お腹の上に貝を乗せて、石でカンカンと割って食べる姿がとっても愛らしいラッコ。水族館の人気者として誰もが知っている身近な動物ですが、実はそのかわいい見た目の裏には、驚くような生態や過酷な海を生き抜くための秘密がたくさん隠されているのをご存じでしょうか。
今回は、手をつないで眠る理由やマイストーンへのこだわりといったほっこりするエピソードから、世界一の毛の密度、さらにはちょっと怖い意外な一面まで、誰かに話したくなるラッコの面白い雑学・豆知識を30個厳選してご紹介します!
1.実はイタチの仲間

海の上でぷかぷかと暮らしているラッコですが、実はアザラシやアシカではなく、食肉目イタチ科に分類される動物です。陸で暮らすイタチやオコジョ、水辺に棲むカワウソなどと同じグループに属しており、イタチ科の中で唯一、生活のほぼすべてを海の上で過ごすように進化した種なのです。顔つきや細長い体型をよく観察してみると、確かにカワウソやイタチとそっくりな面影がありますよね。
2.語源はアイヌ語のラッコ

日本語の「ラッコ」というユニークな響きの名前は、実はアイヌ語の「rakko(ラッコ)」がそのまま語源になっています。北海道から千島列島にかけての海域には古くから野生のラッコが生息しており、アイヌの人々にとって馴染み深い動物でした。ちなみに漢字では「海獺(うみかわうそ・らっこ)」や「猟虎(らっこ)」と表記され、江戸時代には貴重な毛皮として取引されていました。
3.英語では「海のカワウソ」

日本語ではアイヌ語由来の名前で呼ばれていますが、英語ではラッコのことを「Sea otter(シー・オッター)」と呼びます。「otter」はカワウソを意味する英単語なので、直訳すると「海のカワウソ」という非常にシンプルでわかりやすい名前になります。また、ラッコの学名である「Enhydra lutris」も、ギリシャ語とラテン語を組み合わせた「水の中にいるカワウソ」という意味を持っています。
4.体毛の密度が世界一

ラッコは地球上のすべての哺乳類の中で、最も毛の密度が高い動物としてギネス世界記録にも認定されています。その密度はなんと1平方センチメートルあたり約10万本から14万本にも及び、全身では約8億本もの毛がびっしりと生えそろっているのです。人間の髪の毛が頭全体で約10万本といわれているため、ラッコがいかに凄まじい数の毛に覆われているかがよくわかります。
5.皮下脂肪がほとんどない

クジラやアザラシなどの海獣は、分厚い皮下脂肪を蓄えることで冷たい海での体温低下を防いでいます。しかし、ラッコには体を温めるための皮下脂肪がほとんど備わっていないという珍しい特徴があります。その代わりに、表面の長い毛と内側の細かい綿毛という二重構造の体毛の中に空気の層を作り出し、冷たい海水が直接皮膚に触れないようにして体温を保っているのです。
6.毛づくろいは命がけ

ラッコが顔をこすったり体をゴシゴシと撫でたりする仕草は「可愛いポーズ」として人気ですが、実はこれは命を守るための真剣な毛づくろい(グルーミング)です。毛が汚れて束になると空気の層が消えてしまい、冷たい海水が肌に直接触れて低体温症で死んでしまう危険があります。そのため、ラッコは起きている時間の多くを費やし、毛の根元に空気を吹き込みながら清潔な状態を保っています。
7.脇の下にポケットがある

ラッコの脇の下には、皮膚がたるんでできた「ポケット」のような袋状のスペースが存在します。海に潜って獲物を捕まえた際、一度に食べきれない貝やウニ、そして貝を割るための石などをこのポケットに器用にしまい込みます。ちなみに左右両方の脇にポケットがありますが、人間と同じように右利きが多い影響で、左脇のポケットを好んで使う個体が多いといわれています。
8.お気に入りの石を持つ

硬い貝殻などを割るために石を使うラッコですが、実は海底にある石なら何でもいいわけではありません。自分の手のサイズや重さにしっくりくる「マイストーン」を見つけると、食事が終わった後も捨てずに脇のポケットへしまって大切に持ち歩く習性があります。お気に入りの石をうっかり海底に落としてしまったときは、必死になって潜り直して探し回ることもあるそうです。
9.道具を使う珍しい海獣

野生動物の世界において、道具を日常的に使いこなす種はチンパンジーやカラスなどごく一部に限られています。海の哺乳類(海獣)の中では、イルカが海綿を使う例などを除けば極めて珍しく、ラッコは石をハンマーや台座として自在に操る知能の高い動物です。また、お腹の上で石を叩くだけでなく、海底の岩に獲物を直接打ちつけて剥がし取るという高度なテクニックも持っています。
10.手をつないで眠る理由

2頭以上のラッコが仲良く手をつないでぷかぷかと浮かびながら眠る姿は、見る人の心を癒やしてくれますよね。これは単なるスキンシップだけでなく、寝ている間に潮の流れで仲間や親子が離れ離れにならないようにするための大切な知恵なのです。水族館のような波のないプールであっても、野生の本能から手をつないで安心して眠る姿がよく観察されています。
11.海藻を体に巻いて寝る

