※本記事は広告を含みます。掲載画像のうち、出典表示のないものはイメージ画像(AI生成・商品画像など)です。実物とは異なる場合があります。 教養・学び

変わり兜の雑学30選~武将の面白い豆知識や意味・なぜを解説~

変わり兜雑学

武士の兜といえば、立派な角のような飾りを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、実際に残された実物を見てみると、野菜や動物、普段の帽子まで、驚くほど自由で多彩な形のデザインが存在します。頭を守る道具に、なぜこれほどユニークな意匠が生まれたのか気になりますよね。

今回は、桃山時代から江戸時代を中心とした「変わり兜」の形と意匠にまつわる雑学を、実物の写真とともに30個ご紹介します。形のモデルだけでなく、鉄や和紙、革を使い分けた職人の作り方にも注目してみてくださいね。後世の飾りや現代の修復を含む作品についても個別にわかりやすく解説しています。

※兜本体の形に加え、前立・脇立などの飾りも紹介します。変わり兜には、戦場での識別や自己表現に関わるものだけでなく、儀礼用に作られたものもあります。

 

1.ナスも兜のモデル

ナスの形をモデルにした変わり兜

食卓でおなじみの野菜であるナスも、実は武士の防具のデザインになりました。写真は17世紀に作られた早乙女家忠銘の作品で、鉄に漆を施し、銅や金、絹なども使って仕立てられています。動物の角や武器だけでなく、身近な食べ物の輪郭をそのまま防具へ置き換えたところに、当時の発想の広さが表れていますね。持ち主がこの形を選んだ理由まではわかっていませんが、自由な造形そのものを楽しみたい一例です。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Helmet in the Shape of an Eggplant」早乙女家忠銘、17世紀/画像:CC0(The Met Open Access)。

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2.トンボは勝ち虫

兜の頂部に大きなトンボを載せた変わり兜

獲物へ向かってまっすぐ素早く進む姿から、武士たちは勝利につながるイメージを重ねてこの昆虫を大変好みました。写真の作品では、正面の小さな飾りではなく、頭頂部に立体的な虫の姿が大きく乗っているのが特徴です。頭を守る鉢の部分には雲も表されており、大空を飛んでいる場面を思わせる構成になっています。18世紀の作品で、現在の姿には2015年の三浦公法氏による修復が含まれています。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Helmet (Kawari-kabuto) Surmounted by a Dragonfly」18世紀、2015年修復/画像:CC0(The Met Open Access)。

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3.鯱の中身は和紙

口を開いた鯱の形を表した鯱形兜

お城の屋根でおなじみの大きなしゃちほこの形をしていますが、実は全体が重い鉄の塊というわけではありません。頭を守る土台を薄い鉄板5枚で作り、その上に紙を重ねて張り抜いた立体造形を漆で塗り固めるという技法で作られています。口と鼻の穴には鮮やかな朱漆、目には金色の金属板を使った18世紀の作品です。外側の迫力ある見た目と、内側の防具としての軽さや構造を分けて作る工夫がよくわかりますね。

画像・参考:《鯱形兜》東京富士美術館蔵「東京富士美術館収蔵品データベース」収録、18世紀/画像:CC0。

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4.医者の頭巾が兜に

角頭巾を模し、不動明王の前立を付けた頭巾形兜

この四角いフォルムのモデルは、当時の老人や僧侶などが日常的にかぶっていた「角頭巾(すみずきん)」です。金色の上部には「たたき塗り」という漆の技法を使うことで、硬い金属でありながら柔らかい布の質感まで表現しています。正面には炎に包まれた不動明王を配し、後ろ側には布が垂れた部分を思わせる形も作り込まれました。16世紀の作品で、日常のかぶり物と宗教的な意匠を組み合わせた面白い一品です。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Helmet (Zukinnari Kabuto)」16世紀/画像:CC0(The Met Open Access)。

 

