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江戸の飼い鳥の雑学30選~面白いペットブームの豆知識~

江戸の飼い鳥雑学

江戸の人たちが夢中になったペットと聞いて、何を思い浮かべますか? 実は当時、小鳥を飼って、声や姿を楽しむ文化が大名から庶民まで広がっていました。お気に入りの鳥を品評会に連れていったり、飼育書でお世話の方法を調べたり、ときには珍しい鳥を眺めながらお茶を飲んだりしていたのです。

今の私たちにも、どこか親しみを感じる楽しみ方ですね。今回は、当時の絵や本を手がかりに、江戸の飼い鳥にまつわる面白い雑学を30個ご紹介します。

 

1.庶民も鳥に夢中

『絵本徒然草』に描かれた鳥屋と客
鳥屋の店内を描いた『絵本徒然草』。画像:国立国会図書館所蔵。

鳥を飼う趣味は、お殿様だけのものではありませんでした。大名や武士の間で広まったあと、江戸時代の中ごろには町の人たちの間でもブームになったのです。鳥屋でお気に入りを探し、家で声や姿を楽しむ暮らしがありました。飼い方を説明する本も数多く登場しているので、人気は一時的な話題にとどまらなかったのでしょう。ペットの本を読みながらお世話をする姿を想像すると、江戸の暮らしがぐっと身近に感じられますね。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

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2.スズメもペット

江戸時代の鳥の飼育書『喚子鳥』
さまざまな鳥の飼育を扱う『喚子鳥』。画像:国立国会図書館所蔵。

江戸の庶民が飼っていたのは、遠い国から来た珍しい鳥ばかりではありません。ウグイス、ウズラ、ヤマガラなど、身近な野鳥も飼育の対象でした。今なら外で見かける鳥が、当時は家で親しまれる存在でもあったのですね。華やかな羽だけでなく、鳴き声や動きにも魅力を感じていたのでしょう。ただし、これは昔の習慣のお話です。現代の飼育ルールと同じつもりで受け取らず、当時の人と鳥の距離感を知る豆知識として楽しみたいですね。

出典:国立国会図書館「江戸時代の人々の鳥との交わり」

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3.鎖国中も鳥は来た

『百鳥図』に描かれたカナリア
外国から持ち込まれた鳥として描かれたカナリア。画像:国立国会図書館所蔵。

「海外との交流が制限されていた時代なら、外国の生き物は見られなかったのでは?」と思いますよね。ところが将軍家や大名は、長崎を通じて海外の珍しい種類を輸入していました。カナリアやインコなども、日本へ持ち込まれています。大きな鳥や色鮮やかな鳥は、知識のある世話役を置き、広い庭園で飼うこともありました。鳥の図譜を見ると、江戸の人たちの関心が海の向こうまで伸びていたことがわかります。珍鳥は、異国の世界を身近に感じさせる存在だったのでしょう。

出典:国立国会図書館「江戸時代の人々の鳥との交わり」、「第二章 見る」

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4.光圀も珍鳥好き

『奇観名話』に描かれた珍しい鳥
江戸時代に展示された珍鳥の図。光圀の飼育個体を描いたものではありません。画像:国立国会図書館所蔵。

水戸黄門こと徳川家の藩主にも、外国の鳥を取り寄せる一面がありました。クジャク、セイラン、キンケイ、ハッカチョウ、オウムなど、一種類だけではなく多彩な顔ぶれに関心を寄せていたのですね。名前を並べるだけでも、庭園がにぎやかだった様子を想像したくなります。もちろん、珍しい鳥を集めればお世話も必要です。鳥好き大名の趣味には、資金だけでなく、飼育の知識や人手も欠かせなかったのでしょう。

出典:国立国会図書館「江戸時代の人々の鳥との交わり」

 

5.文鳥も身近になった

『諸禽萬益集』に描かれた鳥の巣の作り方
文鳥などに使われるつぼ巣と同様の作りを示す図。画像:国立国会図書館所蔵。

外国から来た鳥は、いつまでも大名だけの楽しみだったわけではありません。江戸時代の後半には、輸入された鳥のうち繁殖によって数が増えたものを、庶民も飼えるようになりました。かつて高価だったカナリアなどの仲間が、少しずつ人々の暮らしへ入り込んでいったのですね。遠い国から来た珍鳥が、やがて親しみのある飼い鳥になる。その変化を知ると、身近なペットにも長い歴史があることを感じられます。

