お寿司やお刺身の主役として、私たち日本人の食卓に欠かせない存在であるマグロ。濃厚な赤身や口の中でとろける大トロなど、見ているだけで幸せな気分になりますよね。そんな身近な魚ですが、実は私たちがまだ知らない驚きの生態や奥深い歴史がたくさん隠されているのをご存知でしょうか。
今回は、海の黒いダイヤとも呼ばれるクロマグロの秘密から、江戸時代の意外な食文化、さらには友達に出したくなるクイズネタまで、誰かに話したくなるマグロの面白い豆知識を30個厳選してご紹介します。これを読めば、次にお寿司屋さんへ行くのがもっと楽しくなるはずですよ。
1.止まると窒息死する

マグロは生まれた瞬間から一生を終えるまで、一時も休むことなく海を泳ぎ続けています。なぜなら、普通の魚のようにエラ蓋を自分で動かして水を取り込むことができず、口を開けて前進することでエラに水流を送る「ラム換水」という呼吸法をとっているからです。そのため、もし泳ぐのをピタリと止めてしまうと、酸素を取り込めずに窒息してしまいます。まさに生きるために走り続ける宿命を背負ったアスリートのような魚なのですね。
2.寝る時も泳いでいる

止まると呼吸ができなくなるマグロは、一体どうやって睡眠をとっているのか不思議に思いますよね。実はマグロは、完全に動きを止めて熟睡するのではなく、泳ぐスピードを少し落として脳を休める「休息状態」に入ることで睡眠の代わりとしています。また、マグロにはそもそもまぶたが存在しないため、休んでいる間もずっと目を開けたままです。目を閉じずにゆっくりと泳ぎながら体を休めるなんて、人間からすると驚きの能力ですよね。
3.最高時速は100キロ超

広い海を回遊するマグロは、水中の生き物の中でもトップクラスのスピードを誇ります。普段は時速10キロから20キロほどでゆったりと泳いでいますが、エサを追いかけたり外敵から逃げたりする時には、瞬間的に時速80キロから100キロ以上もの猛スピードを出すことができます。これは高速道路を走る自動車とほぼ同じ速さです。水の抵抗が非常に大きい海の中でこれほどの速度を出せるのは、究極の流線型の体を持っているおかげなのです。
4.ヒレを収納できる溝がある

マグロが猛スピードで泳ぐ際、邪魔になってしまうのが体の表面にあるヒレです。そこでマグロの体には、水の抵抗を極限まで減らすための驚くべき工夫が備わっています。なんと背ビレや胸ビレの付け根に専用くぼみがあり、高速で泳ぐ時はヒレを折りたたんで体の溝にピタリと収納できるのです。まるで飛行機の車輪が機体の中に格納されるような仕組みで、表面をツルツルに保つことで、あの圧倒的なスピードを生み出しています。
5.魚なのに体温を保てる

一般的に魚類は周囲の水温によって体温が変化する変温動物ですが、マグロはその常識を覆す特別な体を持っています。筋肉の運動で発生した熱を逃がさない「奇網(きもう)」という特殊な血管の仕組みを持っており、冷たい海の中でも体温を水温より10度以上高く保つことができるのです。この仕組みのおかげで筋肉が冷え固まることなく、冷たい北の海から暖かい南の海まで、世界中の海を元気に泳ぎ回ることができます。
6.実はサバの仲間である

体長が数メートルにもなる巨大なマグロと、食卓でおなじみの小ぶりなサバは、一見するとまったく別の魚に見えますよね。しかし生物学的な分類を見てみると、マグロは「スズキ目サバ科マグロ属」に属しており、実はサバやカツオと非常に近い親戚関係にある魚なのです。言われてみれば、背中の青みがかった模様や、尾ビレの付け根にある小さなヒレの並び方など、サバとそっくりな特徴がたくさんあります。稚魚の頃はさらに見分けがつきにくいほど似ています。
7.卵はメダカよりも小さい

体重が数百キロにも達する巨大なクロマグロですが、その卵の大きさは驚くほどミニサイズです。サケの卵であるイクラのような大粒を想像しがちですが、マグロの卵は直径がわずか1ミリ程度しかなく、体長数センチのメダカの卵(約1.5ミリ)よりも小さいのです。1回の産卵で数千万個もの卵を海に放つため、1つひとつのサイズを極限まで小さくして数を増やす戦略をとっています。あんなに小さな粒から巨大な体へと成長するなんて、生命の神秘を感じますね。
8.成魚になれるのは数匹だけ

