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江戸の園芸の雑学8選~浮世絵や植物ブームの面白い文化と豆知識~

江戸の園芸雑学

きれいな花を咲かせることだけが、ガーデニングの楽しみではありません。実は江戸時代には、珍しい模様の葉っぱを集めたり、自慢の植物の持ち主を本で紹介したりと、世界に誇る空前の「園芸ブーム」が巻き起こっていました。桜の品種を相撲の番付のように並べるなど、当時の人々のユニークな遊び心には驚かされるばかりです。

そこで今回は、当時の浮世絵や園芸書を眺めながら、奥深い「江戸の園芸」に関する面白い雑学や豆知識を8つご紹介します。将軍から庶民までが夢中になった植物好きの世界を、ぜひ一緒にのぞいてみましょう。

※掲載画像は歴史資料です。絵に描かれた表現と、資料の解説から確認できる史実を区別して紹介しています。

 

1.一本の菊に百品種!

歌川国芳の「百種接分菊」。多彩な菊の花と、それを見物する人々を描いた錦絵
歌川国芳画「百種接分菊」。
出典:

Tokyo Museum Collection(江戸東京博物館所蔵)
画像は当サイトで縮小・WebP形式に変換。

色も咲き方もまったく違う菊の花が、なんと一本の株に大集合しています。江戸東京博物館の解説によると、こちらは園芸の中心地だった駒込の植木屋・今右衛門が、百品種の菊を一本の株に接ぎ木して咲かせたものなのだそうです。偶然自然に生えた不思議な菊ではなく、江戸の植木屋が持つ高度な園芸技術を見せつけた超大作として、多くの見物客を驚かせました。

本文の根拠:

江戸東京博物館「百種接分菊」の解説

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2.珍しい植物は持ち主も紹介

「奇品家雅見」に描かれた万年青や沈丁花など、珍しい植物の図
『奇品家雅見』、1827年刊。
増田繁亭編、関根雲停・大岡雲峰ほか画。

国立公文書館所蔵(請求番号199-0354)

江戸時代に出版された珍しい植物の図鑑には、なんと持ち主の名前や住所まで詳しく載っていました。青山の植木屋がまとめた『奇品家雅見(きひんかがみ)』は、江戸と近郊の愛好家が育てていた変わった植物約500点を紹介したガイドブックです。珍しい植物の姿だけでなく、「誰がどこで育てているか」という持ち主の情報や、その植物にまつわるエピソードまで楽しめる内容になっていました。

本文の根拠:

国立公文書館「奇品植物の流行」

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3.花より葉に夢中

「草木錦葉集」に描かれた、葉の形や模様が異なるツバキの品種
『草木錦葉集』、1829年刊。
水野忠暁編、関根雲停・大岡雲峰画。

国立公文書館所蔵(請求番号199-0353)

江戸の植物好きたちは、花が咲いていなくても葉っぱの模様や形をじっくりと鑑賞して楽しんでいました。1829年刊行の『草木錦葉集(そうもくきんようしゅう)』には、葉の地の色とは違う白や黄色の模様がまじる「斑入り(ふいり)」と呼ばれる珍しい植物が数多く集められています。編者の水野忠暁は幕府の旗本でありながら、プロの植木屋が教えを請うほどの園芸名人だったそうです。

本文の根拠:

国立公文書館「奇品植物の流行」

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4.黄色い朝顔もあった

朝顔の図集「あさかほ叢」の「極黄采」と「つく羽根」
『あさかほ叢』、1816年序。四時庵形影著。

国立公文書館所蔵(請求番号197-0046)

江戸時代を彩った朝顔といえば青や紫、ピンクを思い浮かべますが、実はそれだけではありません。国立公文書館の解説によると、なんと当時の江戸には現代では幻とされる「黄色い朝顔」も存在したと記されています。変わり咲きの珍種を集めた図譜『あさかほ叢(あさがおそう)』には「極黄采」という黄色い朝顔の図も登場しており、花の色や形にとことんこだわった当時の愛好家たちの熱気が伝わってきます。