出典:国立国会図書館「江戸時代の人々の鳥との交わり」、「第三章 飼う」

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6.飼育書に121種

1710年に出版された『喚子鳥』の挿絵
『喚子鳥』の挿絵。画像:国立国会図書館所蔵。

1710年に出版された『喚子鳥(よぶこどり)』は、鳥のお世話を知るための本です。最初に餌の作り方や病気への対処を説明し、そのあと大きさ、色、鳴き声、食べる餌まで詳しい特徴を紹介しています。たくさんの種類が網羅されており、なかなか頼もしい構成ですね。鳥籠の挿絵もあり、文章だけでは想像しにくい部分を補っています。江戸のガイドブックと聞いて簡単な手引きを思い浮かべると、その情報量に驚かされます。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

 

7.爪切りまで解説

江戸時代の飼育書『百千鳥』
実用的な飼育方法を扱う『百千鳥』。画像:国立国会図書館所蔵。

1799年に刊行された『百千鳥(ももちどり)』は、当時よく普及していた飼育書の一つです。特徴は、日々のお世話に役立つ説明が充実していること。餌作りに加え、お手入れの方法や目の病気、けがへの対処などを20項目にわたって扱っています。鳥を迎えて終わりではなく、飼い続ける中で困ることにも目を向けていたのですね。「こんなとき、どうすればいい?」と本を開く飼い主の姿は、今の私たちにも通じるものがあります。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

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8.ごはんは手作り

『喚子鳥』のすり餌に関する記述
『喚子鳥』のすり餌の説明。画像は1915年刊『雑芸叢書』の翻刻。国立国会図書館所蔵。

江戸の飼育書には、「すり餌」という鳥の食事が登場します。小魚や米ぬかなどを細かくすり合わせ、青菜の汁などの水分を混ぜて用意していたのですね。しかも『喚子鳥』と『百千鳥』では説明が異なり、配合や手順が一つだけではなかったこともわかります。毎日の食事の準備に手間をかける様子から、当時の具体的な暮らしが見えてきます。なお、昔の配合を現代の鳥にそのまま試すための紹介ではありません。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

 

9.鳥籠は清潔に

鳥の世話を説明する『百千鳥』
鳥の飼育を解説した『百千鳥』。画像:国立国会図書館所蔵。

昔のお世話の本にも、今の飼い主がうなずきそうな内容があります。江戸時代の飼育書は、鳥の美しい声や見た目だけを語っていたわけではありません。餌を用意し、住まいの状態にも気を配るという毎日の世話を扱っていました。珍しい鳥を持っていることより、健康で元気に暮らせるよう手をかけることが大切。そんな日常の積み重ねが、昔の本の中にも見えるのが面白いところですね。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

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10.巣作りも図解

『諸禽萬益集』の藁で編む巣の図
藁で編んだ巣の作り方。画像:国立国会図書館所蔵。

飼育書『諸禽萬益集(しょきんまんえきしゅう)』には、藁で編む道具の手順が挿絵で紹介されています。その形は、文鳥などに使われるつぼ巣と同様の作りです。文章を読むだけでは難しそうな手仕事も、イラストがあれば形をつかみやすくなりますね。餌や鳥籠だけでなく、鳥が落ち着いて過ごす場所まで考えていたことがわかります。住まいの道具を整えるところにも、飼い主の愛情と手間がかかっていたのです。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

 

11.鳥屋が並べた籠

『人倫訓蒙図彙』の小鳥屋
『人倫訓蒙図彙』に描かれた「小鳥や」。画像:国立国会図書館所蔵。

鳥を飼いたいと思った江戸の人は、どこへ行ったのでしょう。入手方法の一つが、店や行商で鳥を売る専門の商人でした。当時の職業を紹介する『人倫訓蒙図彙』には「小鳥や」が登場し、たくさんのケースが並ぶ様子も描かれています。ほかには、飼っている知人から譲ってもらう方法などもありました。絵の中の様子を眺めると、「どの鳥にしよう」と選ぶ客の姿を想像したくなりますね。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

 

12.声の先生もいた

鳥の販売と音付けを行う小鳥屋の図
「音付け」にも触れている『人倫訓蒙図彙』。画像:国立国会図書館所蔵。

小鳥屋の仕事は、鳥を売るだけではありませんでした。『人倫訓蒙図彙』には、ウグイスやウズラなどの鳴く鳥を持ち、ほかの鳥に「音付け」をするという説明があります。つまり、お手本を聞かせて鳥の鳴き声を整える役割も担っていたのです。見た目のよい鳥を探すだけでなく、美しい響きにもこだわる人がいたことが伝わってきますね。鳥屋を単なる販売店と思うと、この専門的な仕事は少し意外です。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

