動物園で大きな口をゆっくり開けたり、気持ちよさそうに水の中に浸かったりしているカバを見ると、なんだか心が和みますよね。のんびりとした愛嬌のある姿から「温厚で優しい動物」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。しかし、実際のカバを調べてみると、見た目の印象をガラリと覆す驚きの生態や特徴がたくさん隠されています。
実はアフリカのサバンナでは最強クラスと恐れられていたり、海の生き物と意外な親戚関係にあったりと、知れば知るほど奥が深い動物なのです。今回は、そんなカバに関する面白い豆知識や誰かに話したくなる秘密を30個厳選してご紹介します。ぜひ最後まで楽しみながら読んでみてくださいね。
1.実はクジラと最も近い親戚

丸々とした体型や短い足を見ると、カバはブタやイノシシの仲間だと思われがちですよね。実際に昔はイノシシに近い動物だと考えられていましたが、近年のDNA解析によって驚くべき事実が判明しました。なんと、カバに最も近い現生の動物は海を泳ぐ「クジラ」や「イルカ」なのです。約5500万年前に共通の祖先から枝分かれしたと言われており、水辺を好む生態にも納得がいきますよね。
2.赤い粘液で日焼けを防ぐ

カバの体が赤く濡れているのを見て、「血の汗をかいている!」と驚いたことがある人もいるかもしれません。実はこれ、血液でも普通の汗でもなく、皮膚を紫外線や乾燥から守るための特別な粘液なのです。分泌された直後は無色透明ですが、空気に触れて化学反応を起こすことで数分のうちに真っ赤に変化します。さらに、傷口からバイ菌が入るのを防ぐ殺菌作用まで備わっているというから驚きですよね。
3.水中で泳げず川底を歩く

1日の大半を水の中で過ごすカバですが、実は水かきを使ってスイスイと泳ぐことができません。カバの体は骨の密度が非常に高く、脂肪のつき方も特殊なため、水に入るとそのままブクブクと底まで沈んでしまうのです。ではどうやって移動しているのかというと、川底や湖の底を足で蹴りながらピョンピョンと跳ねるように歩いています。水中を優雅に舞うような動きは、泳ぎではなくウォーキングだったのですね。
4.走る速さは時速40km以上

体重が1.5トンから3トン近くもある巨体で、普段はのっそりと歩いているカバですが、本気を出すと信じられないスピードで走ります。陸上での最高速度は、なんと時速40km以上にも達すると言われており、これは人間の短距離走選手よりも速いスピードです。もし野生のカバに陸上で追いかけられたら、人間が走って逃げ切ることはまず不可能です。鈍重そうな見た目からは想像もつかない高い身体能力を持っています。
5.大あくびは怒りの威嚇行動

動物園などでカバが大きな口を「ふわぁ〜」と開けている姿を見ると、眠くてあくびをしているように見えますよね。もちろん本当に眠い時もありますが、野生におけるこの行動の多くは「自分の縄張りに入るな!」という強い威嚇のサインです。最大で150度近くまで開く巨大な口と、鋭く伸びた立派な牙を見せつけることで、相手に自分の強さをアピールしています。のんびりした仕草の裏には、激しい闘争心が隠されているのです。
6.噛む力は1トンを超える

カバの武器はその巨体だけでなく、とてつもない顎のパワーにもあります。カバが本気で噛みつく時の力(咬合力)は、およそ800kgから1トン近くに達するとされており、動物界でもトップクラスの破壊力です。この強力な顎と長い犬歯を使えば、硬いウロコを持つワニでさえも真っ二つに噛み砕いてしまうほどです。普段は柔らかい草を食べている草食動物ですが、怒らせるとどんな肉食獣よりも恐ろしい存在になります。
7.サバンナで最も危険な動物

アフリカで人間にとって一番危険な動物といえば、ライオンやヒョウなどの肉食動物を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、実際にアフリカで毎年もっとも多くの人間の命を奪っている大型哺乳類はカバだと言われています。カバは非常に縄張り意識が強く、自分のテリトリーや子どもに近づくものを容赦なく攻撃する性格だからです。ボートのすぐ下から突然現れて船をひっくり返すこともあり、現地では大変恐れられています。
8.フンを撒き散らすプロペラ尾