メスのマグロは一度に数千万個という途方もない数の卵を産みますが、その中で立派な大人のマグロになれるのはほんの一握りです。生まれたばかりの稚魚にはほとんど泳ぐ力がなく、他の魚やプランクトンに食べられてしまうほか、エサ不足や共食いなどによって、成魚まで生き残れるのは数千万個のうちわずか数匹と言われています。私たちが普段美味しくいただいているマグロは、天文学的な確率のサバイバルを勝ち抜いたエリートたちなのです。
9.名前の由来は「目が黒い」

なぜこの魚が「マグロ」と呼ばれるようになったのか、その語源を知ると誰かに教えたくなります。諸説ありますが、最も有力とされているのは、体全体に対して目が大きく、しかも真っ黒であることから「目黒(めぐろ)」と呼ばれ、それが訛って「まぐろ」になったという説です。また、釣り上げた後に背中がすぐに黒く変色して「真っ黒」になるからという説もあります。普段何気なく呼んでいる名前にも、昔の人が見たままの特徴がそのまま刻まれているのですね。
10.漢字の「鮪」は有るから

マグロを漢字で書くと、魚へんに有ると書いて「鮪」となりますよね。この漢字の成り立ちには、マグロの生態や当時の漁の様子が深く関わっています。昔はマグロが群れをなして沿岸に押し寄せてくることが多く、「いつもそこに有る(居る)魚」という意味や、「肉がたっぷりと有る大きな魚」という意味から、この字が当てられたと言われています。また、背中が黒っぽい灰色(消炭色)をしている様子を表しているという説もあり、漢字ひとつにも歴史のロマンが詰まっています。
11.昔は「シビ」と呼ばれた

現代では「マグロ」という呼び名が完全に定着していますが、実は江戸時代の中期頃までは「シビ」という名前で呼ばれていました。奈良時代の『古事記』や『万葉集』にも登場する歴史ある呼び名なのですが、江戸時代の武士たちが「シビ」という音が「死日(しび)」を連想させて縁起が悪いと嫌ったため、次第に「マグロ」という呼び名に取って代わられたのです。なお、現在でも九州や沖縄などの一部地域では、マグロのことを親しみを込めて「シビ」と呼ぶ文化が残っています。
12.江戸時代にトロは捨てた

今でこそお寿司屋さんの最高級ネタとして憧れの的となっている「トロ」ですが、江戸時代にはなんと見向きもされない厄介者でした。当時は冷蔵庫などの保存技術がなかったため、脂の多いトロの部分は赤身に比べて圧倒的に早く酸化して傷んでしまい、食用にならず捨てられていたのです。もし食べるとしても、ネギと一緒に煮込む「ねぎま鍋」にするか、畑の肥料にするしかありませんでした。当時の人が現代の大トロの値段を知ったら、きっと腰を抜かしてしまうでしょうね。
13.江戸っ子の下魚だった

現代では高級魚の代名詞となっているマグロですが、江戸時代の中期頃までは「下魚(げざかな)」と呼ばれる安物の魚として扱われていました。当時の人々はタイやヒラメのような淡白な白身魚を好んでおり、味が濃くて傷みやすい赤身のマグロは、お金持ちや武士が口にするものではなく庶民の食べ物とされていたのです。しかし江戸時代後期に入り、醤油に漬け込む「づけ」という保存法が発明されたことで江戸っ子の間で大ブームとなり、一気に人気ネタへと駆け上がりました。
14.「トロ」は大正時代の造語

マグロの脂が乗った部位を「トロ」と呼ぶようになったのは、実はそれほど古い話ではなく、大正時代から昭和初期にかけてのことです。東京・日本橋にあった「吉野鮨本店」という老舗のお寿司屋さんで、常連客がマグロの脂身を口に入れた瞬間に「口の中でトロっとする」と表現したことが名前の由来だと言われています。それまでは単に「アブラ」などと呼ばれていた部位が、この美味しそうな響きのネーミングによって一気にブランド化され、全国へと広まっていったのです。
15.白いマグロの正体は深海魚

回転寿司などで「ビントロ」や「白マグロ」という名前で提供されている、白っぽくて脂がたっぷりと乗ったネタを食べたことがある方も多いのではないでしょうか。実はこの魚、本来のビンチョウマグロではなく、「アブラソコムツ」や「バラムツ」に近い深海魚の「アロツナス」などが代用魚として使われているケースがあるのです(現在は主にアカマンボウや正規のビンチョウマグロが使われます)。もちろん食べても安全で美味しいのですが、マグロではない別の魚が混ざっていた歴史があるのは驚きですね。
16.ツナ缶の原料は2種類ある

サラダやおにぎりの具として大活躍する「ツナ缶」ですが、実は原料となる魚が1種類ではないことをご存知でしょうか。英語の「Tuna(ツナ)」はマグロだけでなくカツオも含む言葉であるため、日本のツナ缶も「ビンチョウマグロやキハダマグロ」を使ったものと、「カツオ」を使ったものの大きく2種類に分かれています。缶詰の裏面にある原材料名を見るとしっかり記載されており、マグロ製はクセがなくマイルドな味わい、カツオ製は旨味が強くてしっかりした味わいという違いがあります。
17.「シーチキン」は商品名

