる」という意味。つまり、「他人の誤りや劣った言動も、自分の知徳を磨く参考になる」ということ。目上の人の行動に対して使うと、「あなたの失敗を参考にします」となって失礼にあたります。
23.性癖はヘキじゃない
最近はネットスラングなどで「性的な好み」の意味で使われることが多いですが、本来の性癖は「その人の性質や、思考・行動のくせ」を指す言葉です。「爪を噛むのが性癖だ」「早起きが性癖だ」のように使っても間違いではありません。漢字のイメージに引っ張られて、かなり限定的な意味に変質してしまった言葉と言えるでしょう。
24.すごいは恐ろしい
日常的に使う褒め言葉の「すごい」。漢字で書くと「凄い」ですが、古くは「背筋が凍るほど恐ろしい」「薄気味悪い」という意味でした。「凄惨(せいさん)」「凄味(すごみ)」という熟語にその名残がありますね。江戸時代頃から程度が甚だしいことを指すようになり、現代ではプラスの意味で使われることが一般的になりました。
25.やばいは不都合?
若者言葉の代表格「やばい」も、江戸時代には「牢屋などの厄介な場所」を指す隠語でした。そこから「不都合だ、危険だ」という意味で使われてきましたが、1990年代以降、「素晴らしい」「美味しい」「最高だ」という肯定的な意味での使用が爆発的に広まりました。今では文脈によって正反対の意味を持つ、不思議な言葉になっています。
26.鳥肌は感動でも立つ
素晴らしい演奏を聴いて「鳥肌が立った」と言いますよね。実はこれ、かつては誤用とされていました。本来は「寒さや恐怖、不快感」で皮膚が粟立(あわだ)つことを指したからです。しかし、あまりに深い感動を受けた時の身震いがこれに似ているため、現在では感動表現としても広く認められるようになっています。
27.独擅場の読み方
「どくだんじょう」と読む人が多いこの言葉、本来の正しい読み方は「どくせんじょう」です。書き方も「独壇場」ではなく「独擅場(ほしいままにする場所)」が正解。しかし、「擅」の字が「壇」に似ているため誤読され、さらに漢字まで書き換えられて定着してしまいました。間違いが標準になってしまった珍しいケースです。
28.ご馳走は走り回る
美味しい料理を指す「ご馳走」。漢字を見ると「馬」偏で、走り回るという意味が含まれています。昔は客人を迎えるために、馬を走らせて食材を集め回ったことから、その労力をねぎらって「ご馳走様」と言うようになりました。豪華な食事そのものよりも、そこにかけてくれた「おもてなしの心」を表す言葉だったんですね。
29.ありがとうはレア
「ありがとう」の語源は「有り難し」。つまり「有ることが難しい=めったにない」という意味です。もともとは感謝の言葉ではなく、「珍しい」「貴重だ」という事実を述べる言葉でした。それが「めったにないようなご恩を受けた」という感謝の文脈で使われるようになり、現在の挨拶として定着したのです。
30.全然の意外な真実
「全然いいよ」と言うと、「全然の後には否定が来るべきだ!」と怒られた経験はありませんか?実はこれ、明治時代の文学作品(夏目漱石など)では「余すところなく、全面的に」という肯定的な意味で普通に使われていました。昭和に入ってから「否定を伴う」というルールが広まりましたが、最近また肯定の意味に戻りつつある、揺れ動く言葉なんです。
まとめ
いかがでしたか?こうして見てみると、私たちが「正しい」と思っている意味も、数百年という歴史の中で見れば「一時的な変化」に過ぎないのかもしれません。言葉はコミュニケーションのための道具ですから、厳密な正解・不正解にこだわりすぎるよりも、その場の相手に気持ちが伝わるかどうかを大切にしたいですね。明日誰かと話す時、ちょっとだけ言葉の奥深さを思い出してみてください。