カバがフンをする様子を観察すると、しっぽをプロペラのように高速でブンブンと左右に振り回しているのが分かります。これは「まきフン」と呼ばれる行動で、自分のフンを周囲に広く飛び散らせて縄張りを主張するために行っています。また、オスがメスに対して自分の存在や強さをアピールする求愛行動としての意味合いもあります。動物園のカバ舎で壁が高い位置まで汚れているのは、このプロペラしっぽの威力によるものなのです。
9.水中で眠り自動で浮上する

肺呼吸をする哺乳類であるカバが、水中に沈んだままどうやって眠っているのか不思議に思いませんか。カバは1回につき5分程度息を止めることができますが、眠っている間も窒息することはありません。苦しくなると眠ったまま無意識に水面まで浮上して鼻だけを出して息継ぎをするという器用な技を持っています。そして空気を吸い込むと、再び目を覚ますことなく水底へと沈んで睡眠を続けることができるのです。
10.目と鼻と耳が一直線に並ぶ

カバの顔を横からじっくり観察してみると、目・鼻・耳の3つのパーツが頭の高い位置にほぼ一直線に並んでいることに気づきます。これは水中生活に適応した進化の結果で、体全体を水中に隠したまま周囲の様子を伺うための仕組みです。顔の上部だけをほんの少し水面から出すだけで、呼吸をしながら視覚や聴覚、嗅覚をフル活用して天敵や周囲の危険を察知できます。ワニやカエルにも見られる、水辺の生き物ならではの賢い特徴ですね。
11.潜ると鼻と耳が自動で閉じる

人間が水の中に潜る時は、鼻に水が入らないように指でつまんだり息を吐いたりする必要がありますよね。しかし、カバにはその必要がまったくありません。カバの鼻の穴と耳には筋肉で動く弁のような仕組みがあり、水中に潜ると反射的にピタッと閉じて水の侵入を防ぐようになっています。水面に顔を出せばパッと開いてすぐに呼吸ができるため、1日中水に出入りしていてもストレスなく快適に過ごせるのです。
12.完全草食で夜に40kg食べる

あれほど巨大な体と鋭い牙を持っていますが、カバは基本的に肉や魚を食べない草食動物です。昼間は強い日差しや乾燥を避けて水の中でじっとして過ごし、涼しくなる夜になると陸に上がって40km近くも歩き回りながら草を食べる生活を送っています。1晩で食べる草の量はなんと約40kgにもなりますが、巨体の割にはエネルギー消費を極力抑えて暮らしているため、体重のわずか1〜1.5%ほどの食事量で足りるという省エネ体質なのです。
13.草を噛む歯と戦う牙は別物

カバが口を開けた時に目立つ、前方に突き出た長い歯は「犬歯」と「門歯(前歯)」です。実はこれらの長い牙は食事の時にはほとんど使われず、主に仲間同士の争いや外敵から身を守るための武器として発達しました。草を食べる時は、強靭で分厚い唇を使って草をブチブチと引きちぎり、口の奥にある臼歯(奥歯)ですり潰して食べています。しかも、武器となる犬歯は一生伸び続けるという特徴も持っています。
14.出産も授乳も水中で行う

カバの赤ちゃんは、約8ヶ月の妊娠期間を経てお母さんの体から生まれてきます。驚くべきことに、カバは陸の上ではなく浅い水の中で出産を行い、生まれた赤ちゃんはすぐに水面へ泳いで最初の息継ぎをするのです。さらに、母乳を飲む時も水中で行われます。赤ちゃんカバは鼻と耳をしっかりと閉じ、おっぱいに吸い付いたまま水中で器用にミルクを飲むことができるという、生まれながらの水中スペシャリストなのです。
15.語源はギリシャ語の川の馬

カバは漢字で「河馬(川の馬)」と書きますが、これは英語の「Hippopotamus(ヒポポタマス)」をそのまま翻訳した言葉です。英語のルーツを辿ると古代ギリシャ語の「ヒッポポタモス」に行き着き、「ヒッポス(馬)」と「ポタモス(川)」を組み合わせた言葉が語源となっています。古代ギリシャの人々がナイル川に生息するカバを見た時、水辺に暮らす巨大な馬のように見えたことからこの名前がつけられました。
16.世界三大珍獣のコビトカバ