5.天狗とカラスの組

くちばしのある天狗の顔と左右のカラスを組み合わせた兜

山の霊的な存在といえば長い鼻を思い浮かべがちですが、鋭いくちばしのような口を持つ姿で表されることもあります。この19世紀の作品は、正面にくちばしのある顔が配され、左右には鳥の姿が立体的に打ち出されています。紙と漆を併用する変わり兜も多いなかで、こちらは土台の鉢から立体的な装飾まですべて鉄で作られているのが見どころです。パーツを別々に見るより、全体をひとつの場面として見ると特徴がつかめますよ。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Exotic Helmet with Tengu Mask and Crows」19世紀/画像:CC0(The Met Open Access)。

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6.鹿角は木彫だった

金色の鹿角形の脇立を付けた六十二間筋兜

左右に大きく伸びる立派な角を見ると本物の素材かと思ってしまいますが、実は自然の角をそのまま使っているわけではありません。桃山時代から江戸時代前期に作られた早乙女家親銘のこの作品では、木材を精巧に削り出して表面に金箔を押した飾りが脇立として使われています。62枚の鉄板を組み合わせた筋兜の吹き返しには「六文銭」があり、松代の真田家に伝来したことを示す大切な手掛かりになっています。

画像・参考:銘・早乙女家親《鉄錆地六十二間筋兜 鹿角脇立》東京富士美術館蔵「東京富士美術館収蔵品データベース」収録/画像:CC0。

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7.貝殻が大きな輪郭に

大きな二枚貝の殻の形を取り入れた変わり兜

海の生き物が持つユニークな造形も、武士たちの間で人気を集めた重要なモデルでした。写真は、ホタテのように扇状に広がるフォルムを取り入れた江戸時代の作品です。ぐるぐると渦を巻く巻貝タイプとは違い、二枚貝ならではの放射状の広がりが全体のシルエットを作っています。自然界の美しい形をそのまま大きく見せる発想がうかがえ、殻の外形を見比べるだけでもデザインの多様さが楽しめますね。

画像:Daderot撮影、アン&ガブリエル・バルビエ=ミュラー美術館の貝形兜、Wikimedia Commons/写真:CC0 1.0。参考:ハイ美術館「Samurai」貝形兜の解説。

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8.炎に包まれた宝珠

炎の形をした鉄板が頂部へ集まる火焔形の兜

メラメラと燃え上がるような激しい造形は、単なる派手な飾りとして作られたわけではありません。雲海光尚の銘がある1630年頃のこの作品は、仏教美術で用いられる聖なる珠をモデルにしています。注目したいのはその作り方で、揺らめく各パーツが一枚の鉄板から切り出されて頂部へ集まるという高度な板金仕事が施されています。顔横の吹き返しまで同じモチーフに統一されており、全体でひとつの世界観を表しています。

画像:Thierry Bernard撮影「Kaen kaburo」、Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0、画像改変なし。参考:ハイ美術館「Helmet Representing the Flaming Jewel」。 画像は当サイトで縮小・WebP形式に変換。

 

9.耳ではなく冠の飾り

左右へ突き出す纓を備えた黒漆塗りの唐冠形兜

左右にピョコッと突き出た部分を見ると動物の耳のように見えますが、実はまったく別のものがモデルになっています。これは中国の冠を模した「唐冠形(とうかんなり)」と呼ばれるスタイルで、背後に垂らす「纓(えい)」というパーツが横に張り出した姿なのです。安土桃山時代に流行したデザインで、写真の18世紀の作品では、薄い鉄や革、和紙を重ねて造形する「張懸(はりかけ)」の技法が使われています。

画像・参考:《黒漆塗張懸唐冠形兜 纓後立》東京富士美術館蔵「東京富士美術館収蔵品データベース」収録、18世紀/画像:CC0。

 

10.熊の頭も防具に

熊の頭部の形を表した変わり兜

猛獣をモチーフにした武具といっても、本物の毛を植え付けたタイプと、顔立ちそのものを立体にしたタイプでは見せ方が大きく異なります。桃山時代末頃に作られた写真の作品は、鉄や木に漆や金を組み合わせて動物の顔つきを彫刻的に表したものです。大阪歴史博物館の展示でも両者は別々に紹介されており、ひと口に動物の名前がついた兜といっても、素材の活かし方によって多彩なアプローチがあったことがわかります。

