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蓄音機の雑学12選~エジソンやレコードの歴史・面白い豆知識~

蓄音機雑学

好きな歌を買って帰り、家で何度も繰り返し聴く。今では当たり前のそんな楽しみがまだ新しかったころ、レコードは丸い円盤だけではありませんでした。エジソンが発明した初期の仕組みから、意外な使われ方まで、当時の人々を驚かせた工夫がたくさん詰まっています。

筒形のレコードや、おしゃべりする人形、さらにはお金を入れて音楽を聴く機械まで。昔の貴重な道具や広告を眺めながら、誰かに話したくなる蓄音機と初期レコードの面白い豆知識を一緒にのぞいてみましょう。

 

1.最初はスズ箔に録音

1878年のスズ箔蓄音機。国立アメリカ歴史博物館の展示品
1878年のスズ箔蓄音機。撮影:Daderot、2013年。
画像出典:Wikimedia Commons/
CC0 1.0

発明王エジソンが1877年に開発した初期の蓄音機は、金属の筒にぐるりと巻いた薄いシートへ音の振動を直接刻み込む仕組みでした。最初に吹き込んで試したのは、有名な童謡「メリーさんの羊」です。機械から自分の声がそのまま戻ってきた瞬間は、まさに歴史的な出来事でした。ただし、シートは数回の再生ですぐに傷んでしまうため、お気に入りの音楽を何度も繰り返し聴くには、さらなる改良が必要だったのです。[1]

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2.円盤の強みはコピー

1899年ごろのベルリナーの7インチ円盤レコード
ベルリナーの7インチ盤、1899年ごろ。スキャン:Conehead。
画像出典:Wikimedia Commons/パブリックドメイン(提供者による権利放棄・利用許諾)。

初期のレコードには、エジソン式の「筒形」とベルリナーが考案した「円盤形」の2種類がありました。日本でも1903年にSPレコードが発売されると、次第に丸い形が主流になっていきます。その最大の理由は、平らで収納しやすく、1つの原盤から大量生産しやすいという圧倒的なメリットがあったからです。音楽を大勢の人に届けるには、音を残す技術だけでなく、同じものをたくさん作れる特徴がとても大切でした。[2]

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3.上司の声を書き起こす

事務用の口述録音機エジフォンの博物館展示
事務用録音機エジフォン。撮影:DanielPenfield、2017年。
画像出典:Wikimedia Commons/
CC BY-SA 4.0。
本記事でのトリミング・色調変更なし。 画像は当サイトで縮小・WebP形式に変換。

実は蓄音機は、最初から音楽を楽しむためだけの道具として出発したわけではありません。開発されたばかりの初期には、話した内容を録音して後から文字にするビジネス用の事務機として熱心に売り込まれました。手紙の内容を声で吹き込み、別の担当者がそれを再生して書類を作成する、今のボイスレコーダーのような使い方です。写真の「エジフォン」のように、仕事の言葉を預かることも大事な役目でした。[1]

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4.人形の中にも蓄音機

1890年のエジソンのしゃべる人形に使われた蓄音機の機構と背面板
1890年のしゃべる人形の機構と背面板。撮影:Mabalu、2015年。
画像出典:Wikimedia Commons/
CC BY-SA 4.0。
本記事でのトリミング・色調変更なし。 画像は当サイトで縮小・WebP形式に変換。

1890年には、小さな録音再生の仕組みをお腹に組み込んだ「しゃべる人形」まで登場しました。あらかじめ録音された可愛らしい童謡を、人形が聞かせてくれる画期的なおもちゃです。しかし、壊れやすさや価格の高さなどから商売としてはうまくいかず、なんと販売からわずか約1か月で終了してしまいました。家庭向けの音声商品としては非常に早い挑戦でしたが、音の出るおもちゃを広めるのは簡単ではなかったようです。[3]

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5.お金を入れて一曲

金沢蓄音器館に展示されたフランスのコイン式蓄音機
フランスのコイン式蓄音機「Le Concert Automatique Français」。金沢蓄音器館の展示。撮影:Daderot、2018年。
画像出典:Wikimedia Commons/
CC0 1.0

高価な機械を自分の家に持っていなくても、街なかで気軽に音楽を聴く方法がありました。後のジュークボックスの先祖ともいえる、硬貨を投入すると自動で音楽が流れるコイン式の機械です。初期の録音音楽は、こうした街角の装置を通じても人々の間に広く親しまれていきました。写真はフランスの機械で、レコード盤を買い求めるだけでなく、1回聴くために小銭を払うという粋な楽しみ方があったことがわかります。[1]

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6.「金」は型づくりの話

1909年のエジソン蓄音機とゴールド・モールデッド・レコードの広告
『To-Day’s Magazine』掲載広告、1909年。作者不詳。
画像出典:Wikimedia Commons/パブリックドメイン(個別掲載ページの表記)。

かつて「ゴールド・モールデッド」という、とても豪華な名前の円筒レコードが存在しました。しかし、この名前にある「ゴールド」とは見た目の飾りではなく、複製用の精密な型を作る工程で微量の金属を使ったことに由来しています。この技術が生まれる前は、なんと歌手が同じ曲を何十回も繰り返し歌って録音を増やす方法もとられていました。型による量産技術の確立は、歌う側の大変な苦労も減らしてくれたのです。[4]

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7.4分でも大きな進歩

エジソンのアンベロール円筒レコード
アンベロール円筒レコード。画像:Jason Curtis、2018年。元提供先:The Museum of Obsolete Media。
画像出典:Wikimedia Commons/
CC BY-SA 4.0。
本記事でのトリミング・色調変更なし。 画像は当サイトで縮小・WebP形式に変換。