カバの仲間には、私たちがよく知る大型のカバのほかに「コビトカバ」という小型の種類が存在します。コビトカバは体長が1.5m〜1.7mほど、体重も通常のカバの10分の1程度(約180〜270kg)しかなく、ジャイアントパンダ、オカピと並んで「世界三大珍獣」の1つに数えられています。群れを作らず森林の奥深くで単独でひっそりと暮らしており、目と鼻が一直線に並んでいないなど、陸上生活により適した体のつくりをしています。
17.皮膚の厚さは約4〜5cm

カバの体を覆う皮膚は、陸上動物の中でもトップクラスの分厚さを誇ります。背中やお尻まわりの皮膚は厚さが約4cm〜5cmもあり、体重全体の約18%を皮膚の重さが占めているほどです。この鎧のように分厚くて頑丈な皮膚のおかげで、ライオンに噛みつかれたり、鋭い木の枝にぶつかったりしても致命傷を負いにくくなっています。ただし、表面の角質層はとても薄いため、乾燥するとすぐにひび割れてしまう繊細な一面もあります。
18.体脂肪率はわずか数%の筋肉質

丸々と太ったお腹を見ると、カバはたっぷり皮下脂肪を蓄えた肥満体型のように見えますよね。ところが実際はその逆で、カバの体脂肪率はわずか数%程度しかなく、体のほとんどが分厚い皮膚と強靭な筋肉、そして重い骨と内臓でできています。お相撲さんが一見太って見えても実は筋肉の塊であるのと同じですね。この圧倒的な筋肉量があるからこそ、水底から陸上へ軽々と駆け上がったり、時速40kmで走ったりできるのです。
19.フンが川の生態系を支える

カバが夜間に陸上で食べた大量の草は、昼間に過ごす川や湖の中でフンとして排出されます。一見すると水を汚しているだけのように思えますが、実はこのフンが川に窒素やリンなどの豊かな栄養素を運ぶ重要なポンプの役割を果たしています。カバのフンをエサにしてプランクトンや水生昆虫が増え、それを食べる魚たちが育つのです。カバがいなくなると川の魚が激減してしまうほど、アフリカの自然界に欠かせない存在となっています。
20.魚に体を掃除してもらう

水の中でじっとしているカバの周りには、たくさんの魚が集まってくることがあります。これはカバが魚を襲わないことを知っているだけでなく、カバの皮膚についた古い角質や寄生虫、傷口の汚れを魚たちが食べて掃除しているからです。魚にとっては栄養満点の食事が安全に手に入り、カバにとっては体を清潔に保って傷の治りを早くしてもらえるという、自然界の見事な「相利共生」の関係が成り立っています。
21.胃が3つあるが反芻しない

カバの胃袋は3つの部屋に分かれており、消化しにくい植物の繊維を微生物の力でじっくり分解する仕組みになっています。ウシやキリンなどの偶蹄類は、一度飲み込んだ草を口に戻して噛み直す「反芻(はんすう)」を行いますが、カバは複雑な胃を持ちながらも反芻を一切行わないという珍しい特徴があります。その代わり、腸の長さが最大で60m近くもあり、長い時間をかけて栄養をしっかりと吸収できるようになっています。
22.ワニの背中を平気で踏む

水辺の王者として知られる獰猛なナイルワニも、大人のカバには頭が上がりません。体格差と噛む力の差が圧倒的なため、ワニの方からカバに道を譲るのが日常の光景となっています。それどころか、カバがワニを邪魔者扱いして追い払ったり、水中にいるワニの背中をただの丸太のように踏みつけて歩いたりすることさえあります。若いカバがワニの尻尾を甘噛みしてちょっかいを出す姿も目撃されており、パワーバランスの差は歴然です。
23.日本初のカバは1911年来日

日本に初めてカバがやってきたのは、明治44年(1911年)のことでした。ドイツの有名な動物商から購入され、東京の上野動物園にやってきたオスの子どものカバが日本第1号です。当時の日本人は誰も本物のカバを見たことがなく、大きな口を開ける奇妙で巨大な動物の登場に国中が大騒ぎになりました。ちなみに来日した当初は「河馬(かわうま)」と呼ばれていましたが、次第に音読みの「カバ」という呼び方が定着していきました。
24.カバの歯で作られた総入れ歯