画像:Haa900撮影「熊の頭形の兜」、Wikimedia Commons/写真:CC0 1.0。参考:大阪歴史博物館「戦国アバンギャルドとその昇華」展示紹介。

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11.薪割り道具がモデル

薪を割る斧の形をモデルにした薪割形兜

変わり兜の手本になったのは、かっこいい生き物や神仏ばかりではありません。江戸時代前期から中期の作品として紹介されるこちらは、なんと木を割るための「斧(おの)」の形を取り入れたユニークなデザインです。もちろん頭で攻撃する武器として使ったわけではなく、日常の暮らしで使われる道具の力強いフォルムを意匠として借りたものです。銘には制作を依頼した人物に関わる記述もあり、当時の粋なセンスが伝わってきますね。

画像・作品情報:Thierry Bernard撮影「Makiwarinari kabuto 1」、Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0、画像改変なし。 画像は当サイトで縮小・WebP形式に変換。

 

12.朝鮮風でも日本製

朝鮮の兜を参考にした、銀象嵌のある日本の変わり兜

異国風の珍しいシルエットをしているからといって、必ずしも海外で作られた防具とは限りません。6枚の鉄板を組み合わせて上へ細くなる背の高い鉢を作り、銀をはめ込む象嵌(ぞうがん)で龍と花を飾ったこの18世紀の作品は、隣国の防具のデザインをお手本にして日本の職人が仕立てたものです。「何に似ているか」という見た目の手本と、実際の制作地を分けて確認すると、当時の幅広いものづくりがよくわかります。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Helmet (Kawari-kabuto) in the Korean Style」18世紀/画像:CC0(The Met Open Access)。

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13.長い頭は福の神

長い頭部と顔を備えた、福禄寿を思わせる兜鉢

上に向かってぐーんと伸びたユニークな頭部の形は、七福神の福禄寿(ふくろくじゅ)を思わせるデザインです。ただ、一般的な穏やかな表情とは少し雰囲気が異なるため、所蔵する美術館では特徴が混同されやすかった寿老人と重なった表現の可能性も指摘しています。17~18世紀に鉄と漆、金彩などで作られた作品で、よく知られたモチーフでも名前をひとつに断定できない奥深さがあることを教えてくれます。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Helmet Bowl」17~18世紀/画像:CC0(The Met Open Access)。

 

14.帽子の形を鉄で写す

烏帽子の形をした兜に獅噛の前立を組み合わせた作品

武士や公家が正装でかぶった「烏帽子(えぼし)」の輪郭をそのまま防具のデザインにしたのが烏帽子形兜です。写真の18世紀の作品では、鉄や絹、革を用いた本体に、正面の飾りとして恐ろしい顔の「獅噛(しかみ)」を組み合わせています。ベースとなる鉢のシルエットと正面のパーツは別々に選べる要素だったため、同じ系統の形でも組み合わせる飾り次第でがらりと印象が変わるのが面白いポイントです。

画像・参考:《鉄錆地烏帽子形兜 獅噛前立》東京富士美術館蔵「東京富士美術館収蔵品データベース」収録、18世紀/画像:CC0。

 

15.巻貝を金属で表す

海の巻貝の形を表した17世紀の兜

ぐるぐると渦を巻く複雑な貝のフォルムも、当時の熟練した技術によって防具へと姿を変えました。写真は鉄や金、銀を使って作られた17世紀の作品で、海の生き物が持つ立体的な螺旋(らせん)の輪郭がそのまま外形になっています。先ほどご紹介した二枚貝のタイプと比べると、同じ海のモチーフでもシルエットの作り方がまったく違いますよね。持ち主の願いまでは記録に残っていませんが、圧倒的な造形美が光る一品です。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Helmet in the Shape of a Sea Conch」17世紀/画像:CC0(The Met Open Access)。

 