初期に広く使われていた標準的な円筒レコードは、録音できる時間がわずか約2分しかありませんでした。しかし1908年に登場した「アンベロール」では、音の溝の間隔を従来の半分ほどに細かくする工夫によって、一気に約2倍の時間を収録できるようになります。現代の感覚では短い変化に思えますが、「もう少しだけ長く曲を聴きたい」という当時の人々の切実な願いは、ミクロな溝の改良によって見事にかなえられました。[1]

 

8.犬の前の機械が変わった

フランシス・バローの絵画ヒズ・マスターズ・ヴォイス
Francis Barraud『His Master’s Voice』、1898~1899年。
画像出典:Wikimedia Commons/パブリックドメイン作品の複製。歴史解説のための掲載。

ラッパから流れる亡き主人の声に耳を傾ける犬「ニッパー」の有名な絵画には、実は描き直しの歴史があります。画家が最初に描いた原画では、円筒形レコードを使うエジソン式の機械が置かれていました。しかしその後、この絵を買い取って商標にしたレコード会社の主力商品に合わせて、円盤式を使う機械へと上から塗り替えて変更されたのです。可愛らしい犬の視線の先には、当時の大人の商売事情が隠れていました。[5]

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9.劇中歌が家まで届いた

1914年刊の戯曲復活の掲載図版
『復活』、新潮社、1914年。トルストイ作、アンリ・バタイユ脚色、島村抱月再脚色。
画像出典:国立国会図書館「本の万華鏡」

1914年に日本で上演された舞台『復活』では、女優の松井須磨子が劇中で歌う「カチューシャの唄」が社会現象になるほど大流行しました。その人気ぶりは凄まじく、当時のレコードとしては異例の約2万枚という大ヒットを記録しています。演出家の島村抱月は全国各地での上演前に講演会を開き、そこでもレコードを流して宣伝しました。劇場の外でも同じ歌を聴ける録音技術は、流行歌を全国へ広げる新しい手段になったのです。[2]

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10.新しい歌は紙で探す

1922年6月版の新音譜文句集に掲載された新譜案内
『新音譜文句集』、東京音譜商会、1922年6月版。
画像出典:国立国会図書館「本の万華鏡」

インターネットも音楽番組もなかった大正時代、人々が新しいレコードを選ぶときには「新譜案内」の冊子がとても役立ちました。各レコード会社が毎月のように月報や年報を発行したほか、町の販売店が独自にまとめた目録を配ることもあったそうです。誌面にずらりと並んでいたのは、歌手や演奏者の名前、発売日、そして注文用のレコード番号など。次に買うお気に入りの1枚を探すワクワク感は、ページをめくるところから始まっていました。[2]

 

11.音の中身を本にする

1918年刊のニッポノホン音譜文句全集の掲載図版
『ニッポノホン音譜文句全集』、ニッポノホン音譜文句全集発行所、1918年。
画像出典:国立国会図書館「本の万華鏡」

当時のレコード文化の面白さは、収録された中身を「耳」だけでなく「目」で楽しむ書籍まで出版されていたことです。1918年に出た『ニッポノホン音譜文句全集』は、吹き込まれた歌の歌詞や落語・劇の台詞をすべて文字にして一冊にまとめた本でした。流行歌だけでなく、なんと政治家・大隈重信の演説全文までしっかり収録されています。音楽や話芸を楽しむ世界は、レコード盤の上だけで完結していなかったのですね。[2]

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12.演説はお行儀よく聴く

大隈重信の演説レコードの聞き方を報じた記事の掲載図版
「厄介な蓄音器―下手をすると選挙違反」。『ニッポノホン音譜文句全集』、1918年所収。
画像出典:国立国会図書館「本の万華鏡」

1915年の総選挙の際には、大隈重信首相の肉声演説がレコードになり、各地の集会へ届けられました。このとき後援会からは、ただ音を流すだけでなく、本人が目の前にいるときと同じ態度で謹んで聴くようにという真面目な指導まで出ています。さらに、集まった人への余興として落語などのレコードをかけると、有権者への「もてなし」とみなされ選挙違反を疑われるので注意せよとの通達もありました。[2]

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まとめ

蓄音機は、ただ流行の歌を聴くためだけでなく、会社の仕事を助け、人形をしゃべらせ、遠く離れた場所へ政治家の演説を届ける道具にもなりました。「目に見えない音を残して再現できる」という発明は、当時の人々にとってまさに魔法のような驚きだったに違いありません。

古い機械や初期のレコードの歴史を眺めていると、録音技術の誕生によって、買い物や娯楽、さらには働き方まで大きく変わっていったことが伝わってきます。大きなホーンの向こう側には、新しい音の楽しみに出会った昔の人たちの豊かな暮らしが広がっていたのですね。

 

参考資料

  1. 米国議会図書館:
    History of the Cylinder Phonograph
    ― スズ箔蓄音機、事務用録音、コイン式蓄音機、アンベロールの録音時間。
  2. 国立国会図書館:
    本の万華鏡「大正デモクラシーと新しいメディア」
    ― 日本での円盤レコードの普及、「カチューシャの唄」、販売目録、音譜文句集、演説レコード。
  3. 米国国立公園局:
    Edison Talking Doll Recordings, 1888–1890
    ― 1890年のしゃべる人形と、その販売期間。
  4. カリフォルニア大学サンタバーバラ校図書館:
    Edison Gold-Moulded Cylinders
    ― 初期録音の繰り返し演奏、型による複製、「ゴールド」の名称の由来。
  5. ユグノー博物館:
    Nipper and His Master’s Voice
    ― 犬の絵の原画と、蓄音機の描き直し。同館の記事・画像の転載はしていません。

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