 

13.オウムでおもてなし

『摂津名所図会』に描かれた鳥屋
店先や鳥籠の様子がわかる『摂津名所図会』。画像:国立国会図書館所蔵。

『摂津名所図会』に登場する鳥屋では、鳥に言葉を話させて来客を迎えていたと紹介されています。おしゃべりする鳥が、店の楽しみの一つだったのですね。絵には鳥籠が並ぶ店や、その前で鳥が放し飼いになっている様子も描かれています。売っている鳥を見るだけでも楽しいのに、声で歓迎されたら印象に残りそうです。何を話していたかまでは分かりませんが、昔の店先のにぎわいを想像してみたくなりますね。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

 

14.鳥を捕る専門職

『職人歌合画本』に描かれた鳥さし
左側の人物が鳥さし。画像:国立国会図書館所蔵。

飼い鳥の商売の背景には、野生の個体を確保する「鳥さし」という仕事もありました。『職人歌合画本』には、長い竹竿を持つ姿が描かれています。当時は鳥もちの粘着力を利用して小鳥を捕獲していました。店に並ぶ鳥の向こうに、こうした技術を持つ職人がいたのですね。ただ、人気が高まることは、野生の生き物への負担とも無関係ではありません。楽しい飼育文化の歴史にも、自然との付き合い方を考えさせる側面があります。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

 

15.販売禁止の時代も

鳥の売買規制を記した『正宝事録』
1687年の鳥に関するお触れ。画像:国立国会図書館所蔵。

江戸時代を通じて、鳥が自由に売られていたわけではありません。徳川綱吉のころには、生類憐みの令によって取引が段階的に制限されました。食用の鳥や鳥もちへの規制が進み、やがて1705年には愛玩用を含めた売買もストップします。この出来事は、当時の武士の日記にも記されています。人気の趣味でも、幕府の政策が変われば店の商売や飼い主の暮らしに影響が出るのですね。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

 

16.鳥屋は十軒限定

鳥屋の数を制限したお触れ
鳥屋の規制を記した『御触書集成』。画像:国立国会図書館所蔵。

生類憐みの令が廃止されたあとも、商売が完全に自由になったわけではありません。一時的な乱獲で江戸近郊の鳥が減少し、1718年のお触れによって再び規制が行われました。このとき、三年間は認められた店舗以外での販売が禁止されたのです。さらに当時の管理には、将軍家の鷹狩で使うタカの餌を確保する事情も関わっています。お店の営業には、自然の変化と幕府の都合の両方が影響していたのですね。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

 

17.ウズラに番付

ウズラの声や飼育を論じた『鶉書』
ウズラについて解説した『鶉書』。番付そのものではありません。画像:国立国会図書館所蔵。 赤枠は当サイトで追加。

卵でおなじみの鳥ですが、江戸では鳴き声を楽しむペットでもありました。愛好家が自慢の個体を持ち寄る「鶉合(うずらあわせ)」では、その声のよさを競っています。随筆集『嬉遊笑覧』によれば、優劣を相撲のランキング表のように記したそうです。お気に入りの鳥に順位が付くとなれば、飼い主も力が入りそうですね。家で楽しむだけではなく、同じ趣味の仲間と競う面白さもあったのでしょう。

出典:国立国会図書館「第一章 聴く」

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18.声にも色と匂い

鳴き声について問答を収めた『鶉書』
1649年刊『鶉書』。画像:国立国会図書館所蔵。 赤枠は当サイトで追加。

1649年刊の『鶉書』では、よい鳴き声について問答形式で説明しています。そこで使われるのが「いろ」や「におい」という表現です。もちろん、目で見たり鼻で嗅いだりするわけではなく、音のうねりや、近くに響くような勢いなどを表しています。鳴き声に関する問答は40問を超え、そのこだわりはかなり細やかです。ただ大きな声ならよい、という話ではなかったのですね。

出典:国立国会図書館「第一章 聴く」

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19.春の声くらべ

『春鳥談』にある鶯声品定会の説明
鶯合について記す『春鳥談』。画像:国立国会図書館所蔵。 赤枠は当サイトで追加。

声を競ったのは、ウズラだけではありません。ウグイスにも「鶯合(うぐいすあわせ)」という催しがありました。1845年に序文が書かれた『春鳥談』によると、江戸では正月下旬と二月中旬の二度、品定めの会が開かれていたそうです。会場は牛島、現在の向島あたりでした。季節の鳥のさえずりを聞くだけでなく、どの個体が優れているかをみんなで確かめるイベントは、愛好家たちの大切な交流の場でもあったのでしょう。