16.鬼の顔をかぶる

鬼の頭の形を表した変わり兜の展示写真

武士の防具には自分の顔を守るための面具がありますが、こちらは頭頂部の防具そのものを迫力ある顔の形にした展示品です。これを着用すると、かぶっている人間自身の顔の上にさらにもうひとつの顔が乗るという大胆な二段構えの構成になります。変わり兜では自然の動植物だけでなく、こうした伝承や宗教の世界に登場する超自然的な存在も大切なアイデア源になっていました。

画像:Joshin Yamada撮影「Extraordinary helmet in the shape of an Oni head」、Wikimedia Commons/CC BY 2.0、画像改変なし。参考:メトロポリタン美術館の変わり兜と伝承の解説。 画像は当サイトで縮小・WebP形式に変換。

 

17.角は左右の飾り

水牛形の脇立を組み合わせた黒漆塗りの烏帽子形兜

黒漆塗りの烏帽子のような本体に、大きく湾曲した水牛の角を組み合わせた18世紀の作品です。この迫力あるパーツは頭を守る鉢そのものと一体化しているわけではなく、左右の脇に取り付ける「脇立(わきだて)」として構成されています。ちなみに水牛の意匠といえば戦国武将・黒田長政のものが有名ですが、写真の作品が長政の持ち物だったという根拠はないため、デザインの名前と実際の伝来は分けて見るのがポイントです。

画像・作品情報:《鉄黒漆塗酢漿草紋烏帽子形兜 水牛脇立》東京富士美術館蔵「東京富士美術館収蔵品データベース」収録/画像:CC0。参考:大阪歴史博物館の黒田長政所用兜の解説。

 

18.法螺貝を頭に載せる

法螺貝の形に鉄板を組み合わせた18世紀の変わり兜

戦場で軍勢に合図を送る楽器としても使われた「ほらがい」をお手本にした、18世紀の作品です。5枚の板を巧みに組み合わせて丸みのあるフォルムを作っていますが、さらに注目したいのは外からは見えない内側の仕上げです。なんと内部に豪華な金漆が使われており、高位の武士向けに作られた手掛かりになると美術館で解説されています。外見のインパクトだけでなく、見えない場所にまで手をかけた名品ですね。

画像:Walters Art Museum「Helmet with Conch Shell Shape」、Wikimedia Commons/写真:CC BY-SA 3.0、画像改変なし。参考:ウォルターズ美術館、作品番号51.620。

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19.断崖を兜に写す

断崖を表したといわれる一の谷形の立物を備えた兜

後ろ側にそびえ立つ大きな板のような立物は、源平合戦で知られる「一の谷」の古戦場近くにある険しい絶壁を表したものといわれています。写真は、黒田長政の四男・高政が用いたと伝わる17世紀の具足です。動植物や道具にとどまらず、歴史的な名所の険しい地形までもデザインに取り入れたところに豊かな発想が感じられますね。父・長政の具足の影響が強く見られますが、着用者を混同しないようセットで覚えておきましょう。

画像:ColBase:国立博物館所蔵品統合検索システム「一の谷形兜」、Wikimedia Commons/CC BY 4.0、画像改変なし。参考:東京国立博物館「黒糸威胴丸具足」F-20155。

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20.朱漆で印象を変える

朱漆塗りの烏帽子形兜と唐獅子の意匠

変わり兜の個性を引き立てるのは、立体的なフォルムだけではありません。写真は、鮮やかな赤色の漆を塗った烏帽子形に、迫力ある唐獅子(からしし)の意匠を組み合わせた17世紀の作品です。鉄の渋い地肌や黒塗りを活かした作品とは違い、華やかな色彩と金色の装飾を重ねることでまったく異なる存在感を放っています。形の分類だけでなく、表面の塗りや色の組み合わせまで見ると楽しみ方がぐっと広がりますよ。

画像・作品情報:Haa900撮影「Red-lacquered eboshi-shaped helmet with demonic Chinese lion」、Wikimedia Commons/写真:CC0 1.0。