仲間と手をつなぐだけでなく、野生のラッコは海に茂る巨大なコンブ(ジャイアントケルプ)を体にぐるぐると巻きつけて眠ることもあります。海底から生えている海藻をロープ代わりに使うことで、船のイカリ(アンカー)のように自分の体を一箇所に固定して流されるのを防いでいるのです。海の上で無防備に熟睡するための、とても賢いサバイバル術といえます。
12.ほっぺに手を当てる理由

水族館のラッコが両手を頬にピタッと当てて、「困ったなぁ」「可愛いでしょう?」と言わんばかりのポーズをとることがあります。実はラッコの手のひらには体毛が生えておらず、毛皮で覆われた他の部位に比べて熱が逃げやすい構造になっています。そのため、冷たい海水で冷え切った手のひらを、ふわふわで温かい顔の毛に押し当てて温めているのがこのポーズの真相なのです。
13.大食漢で大変なグルメ

皮下脂肪を持たないラッコは、高い体温(約38度前後)をエネルギーの燃焼だけで維持しなければなりません。そのため基礎代謝が非常に高く、毎日自分の体重の約20〜30%もの大量の食事をとり続ける必要があるのです。体重30キロの個体なら1日に6〜9キロものウニやアワビ、カニ、イカなどの高級魚介類を平らげるため、水族館の中でも圧倒的に食費がかかるグルメな動物として知られています。
14.骨が紫色になる秘密

野生のラッコの骨格標本を見ると、本来は白いはずの骨や歯の一部が鮮やかな紫色に染まっていることがあります。これは病気ではなく、ラッコの大好物であるムラサキウニを大量に食べ続けた結果、ウニに含まれる「エキノクローム」という色素が体内に蓄積して骨を染めるためです。ウニをたくさん食べてきた年長のラッコほど、骨の紫色がより濃く鮮やかになるといわれています。
15.海の森を守る救世主

ラッコは「キーストーン種(生態系の要となる生き物)」と呼ばれ、海の環境を守る重要な役割を担っています。ラッコが海藻を食い荒らすウニをたくさん食べてくれるおかげで、小魚たちの隠れ家となり二酸化炭素も吸収する「海藻の森(ケルプの森)」が守られているのです。実際にラッコがいなくなった海域では、ウニが異常繁殖して海藻が消滅する「磯焼け」が深刻化することが確認されています。
16.赤ちゃんは沈まない

ラッコの赤ちゃんは海の上で生まれますが、最初から自力で上手に泳いだり潜ったりすることはできません。その代わり、赤ちゃんの体は特別にふわふわした空気をたっぷり含む産毛(うぶげ)で覆われており、まるで救命胴衣を着ているかのように絶対に水中に沈まない体質になっています。お母さんラッコは、潜ってエサを探しに行く間、赤ちゃんを海藻で縛ってぷかぷかと海面に浮かべておきます。
17.実は体長が1メートル超

テレビや写真で見ると「猫や小型犬くらいの小さな動物」というイメージを持たれがちですが、実際のラッコは意外と大柄です。大人のオスになると体長は1.2〜1.5メートル、体重は30〜45キロほどにも成長し、人間の小学生高学年から大人の女性に近いほどの立派な体格をしています。海面から顔とお腹だけを出して浮いているため、実際よりもかなりコンパクトに見えているのですね。
18.後ろ足はヒレの形

器用に石や貝をつかむ前足は人間や猫の手のように短い指が並んでいますが、後ろ足はまったく異なる形をしています。水中を力強く泳ぐために進化した結果、後ろ足は水かきが発達して平べったい「ヒレ状」の形になっているのです。さらに驚くことに、普通の哺乳類は親指が一番内側にありますが、ラッコの後ろ足は水の抵抗を受けにくいよう「小指側(外側)」が一番長くなっています。
19.陸を歩くのは少し苦手

一生のほとんどを海の上で過ごすラッコですが、嵐の日や休息の際には陸や岩場に上がってくることもあります。しかし、水中での生活に特化した体型とヒレのような後ろ足のため、地上を歩くときは背中を丸めてぴょこぴょこと跳ねるような不器用な歩き方になります。陸の上では素早く動けないため、敵に襲われにくい海の上で生活する方が彼らにとってははるかに安全なのです。
20.肉球のすぐ下に爪がある

ラッコの小さな前足の裏にはぷにぷにとした可愛い肉球があり、指先には小さな爪も生えています。ただし、猫のように爪を完全に出し入れするのではなく、肉球のすぐ上(ほぼ重なるような位置)に短い爪がちょこんとついているのが特徴です。この絶妙な位置にある爪とザラザラした肉球を使うことで、滑りやすい海藻や魚介類をしっかり掴み、細かい毛づくろいを行うことができます。
21.肺活量がとても大きい