私たちは普段、ツナ缶のことを何気なく「シーチキン」と呼んでいますが、実はこれ、一般名詞ではないって知っていましたか。「シーチキン」とは、缶詰メーカーのはごろもフーズ株式会社が1958年に商標登録した、れっきとした固有の商品名なのです。そのため、他のメーカーが作ったツナ缶に「シーチキン」という名前をつけることはできません。あまりにも商品が有名になりすぎて、絆創膏をバンドエイドと呼ぶのと同じように、ツナ缶全体の代名詞として定着した代表的な例ですね。
18.赤い身は実は白身の仲間

見た目が鮮やかな赤色をしているマグロは、誰もが疑うことなく「赤身魚」の代表格だと認識していますよね。もちろん水産学上の分類では赤身魚で間違いないのですが、身の性質を細かく見ていくと、一般的な赤身魚よりも白身魚に近い特徴を併せ持っているという面白い一面があります。マグロが赤いのは、長距離を泳ぎ続けるために酸素を蓄える「ミオグロビン」という色素タンパク質が筋肉に大量に含まれているためで、運動量の多さがあの美しい赤色を作り出しているのです。
19.「黒いダイヤ」はクロマグロ

ニュースなどでよく耳にする「海の黒いダイヤ」というカッコいい異名は、マグロの中でも最高峰とされる「クロマグロ(本マグロ)」だけを指す言葉です。背中が黒く輝いて見える見た目の特徴と、1匹あたり数千万円から時には数億円もの高値がつくダイヤモンド並みの希少価値を掛け合わせて、このように呼ばれるようになりました。味も香りも脂の乗りもすべてが一級品で、世界中のお寿司屋さんや美食家たちがこぞって求める、まさに海の宝石と呼ぶにふさわしい存在です。
20.初競り最高額は3億円超え

毎年お正月の風物詩としてニュースで大きく報じられる、豊洲市場(旧・築地市場)でのマグロの初競り。これまでで最も高い値段がついたのは2019年の初競りで、青森県の大間で水揚げされた278キロのクロマグロが、なんと1本あたり「3億3360万円」という史上最高額で落札されました。1キロあたりに換算すると約120万円、お寿司1貫分にすると数万円という途方もない金額になります。ご祝儀相場とはいえ、日本人にとってマグロがいかに特別な魚であるかがよくわかるエピソードですね。
21.世界一小さいのはコシナガ

マグロといえば数メートルにもなる巨大な魚というイメージが強いですが、世界に8種類いるマグロの仲間の中には、とてもコンパクトな種類も存在します。それが「コシナガ」という種類のマグロで、大人になっても体長は60センチから1メートルほど、重さも10キロ前後にしかならない世界最小のマグロです。体が小さいためクロマグロのような派手さはありませんが、身は淡白でクセがなく、主に九州や沖縄などの暖かい地域で美味しいお刺身として親しまれています。
22.完全養殖の成功は日本の誇り

環境の変化や乱獲によって天然のクロマグロが減少し、世界中で資源保護が叫ばれる中、日本が世界に誇る歴史的な快挙を成し遂げました。それが2002年に近畿大学が世界で初めて成功させた「近大マグロ」で知られる完全養殖です。人工孵化させた卵から育てたマグロにさらに卵を産ませ、天然資源に一切頼らずに世代を繋ぐ技術は、それまで「絶対に不可能」とまで言われていました。30年以上もの歳月をかけて達成されたこの技術は、世界の食糧問題を救う希望の光となっています。
23.縄文時代から食べられていた

日本人とマグロの付き合いは、私たちが想像するよりもはるかに古く、なんと今から数千年前の縄文時代にまで遡ります。青森県の三内丸山遺跡をはじめとする全国各地の貝塚から、当時の人々が食べていた証拠である巨大なマグロの骨が数多く出土しているのです。まだエンジン付きの船も高性能な釣り具もなかった時代に、丸木舟に乗って鹿の角で作った釣り針やモリを使い、巨大なマグロを仕留めていたなんて、ご先祖様たちの勇気と技術には驚かされますね。
24.鉄火巻の由来は賭博場

お寿司屋さんの定番メニューである、マグロの赤身を海苔と酢飯で巻いた「鉄火巻」。なぜマグロなのに「鉄の火」と書くのか不思議に思ったことはありませんか。実はこの名前は、江戸時代の賭博場(博打を打つ場所)が「鉄火場」と呼ばれていたことに由来しています。当時の博徒たちが、勝負に熱中しながらでも手を汚さずに片手でパクッとつまんで食べられる食事として考案されたのが始まりで、イギリスのサンドイッチ伯爵が考案したサンドイッチとまったく同じ誕生秘話を持っているのです。
25.山かけの「山」は山芋のこと