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21.継ぎ方にも異国風

四枚の鉄板を筋鉄で接合した蒙古鉢形兜

海外の防具を意識した特徴は、全体のシルエットだけでなく細かな構造に表れることもあります。18世紀に作られたこの「蒙古鉢形(もうこばちなり)兜」は、4枚の鉄板を合わせた継ぎ目の上に、筋状の細長い鉄を重ねて留めるアジア大陸風の構成法を取り入れています。縁には銀の覆輪や雲のような飾りも添えられており、「蒙古」という名前から古い時代の渡来品と早合点せず、制作年代と技法を合わせて見ることが大切です。

画像・参考:《鉄錆地四枚張蒙古鉢形兜》東京富士美術館蔵「東京富士美術館収蔵品データベース」収録、18世紀/画像:CC0。

 

22.斧飾りは鯨のひげ

鳳凰の前立と斧形の左右の飾りを付けた兜

33枚の鉄板を組んだ本体の正面に鳳凰(ほうおう)を配し、左右に大きな斧の形の飾りを付けた1825~1875年頃の作品です。一見するとすべて硬い金属や木でできているように見えますが、実は左右の装飾にはしなやかで加工しやすい海の生き物の素材が活用されています。内側には生皮も使われており、鉄や革、動物の素材を巧みに組み合わせた総合的な工芸品であることが実感できますね。

画像:Walters Art Museum「Helmet with Phoenix and Battle-Axe Ornaments」、Wikimedia Commons/写真:CC BY-SA 3.0、画像改変なし。参考:ウォルターズ美術館、作品番号51.609。

 

23.波の大きな峰は革製

砕ける波のような高い峰を備えた変わり兜

激しく砕け散る水しぶきのような高い峰が目を引きますが、この巨大な上部は重い鉄ではなく別の素材で作られています。頭を守る下の鉢には頑丈な鉄を使い、上の大きな造形を軽い素材で作ることで、実用的な防御力と戦場や行列で目立つ高さを両立させたのです。17世紀の作品ですが、現在の姿には三浦公法氏による2015年の修復と前立の制作が含まれており、当時の技術と現代の仕事を合わせて見ることができます。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Helmet (Kawari-Kabuto) in the Shape of a Wave」17世紀、2015年修復・前立制作/画像:CC0(The Met Open Access)。

 

24.兜と前立は年代違い

江戸時代前期の頭形兜に中期の獅噛前立を組み合わせた作品

ひとつの完成された武具として展示されていても、すべての部品が同じ時期に作られたとは限りません。薄い鉄板5枚で作られた丸に桔梗紋入りの本体は江戸時代前期のものですが、正面の獅噛の飾りは江戸時代中期頃のものとされています。つまり、時代を超えて受け継がれる中で別々の時期のパーツが組み合わされたのです。最初から今の姿だったと思い込まず、部品ごとの歴史を知ると見方がぐっと深まりますよ。

画像・参考:《鉄錆地五枚張頭形兜 獅噛前立》東京富士美術館蔵「東京富士美術館収蔵品データベース」収録/画像:CC0。

 

25.前の板がくちばしに

兜鉢の前面を鳥のくちばしの形にした、菊の意匠がある兜

生き物の姿を取り入れるとき、頭の上にフィギュアのような飾りを載せる以外にもユニークな表現方法がありました。1829~1860年頃に作られた明珍義臣(みょうちんよしおみ)銘のこの作品では、頭を守る鉢の正面パーツ自体を鳥の鋭い口先のフォルムに加工しています。さらに菊の花のモチーフも添えられており、動物を丸ごと再現するのではなく、特徴的な一部分を防具の構造へスマートに組み込んだ工夫が光ります。

画像:Walters Art Museum、明珍義臣「Helmet with Chrysanthemums」、Wikimedia Commons/写真:CC BY-SA 3.0、画像改変なし。参考:ウォルターズ美術館、作品番号51.618。

 

26.富士山を思わせる姿

雪を頂く富士山を思わせる形の兜

雪を頂いた美しい山のようなシルエットをしており、ヨーロッパの防具の影響も受けているとされる16世紀末の作品です。65枚の板と先の尖った鋲(びょう)で作られていますが、興味深いのはそこに刻まれた文字の謎です。なんと後世になってから「1186年」という古い年号が彫り込まれており、記された文字の年号と実際の制作時期が一致しないケースがあることを教えてくれる貴重な資料にもなっています。

