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虫聞きの雑学6選~江戸時代の面白い文化や意味・豆知識~

虫聞き雑学

秋の夜、窓の外から聞こえる虫の声に耳を傾けたことはありますか?かつて江戸の人たちも、この小さな音を心から楽しみにしていました。ただ耳を澄ませるだけでなく、好みの声を求めて名所へ出かけたり、虫を買って家で飼ったりと、虫聞きは季節を楽しむ身近な娯楽だったのです。

当時の浮世絵や古い挿絵を見ていくと、虫の声を届けるユニークな商売から、虫籠をかたどった美しい工芸品まで、さまざまな発見があります。今回は、貴重な画像とともに江戸の虫聞きの世界をのぞいてみましょう。紹介するのは主に江戸の事例で、年代や暮らしによっても違った当時の楽しみ方をぜひ味わってみてくださいね。

 

1.卵を温めて早売り

1900年刊の『江戸職人歌合』に掲載された虫売りの挿絵

江戸の虫売りは、野原で捕まえた虫をそのまま売るだけの商売ではありませんでした。江戸中期に成立したこの仕事ではスズムシの飼育技術も発達し、冬越しする卵を温めて早期に高値で出荷する工夫まで生まれたのです。季節の音にも「ひと足早く」という粋な楽しみがあったのですね。画像は明治時代の1900年に刊行された『江戸職人歌合』に載る虫売り図で、当時の仕事ぶりを今に伝える貴重な資料です。

画像:Wikimedia Commons/石原正明著『江戸職人歌合』(1900年刊)所収「虫売り」(パブリックドメイン)。参考:農研機構・農業技術関連の読み物サイト JATAFF掲載、梅谷献二「虫を聴く文化」

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2.好みの声で行き先選び

三代歌川豊国と二代歌川広重による『江戸自慢三十六興 道灌やま虫聞』

当時の虫聞きの行き先は、ただ景色のよさだけで決めるものではありませんでした。江戸には道灌山(どうかんやま)や飛鳥山などの名所があり、鈴虫なら飛鳥山、松虫なら道灌山と場所を使い分けていたようです。場所によって鳴く虫が違うため、わざわざ聞きたい声を選んで出かけていたのですね。画像は1864年の『道灌やま虫聞』で、現在の西日暮里付近が名所として錦絵の題材にもなっていました。

画像・出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」/三代歌川豊国・二代歌川広重『江戸自慢三十六興 道灌やま虫聞』、同館デジタルコレクション所蔵画像。参考:東京都立図書館「江戸自慢三十六興 道灌やま虫聞」解説

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3.虫売り姿の役者も

鳥居清経が1774年に描いた、虫売り姿の歌舞伎役者・中村富十郎

こちらの人物は、町で働く虫売りをそのまま写した絵ではありません。鳥居清経が1774年に描いたのは、商人に扮した歌舞伎役者・中村富十郎の艶やかな姿です。虫の声を売る身近な仕事は、当時人気の役者絵の題材にもなっていました。仕事を紹介する挿絵とは違い、こちらは役者の表現を楽しむ浮世絵なので、暮らしの記録と役者の芸を分けて見ると絵の楽しみ方もぐっと広がりますよ。

画像・作品情報:Wikimedia Commons/鳥居清経「中村富十郎の虫売り」(1774年)(パブリックドメイン)

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4.虫の絵には恋の歌

喜多川歌麿『画本虫撰』の、ミミズとコオロギを描いた見開き

江戸時代に虫を楽しむ方法は、耳で声を聞くことだけではありませんでした。喜多川歌麿の『画本虫撰(えほんむしえらみ)』は、蔦屋重三郎が企画したユーモアあふれる狂歌絵本です。一つの見開きに二種類の生き物と二首の狂歌を組み合わせるという粋な構成になっています。画像は1788年のミミズとコオロギのページで、声の鑑賞から絵画や文学へと関心が広がっていたことが伝わりますね。

画像:メトロポリタン美術館/喜多川歌麿『画本虫撰』「蚓」「こうろき」(1788年、JP1056、Rogers Fund, 1918)、CC0 1.0。参考:国立国会図書館「NDLイメージバンク」画本虫ゑらみ

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5.虫籠なのに菓子器

中山胡民作の、虫籠の形をした漆塗りの菓子器

繊細な虫籠の形をしていますが、実はこれ、虫を飼うための道具ではありません。19世紀の江戸時代に中山胡民(なかやまこみん)が作った「虫籠蒔絵菓子器」は、金粉の蒔絵や貝が輝く螺鈿で秋草や昆虫を彩ったお菓子の器です。側面には玉虫やキリギリスなどが精巧に表現されています。虫を入れる籠のデザインが食卓を楽しませる道具にもなるなんて、当時の人々の素敵な遊び心が感じられますね。

画像:Wikimedia Commons/中山胡民「虫籠蒔絵菓子器」、東京国立博物館所蔵、撮影:Daderot(2013年)、CC0 1.0。参考:ColBase/東京国立博物館「虫籠蒔絵菓子器」(H-4253)

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6.縁側も虫聞きの席

鈴木春信『縁側の虫聞き』に描かれた、縁側に座って籠の虫の声を聞く女性

秋の虫聞きは、わざわざ郊外の名所まで出かけなくても十分に楽しめました。鈴木春信が1768~1770年頃に制作した『縁側の虫聞き』には、自宅のそばで籠の中の涼やかな音色に耳を傾ける女性の姿が描かれています。縦約60センチ、横約12センチという細長い「柱絵」の形式も見どころのひとつです。町で売られた鳴く虫を買い求め、暮らしのすぐそばで季節の音を味わう穏やかなひとときが伝わってきます。

画像:Wikimedia Commons/鈴木春信『縁側の虫聞き』、米国議会図書館所蔵(LC-DIG-jpd-02651)(パブリックドメイン)。作品情報・参考:米国議会図書館「Engawa no mushikiki」

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まとめ

江戸の虫聞きは、ただ秋の野原で静かに耳を澄ませるだけの楽しみではありませんでした。好みの声に合わせて行き先を選び、虫売りから買って自宅の縁側でも聞く。さらには絵本や役者絵に登場し、虫籠の形が美しい菓子器にも取り入れられるなど、小さな虫をめぐって商売や芸術、日々の道具までがつながっていたのです。

当時の画像を見るときは、それが何を描いた作品なのかにもぜひ注目してみてください。町の仕事を紹介する挿絵や、役者の姿を楽しむ浮世絵、虫籠をまねた工芸品では、それぞれ違った面白さが見つかります。次に窓の外から心地よい虫の声が聞こえてきたら、江戸の人たちもその音を楽しみにしていた豊かな文化を、ふと思い出してみてはいかがでしょうか。

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