出典:国立国会図書館「第一章 聴く」

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20.審査員は前日入り

鶯合が行われた牛島周辺を含む隅田川向島絵図
『隅田川向島絵図』。画像:国立国会図書館所蔵。 赤枠は当サイトで追加。

ウグイスの声の品評会は、集まって少し聞く程度の催しではありませんでした。『春鳥談』によると、当日は一帯の家々に鳥を配置して審査するため、準備にも相当な手間がかかったそうです。審査をする人たちは前の日から会場の茶屋に集まり、参加者も鳥を置くために会場近くの場所を前もって借りていました。人も鳥も場所を整えて本番を迎える様子から、会の規模と熱気が伝わりますね。

出典:国立国会図書館「第一章 聴く」

 

21.一番の鳥は有名に

ウグイスの品評について書かれた『春鳥談』
声の品定めを紹介する『春鳥談』。画像:国立国会図書館所蔵。 赤枠は当サイトで追加。

鶯合の当日、審査員は各所に置かれたウグイスの声を聞いて回りました。そのあと相談して順位を決め、最も優れた個体は「江戸順の一」という称号で呼ばれ、広く名が知られるようになったそうです。声のよさが評判となり、一羽の小鳥がスターになるなんて面白いですね。勝ち負けを決めるだけでなく、「あの鳥の声がすばらしかった」と街中で話題が広がるところに、愛好家の世界のにぎわいが感じられます。

出典:国立国会図書館「第一章 聴く」

 

22.鳴き声にも訛り?

根岸でウグイスの初音を聞く人々
『江戸遊覧花暦』に描かれた根岸の里。画像:国立国会図書館所蔵。

江戸の地誌『江戸砂子』には、ウグイスの声に関する面白い話が伝えられています。寛永寺の門主が、関東の個体には方言のような癖があるとして、美しい声を持つ京都のウグイスを取り寄せて放させたというのです。これは当時の地誌に残る伝承で、現代の科学的な比較結果ではありません。それでも、「ここの鳥は、あそこと鳴き方が違う」と耳を澄ませていた人たちの風流なこだわりが伝わってきますね。

出典:国立国会図書館「第一章 聴く」

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23.ホケキョを品定め

ウグイスの鳴き声について説明する『春鳥談』
鳴き声の聞き方を記した『春鳥談』。画像:国立国会図書館所蔵。 赤枠は当サイトで追加。

ウグイスの声は「ホーホケキョ」でおなじみですが、昔から同じ聞き方だったわけではありません。古い時代の書物では「ひとくひとく」と表されることもありました。一方、江戸時代の『春鳥談』では、人が「法華経」と唱えるように鮮やかに聞こえる声をよいとしています。鳥の声を人間の言葉に重ねるだけでなく、その発音の美しさまで評価していたのですね。表現をたどると、人の耳や好みの歴史も見えてきます。

出典:国立国会図書館「第一章 聴く」

 

24.馬琴は百羽超え

馬琴旧蔵の『飼籠鳥』にある書き込み
馬琴の書き込みがある『飼籠鳥』。画像:国立国会図書館所蔵。

『南総里見八犬伝』を書いた人気作家も、熱心な愛鳥家として知られています。自身の記録では、休みのない執筆の中で、気を紛らわせるのによいと考えて飼い始めたと述べています。仕事の合間に動物を眺めてほっとする気持ちは、今でもよくわかりますよね。ただ、一時期には飼育数が三桁に達していたそうなので、毎日のお世話も相当なものだったはずです。気分転換から始まった趣味が、大きな鳥の世界へ育っていったのですね。

出典:国立国会図書館「第三章 飼う」

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25.鳥好きが図譜作り

馬琴が所有していた鳥類書『飼籠鳥』
馬琴が鳥の知識を得るために使った資料の一つ。『禽鏡』そのものではありません。画像:国立国会図書館所蔵。

曲亭馬琴の鳥への関心は、飼育だけにとどまりませんでした。娘の夫で画家の渥美赫洲に絵を描かせ、自分で解説を加えた『禽鏡(きんきょう)』という巻物も作っています。全六軸に311図、約200種類の鳥を収録した大作です。大名が持っていた貴重な絵の写しなども含まれており、作家ならではの探求心がうかがえます。好きなものをもっと調べ、記録に残したくなる気持ちは、時代が変わっても通じるものがありますね。