画像:Walters Art Museum「Helmet」、Wikimedia Commons/写真:CC BY-SA 3.0、画像改変なし。参考:ウォルターズ美術館、作品番号51.625。

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27.冠形にも筋を付ける

装飾的な筋を付けた唐冠形兜

中国の官人の冠をモデルにした唐冠形兜は、表面がつるんと滑らかに仕上げられた例が多く見られます。ところが、16世紀末から17世紀初めに作られたこちらの本体は、同じ冠のシルエットでありながら表面に立体的な凹凸のラインを並べて個性を出しています。正面の飾りは18世紀のものが組み合わされており、左右の突起だけでなく表面の仕上げや後世のパーツにも目を向けると、見比べる楽しさが倍増しますよ。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Helmet in the Shape of a Chinese Courtier’s Hat」兜:16世紀末~17世紀初め、前立:18世紀/画像:CC0(The Met Open Access)。

 

28.ワニも意匠の仲間

ワニの意匠を取り入れた変わり兜

兜に登場する生き物は、鹿や熊、鳥といった日本の山野でおなじみの動物だけではありません。17~19世紀の本体に19世紀の飾りを合わせたこの作品は、美術館のデータで海外の爬虫類である「クロコダイル」のモチーフと結び付けられています。材料には鉄や漆、革、木に加えて「骨」や顔料も記録されており、珍しい異国の生き物を多様な素材で表現しようとした当時の好奇心に驚かされますね。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Helmet (Kawari Kabuto)」2005.303a–d/意匠・材料:同館公式コレクションAPI/画像:CC0(The Met Open Access)。

 

29.輪の飾りも木製

輪貫の前立を付けた南蛮鉢形兜

4枚の鉄片を打ち出して中央に稜線を立てた南蛮風の鉢に、「輪貫(わぬき)」や「蛇の目紋」と呼ばれる丸い前立を付けた作品です。正面のリングは重たい金属の塊に見えますが、実は木材を丸く彫り抜いた上に金属風の塗装を施して軽量化したものなのです。動物や神仏のような複雑な彫刻だけでなく、こうしたシンプルで幾何学的な形も、遠くからひと目でわかる優れた目印として活躍しました。

画像・参考:《鉄錆地南蛮鉢形兜 輪貫前立》東京富士美術館蔵「東京富士美術館収蔵品データベース」収録/画像:CC0。

 

30.ウサギと波で能の景色

一枚の鉄から打ち出したウサギと、波形の吹返しを組み合わせた兜

一枚の鉄板から打ち出した愛らしい動物の姿と、顔横の波形の吹き返しを組み合わせた17世紀の作品です。ただ可愛い動物を載せただけのように見えますが、実は湖に映る月と水の上で遊ぶ月の使者を詠んだ古典の物語につながる風流な意匠になっています。単なる動物好きの装飾にとどまらず、教養のある人が見れば「あの名作の場面だな」と伝わる粋な表現でもあったのですね。

画像・参考:メトロポリタン美術館「Helmet in the Shape of a Crouching Rabbit」17世紀/画像:CC0(The Met Open Access)。

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まとめ

変わり兜は、単に奇抜な形だけを競った道具ではありません。身近な食べ物やかぶり物、自然の生き物、さらには神仏や古典の物語まで、当時の武士たちの豊かな発想と教養がさまざまな意匠として取り込まれました。頭を守る本体の形と、前や脇に付ける飾りを分けて見ると、組み合わせの工夫まで深く楽しめますよ。

また、見た目が大きくても全部が鉄とは限らず、和紙や革、木や鯨のひげなどを使った軽さと迫力を両立させる職人たちの巧みな技術も見どころです。次に博物館などで兜を見る機会があったら、ぜひ「何をモデルにした形だろう?」「この部分は何で作ったのかな?」と眺めて、周りの人にも面白い豆知識をシェアしてみてくださいね。

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