海底でウニや貝を探すために繰り返し潜水するラッコは、体のサイズに対して非常に大きな肺を持っています。一般的な同じ体格の陸上哺乳類と比べると、肺の容積が約2.5倍もあり、一度に大量の酸素を取り込める構造になっています。この大きな肺は、潜水時間を延ばすだけでなく、海面で仰向けに浮かんで休む際の「浮き袋」としての役割も果たしています。
22.海水を飲むことができる

人間などの陸上の哺乳類は、塩分濃度の高い海水を飲むと脱水症状を起こしてしまいます。しかし、海の上で暮らすラッコは強靭な腎臓を持っており、海水をそのまま飲んで体内の余分な塩分を濃い尿として排出する能力が備わっています。もちろん主な水分は食べる魚介類から摂取していますが、必要に応じて海水を直接飲んで水分補給をすることができるのです。
23.鼻に水が入らない仕組み

ラッコの顔の中央にあるひし形の黒い鼻はチャームポイントの一つですが、ここにも水中生活ならではの機能が隠されています。海に潜る瞬間、ラッコは自分の意思で鼻の穴(鼻孔)と耳の穴をピタッと閉じて水が入るのを完全にシャットアウトできます。そのため、水深数十メートルの海底で逆さまになってエサを探しても、鼻がツーンと痛くなることはありません。
24.実は気性が荒い一面も

ぬいぐるみのように愛くるしい見た目とは裏腹に、野生のラッコ(特に繁殖期のオス)は非常に気性が荒く攻撃的な一面を持っています。交尾の際にはオスがメスの鼻先を強く噛んで押さえつける習性があり、メスの鼻が傷だらけになったり、激しい争いで命を落としたりするケースもあるほどです。あの硬い貝を噛み砕く強力な顎と鋭い歯を持っているため、怒らせるととても危険な猛獣なのです。
25.乱獲で絶滅寸前になった

世界一高密度で極上の肌触りを持つラッコの毛皮は、18世紀から19世紀にかけて「海の黒いダイヤ」と呼ばれ、世界中の商人から狙われました。無秩序な乱獲が続いた結果、かつて数十万頭いたとされる野生のラッコは、20世紀初頭にはわずか1,000〜2,000頭ほどにまで激減し絶滅寸前に追い込まれました。その後、1911年に国際的な保護条約が結ばれたことで、奇跡的に絶滅を免れました。
26.北海道にも野生がいる

ラッコというとアラスカやカリフォルニアなど海外の海にいるイメージが強いですが、実は日本の海にも野生のラッコが生息しています。特に北海道の道東エリア(霧多布岬や納沙布岬など)では、近年になって野生のラッコが定着し、子育てをする姿まで観察されているのです。運が良ければ、双眼鏡を使って日本の陸地からぷかぷか浮かぶ野生のラッコを見ることができます。
27.日本の水族館で激減中

1990年代のラッコブームの頃には、日本全国の水族館で120頭以上のラッコが飼育されていました。しかし、国際的な保護規制によってアメリカからの輸入が事実上ストップしたことや高齢化が進んだことで、現在では日本の水族館で見られるラッコは鳥羽水族館のわずか数頭のみとなっています。国内での繁殖も非常に難しいため、水族館で会えるラッコは極めて貴重な存在です。
28.お腹の上をテーブルに

ラッコが仰向けになってお腹の上で食事をするのは、両手(前足)を自由に使って効率よくエサを食べるためです。ラッコは背骨や関節がとても柔らかく、仰向けの体勢のままお腹を平らなテーブルのようにして、自分の口元へ素早く食べ物を運ぶことができます。また、食べかすでお腹の毛が汚れてしまったら、すぐにクルッと一回転して海水で洗い流すという行儀の良さも持っています。
29.尻尾も大切なオール

ラッコの尻尾は長さが30センチほどあり、根元が太くて先に向かって平べったい形をしています。海面で仰向けのまま後ろ向きに進むとき、ラッコはこの筋肉質な尻尾を左右・上下に巧みに動かすことで、ボートのオールや舵(かじ)のように使って進行方向をコントロールしています。後ろ足のヒレと尻尾を組み合わせることで、海の上でも自由自在に動くことができるのです。
30.寿命は15年から20年

野生のラッコの平均寿命は、厳しい自然環境やシャチ・サメといった天敵の存在、さらには硬い貝を食べ続けることによる歯の摩耗などが原因で、おおよそ10〜15年ほどといわれています。一方、天敵がおらず健康管理や栄養満点の食事が徹底されている水族館の飼育下では、野生よりもはるかに長生きし、20歳を超えるご長寿ラッコになることも珍しくありません。
まとめ
ラッコの雑学30選、いかがでしたでしょうか。手をつないで眠ったり、ほっぺに手を当てて温めたりする愛くるしい仕草の一つひとつに、冷たく過酷な海を生き抜くための驚きの知恵と進化の秘密が詰まっていることがおわかりいただけたかと思います。
また、ウニを食べて海の森を守る大切な役割や、日本の水族館でとても希少な存在になっていることなど、知れば知るほどラッコが愛おしくなりますよね。ぜひ今回の面白くてためになるラッコの豆知識を、家族や友人との会話のネタとしてシェアしてみてくださいね!
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