マグロのぶつ切りに真っ白なとろろをたっぷりとかけた「マグロの山かけ」は、ご飯のお供にもお酒のおつまみにも最高の一品ですよね。この料理名にある「山かけ」の「山」とは、マグロの山という意味ではなく、すりおろした「山芋(山の芋)」を上からかけることを意味しています。また、赤いマグロの上に白いとろろがかかっている見た目が、山に白い雪が降り積もっている風景に見えることから名付けられたという風流な説もあり、日本料理ならではの美しい感性が感じられます。
26.ネギトロの語源は「ねぎ取る」

回転寿司でも大人気の「ネギトロ」ですが、多くの人が「ネギが入っているトロだからネギトロ」だと思い込んでいますよね。しかし本来の語源は野菜のネギとは関係なく、マグロの骨の隙間や皮の裏に残った身をスプーンなどで「ねぎ取る(こそぎ取る)」という動作から来ています。建築用語で土を掘り返すことを「根切る(ねぎる)」と言ったのが転じた言葉で、捨ててしまう部分を有効活用する職人さんの知恵から生まれた名前なのです。ネギを添えるからという説と合わさって定着した面白い言葉ですね。
27.世界の4分の1を日本が消費

世界中でお寿司ブームが巻き起こり、今やアメリカやヨーロッパ、アジア各国でもマグロが食べられるようになりました。それでもなお、日本人のマグロに対する愛情と消費量は世界でも群を抜いています。全世界で水揚げされるお刺身用のマグロのうち、なんと約4分の1(さらに高級なクロマグロに限れば過半数以上)を日本1国だけで消費しているのです。スーパーに行けばいつでも当たり前にマグロのお刺身が並んでいる光景は、実は世界的に見ても日本ならではのとても贅沢な文化なのですね。
28.マグロの日は10月10日

カレンダーにはさまざまな記念日がありますが、実はマグロにも公式の記念日である「まぐろの日」が存在します。日付は毎年10月10日で、これは1986年に日本かつお・まぐろ漁業協同組合連合会によって制定されました。なぜこの日になったのかというと、奈良時代の歌人である山部赤人が、西暦726年の旧暦9月10日(現在の10月10日頃)に聖武天皇のお供で明石地方を訪れた際、マグロ漁で栄える様子を称える歌を『万葉集』に詠んだことが由来となっています。数字の語呂合わせではなく、歴史的な和歌が由来になっているなんて素敵ですね。
29.脳を活性化するDHAが豊富

マグロはただ美味しいだけでなく、私たちの健康を支えてくれる素晴らしい栄養素の宝庫でもあります。特に脂身のトロの部分や目の裏の肉(眼窩脂肪)には、脳の神経細胞を活性化させて記憶力や判断力を高める「DHA(ドコサヘキサエン酸)」が魚類の中でもトップクラスに多く含まれているのです。さらに、血液をサラサラにして動脈硬化を防ぐ「EPA」や、疲労回復に役立つタンパク質や鉄分もたっぷり詰まっています。勉強を頑張りたい時や健康を維持したい時に、まさにぴったりの食材ですね。
30.太平洋を横断する大回遊魚

水族館の大きな水槽で泳ぐマグロを見ると迫力がありますが、本来の彼らが泳いでいるフィールドは地球規模の壮大なスケールです。日本の近海で生まれたクロマグロの幼魚の中には、成長しながら太平洋を東へと横断し、なんと約8000キロ以上も離れたアメリカやメキシコの沿岸まで旅をする個体がたくさんいます。そして数年かけて立派な成魚になると、産卵のために再び太平洋を渡って生まれ故郷の日本近海へと戻ってくるのです。小さな体で地球の半分を往復するなんて、本当にロマンあふれる魚ですね。
まとめ
今回は、私たちが大好きな「マグロ」にまつわる面白い雑学や豆知識を30個ご紹介しました。止まると死んでしまうという驚きの生態から、江戸時代にはトロが捨てられていたという意外な歴史まで、普段何気なく食べているマグロの知られざる一面をたくさん発見していただけたのではないでしょうか。
こうした背景や豆知識を知っていると、スーパーでお刺身を選ぶ時や、家族や友人と一緒にお寿司屋さんへ行った時の会話が何倍も盛り上がること間違いなしです。ぜひ今度マグロを食べる時には、広大な海を旅してきたマグロのロマンを思い出しながら、誰かにこの雑学をクイズにして披露してみてくださいね。
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