出典:国立国会図書館「鳥好きの滝沢馬琴」

 

26.お殿様が絵師に

増山雪斎が描いた『百鳥図』のカナリア
増山雪斎による『百鳥図』の一図。画像:国立国会図書館所蔵。

大名の中には、専門の職人に描かせるだけでなく、自分で筆を取る人もいました。伊勢長島藩主の増山雪斎が手掛けた『百鳥図』は、全十二巻に約120種類の鳥を収めた見事な作品です。さまざまな構図を使い、羽や脚などの細かな部分にも目を向けているのが特徴です。かわいい姿を眺める楽しさと、じっくり観察する面白さが重なっていたのですね。好きな鳥を前に熱心に筆を動かす姿を想像すると、親しみやすく感じられます。

出典:国立国会図書館「第二章 見る」

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27.羽の裏まで観察

『百鳥図』にまとめられた鳥の脚や羽
鳥の脚や羽をまとめた『百鳥図』。画像:国立国会図書館所蔵。

江戸時代の図譜は、きれいな全身像を並べただけの本ではありません。増山雪斎の『百鳥図』には、普段は見えない翼の反対側や脚の模様などの細部を記録したページがあります。ぱっと見ただけでは気づきにくい違いにも、しっかり目を向けていたのですね。姿を楽しむ趣味が、特徴を調べる本格的な観察へつながっているところが面白い点です。細部の記録を見てみると、描いた人の並々ならぬ熱心さが伝わってきます。

出典:国立国会図書館「第二章 見る」

 

28.鳥を眺める茶屋

『摂津名所図会』に描かれた孔雀茶屋
鳥を眺めて楽しむ孔雀茶屋。画像:国立国会図書館所蔵。

江戸時代の後半、大坂の下寺町には「孔雀茶屋」という人気スポットがありました。客はお茶を飲みながら、金網の中にいるクジャクやツル、キンケイなどを楽しんでいたそうです。飲食と珍しい鳥の観賞を組み合わせた場所だったのですね。庭には池があり、カキツバタやショウブも植えられていました。直接触れ合う施設ではありませんでしたが、生き物を見ながらひと休みする時間は、昔の人にも魅力的だったのでしょう。

出典:国立国会図書館「第二章 見る」

 

29.京都で珍鳥展示

1758年に京都で展示された鳥の図
珍鳥の展示を伝える『奇観名話』。画像:国立国会図書館所蔵。

1758年には、珍しい鳥を集めたイベントが催されました。色鮮やかなインコ七種類に、オウム、キュウカンチョウ、ハッカチョウを加えた合計十種類が見られたそうです。当時の記録画には、鳥の姿だけでなく、水の器や鳥籠も丁寧に描かれています。珍しい生き物を見に行くお出かけの楽しみが、当時にもあったのですね。残された絵をよく見ると、飼育の現場や展示の工夫まで伝わってきて興味深いです。

出典:国立国会図書館「第二章 見る」

 

30.鳥は学びの主役も

名古屋の薬品会で展示された鳥
『尾張名所図会』に描かれた薬品会の鳥の展示部分。画像:国立国会図書館所蔵。

鳥が集まる場は、娯楽のための見世物だけではありませんでした。学者たちが動植物や鉱物を持ち寄る「本草会」「薬品会」「物産会」などでも、珍しい鳥が並べられることがありました。名古屋の薬品会を描いた絵には、ツルなどの姿が見えます。実物を見せ合うことが、研究者たちの知識の交流にもつながっていたのですね。美しい、珍しい、もっと知りたいという気持ちが、趣味と学問の世界を結び付けていたのです。

出典:国立国会図書館「第二章 見る」

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まとめ

江戸の飼い鳥文化には、毎日のお世話から鳴き声の品評会、珍鳥の展示、図譜作りまで、さまざまな楽しみがありました。鳥を飼う人だけでなく、売る人、描く人、声を聞きに行く人もいて、一羽の鳥がたくさんの人の関心をつないでいたのですね。

当時の飼育や捕獲の習慣は、現代のルールと分けて受け止める必要があります。それでも、好きな生き物をもっと知りたい、仲間と魅力を語りたいという気持ちには、親しみを感じませんか? 次に鳥の声を聞いたら、「江戸ではこの声に番付まで付けていたんだよ」と、誰かに話してみてください。いつもの鳴き声が、少し違って聞こえるかもしれません。

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