カバの長く伸びた犬歯(牙)は、象牙にも負けないほど硬くて密度が高いという特徴があります。しかも、象牙は時間が経つと黄色く変色してしまいますが、カバの歯はいつまでも白さを保ちやすく腐食にも強い性質を持っていました。そのため、18世紀から19世紀にかけてのヨーロッパやアメリカでは、富裕層向けの高級な「入れ歯の材料」としてカバの歯が重宝されていたのです。アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンもカバの歯を使った入れ歯を愛用していました。
25.古代エジプトでは豊穣の女神

古代エジプトにおいて、ナイル川に生息するカバは畏怖と信仰の対象でした。オスは作物を荒らす恐ろしい害獣として恐れられた一方で、子どもを命がけで守るメスのカバは出産や母性、豊穣を司る女神「タウェレト」として崇拝されていたのです。タウェレト神は「カバの頭、妊婦のような大きなお腹、ライオンの手足、ワニの背中」を持つユニークな姿で描かれ、妊婦や赤ちゃんを守る魔除けのお守りとして多くの家庭で大切にされました。
26.大声は110デシベルを超える

カバが「ンゴォーッ!」「フォッフォッフォ!」と低く響く声で鳴くのを聞いたことがありますか。カバの鳴き声は非常に大きく、最大音量は110デシベル以上という、飛行機のエンジン音や車のクラクションに匹敵する大迫力です。さらにカバは、鼻を水面上に出して空気中で鳴き声を響かせるのと同時に、顎から水中へ音の振動を伝える「水陸同時のコミュニケーション」ができる唯一の哺乳類としても知られています。
27.コロンビアで野生化し大繁殖

本来カバはアフリカ大陸にしか生息しない動物ですが、なんと南米のコロンビアで野生化して大繁殖しているという驚きの事実があります。事の発端は1980年代、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルが自宅のプライベート動物園に4頭のカバを密輸したことでした。彼の死後、放置されたカバたちが近くの川へ逃げ出し、天敵がいない温暖な環境で150頭以上にまで爆発的に増えてしまったのです。現在では現地の生態系を脅かす外来種として大きな問題になっています。
28.野生の寿命は40〜50年

カバは動物の中でも比較的長生きする種類で、野生での平均寿命はおよそ40年から50年ほどと言われています。外敵が多いサバンナでも、大人になれば天敵がほとんどいないため長く生きることができるのです。さらに、栄養管理や医療が行き届いた動物園での飼育下ではさらに長寿になる傾向があり、世界最高齢記録では60歳を超えて生きたカバも確認されているほどです。人間と同じくらいの長い年月を生きる動物なのですね。
29.絶滅危惧種に指定されている

動物園ではおなじみの人気者で、サバンナでも強さを誇るカバですが、実は現在、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「危急種(絶滅危惧II類)」に指定されています。人口増加に伴う開発によって生活に不可欠な水辺の住処が失われていることや、象牙の代わりとしてカバの牙を狙う密猟が深刻な原因となっています。さらに近年では気候変動による干ばつも追い打ちをかけており、カバたちが安心して暮らせる環境を守ることが世界的な課題となっています。
30.2月15日は世界カバの日

毎年2月15日は「世界カバの日(World Hippo Day)」という記念日に制定されています。この日は、世界中で愛されているカバの魅力や生態について理解を深めるとともに、絶滅の危機に瀕している野生のカバたちの保護を呼びかける日として作られました。日本の動物園でも、2月15日に合わせてカバに特別なおやつをプレゼントしたり、飼育員さんによる特別ガイドイベントを開催したりしているので、ぜひチェックしてみてくださいね。
まとめ
カバの雑学30選をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。のんびりとした癒やし系のイメージとは裏腹に、時速40kmで走る俊敏さやワニをも圧倒する顎の力など、サバンナ最強クラスと呼ぶにふさわしい驚きの身体能力を持っていましたね。また、クジラと親戚であることや、赤い粘液でスキンケアをしていることなど、進化の不思議を感じさせる豆知識もたくさんありました。
こうした生態の秘密を知ってから動物園へ足を運ぶと、水中に沈んで歩く姿や、大きな口を開ける仕草ひとつひとつが今まで以上に面白く見えてくるはずです。ぜひ今度動物園に行った際は、家族や友人にカバの意外なトリビアをシェアして、一緒に観察を楽しんでみてくださいね。
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