本文の根拠:

国立公文書館「あさかほ叢」の解説

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5.植木売りも絵の主役

Teisai Hokubaが描いた、植木売りを題材にした墨のスケッチ
Teisai Hokuba「Sketch of a Plant Seller」、1840年頃。
LACMA所蔵(M.2000.122.4)。
画像:

Wikimedia Commons
/
LACMA。
パブリックドメイン。

園芸に関する絵画というと、美しく咲き誇る花の図を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、葛飾北斎の門人である蹄斎北馬(ていさいほくば)が1840年頃に描いたこちらの作品は、花そのものではなく鉢植えを担いで歩く行商人の姿を題材にした墨のスケッチです。江戸の豊かな植物文化を、花を売る人々の暮らしぶりから眺めてみるのも風情があって面白いですね。

作品情報の根拠:

LACMA「Sketch of a Plant Seller」

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6.植木屋の親子が図譜づくり

「草花絵前集」に掲載された女郎花と鉄線の図
『草花絵前集』、1699年刊。
伊藤伊兵衛(三之丞)著、伊藤伊兵衛(政武)編。

国立公文書館所蔵(請求番号197-0034)

江戸の植木屋は、ただ植物を育てて売るだけでなく、専門的な本づくりにも深く関わっていました。1699年に刊行された『草花絵前集』は、染井の植木屋である父・伊藤三之丞が描いた草花の絵を、息子の政武が編集して出版した植物図譜です。絵の余白には花の色や開花時期といった実用的なデータも丁寧に書き込まれており、絵を眺める楽しさと育てるための知識がひとつに詰まっています。

本文の根拠:

国立公文書館「園芸書の出版」

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7.接ぎ木は図で学べた

「草木育種」に掲載された、穂木の切り方や台木への接ぎ方を示す図
『草木育種』の接ぎ木解説図。
1818年刊の本編と1837年刊の後編を収めた資料。
岩崎灌園・阿部櫟斎著。

国立公文書館所蔵(請求番号183-0235)

「植物を増やすってどうやるの?」という園芸初心者の疑問には、江戸時代の園芸書もわかりやすいイラスト付きで答えていました。『草木育種(そうもくそだてぐさ)』の解説図には、枝の切り口の形や根のある台木への取り付け方がステップごとに細かく描かれています。華やかな花の画集だけでなく、実際に手を動かして植物を育てるためのハウツー本も充実していたのです。

本文の根拠:

国立公文書館「草木育種」の解説

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8.桜にも大関がいた

「草木奇品家雅見」に収録された、桜の品種を東西の大関や関脇などに並べた番付
『草木奇品家雅見』、1827年刊。金太編。
出典:

国立国会図書館「本の万華鏡」
。

原資料の該当箇所

大関、関脇、小結……とずらり並んでいるのは、お相撲さんの力士ではなく、なんとすべて桜の品種の名前です。『草木奇品家雅見』には当時の人気品種を格付けした桜の番付が収録されており、東の最高位に「泰山府君」、西に「桐ケ谷」が選ばれています。江戸全体の公式ランキングではなくこの本独自の一枚ですが、植物を番付表にして楽しむ江戸っ子の粋なセンスが光っています。

本文の根拠:

国立国会図書館「品種いろいろ」

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まとめ

葉っぱの模様を見比べたり、珍しい品種を集めて番付を作ったり、育て方を図解本で学んだり。江戸時代に残された園芸資料をひもとくと、当時の人々が植物を心から楽しむための工夫がたくさん詰まっていることがわかります。

次に博物館や植物園、あるいは身近な花壇で植物を見かけるときは、花びらだけでなく葉の模様や植木鉢、昔ながらの品種の歴史にも少し目を向けてみてください。きっとこれまでとはまた違った、新しい発見や楽しみ方が見つかるはずですよ。

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