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根付の雑学12選~着物の使い方や意味が面白い江戸の豆知識~

根付雑学

着物姿で出かけるとき、薬やたばこなどの小物はどう持ち歩いたのでしょうか。江戸時代には、入れ物を帯からつるす「提げ物(さげもの)」が使われ、その落下を防ぐ留め具が「根付(ねつけ)」でした。小さな動物や人物の彫刻にも、実はちゃんとしたお役目があったのです。

ところが、根付の魅力は便利さだけではありません。動く仕掛けや食べ物そっくりの形、物語を閉じ込めた細工など、拡大して楽しみたい江戸の遊び心がいっぱい詰まっています。江戸時代の作品を中心に、その使い方や意味、面白い豆知識を一緒に見ていきましょう。

 

1.キツネのあごが動く

可動するあごを備えた木製のキツネ面の根付

根付には、形を眺めるだけでは終わらないユニークなものもあります。このキツネ面は、なんと口元をパクパクと開閉できる仕掛け付きなのです。19世紀の江戸時代の作品に分類される木製の根付で、高さは約4.4センチほど。根付の題材には、芝居の面や神々、動物などもよく選ばれました。面を小さく写すだけでなく、帯の留め具という実用品に「触って楽しむ要素」まで盛り込まれていたのが面白いところですね。

画像・参考:メトロポリタン美術館『Netsuke of Fox Mask with Movable Jaw』、10.211.2427/根付の題材と使い方。画像:CC0 1.0。

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2.小さな家は携帯容器

家屋の形をした印籠と、袋に入った布袋を表す根付の組み合わせ

小さな家に見えるこちらは、18世紀末〜19世紀初めの印籠(いんろう)です。印籠は薬や印章を持ち歩くための重ね式のケースで、この作品は二つの段から成ります。上に付く根付は袋に入った布袋(ほてい)、間の玉は「緒締(おじめ)」です。緒締を根付側へ滑らせると、フタを開けやすくなります。家、人物、玉は別々の飾りではなく、収納して閉じ、帯から下げるための仕組みをセットで担っているのです。

画像・参考:メトロポリタン美術館『家屋形蒔絵印籠』、29.100.841/印籠・根付・緒締の仕組み/Wikimedia Commonsの同画像資料。画像:CC0 1.0。

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3.栗のいがを焼き物に

栗のいがをかたどった平戸焼の磁器製根付

根付と聞くと木や象牙の彫刻を思い浮かべがちですが、実は磁器で作られた珍しい根付もあります。こちらは19世紀初めの平戸焼で、題材は秋の味覚である栗。高さ約3.6センチ、直径約4.7センチの小さな作品です。根付には金属や貝、木の実なども使われ、素材の選択にも幅広い工夫がありました。食べる実だけでなく、トゲトゲとした外側の皮を主役にして携帯用の工芸品に仕立てたセンスが光りますね。

画像・参考:メトロポリタン美術館『Chestnut Burr』、91.1.213/根付に使われた素材。画像:CC0 1.0。

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4.饅頭形に透かし彫り

草花とカマキリを透かし彫りで表した象牙製の饅頭形根付

根付には、丸い和菓子に形が似ていることから「饅頭(まんじゅう)」と呼ばれる型があります。写真は18世紀末の作品で、草花とカマキリを表したもの。面白いのは、中をくり抜いて立体的な奥行きを作っていることです。この形式は職人の名にちなむ「柳左(りゅうさ)」型として知られ、作品もRyūsaの作と推定されています。直径約5.4センチの象牙に、浮き上がる模様と抜けた空間を組み合わせた繊細な細工です。

画像・参考:メトロポリタン美術館、Ryūsa作と推定『草花螳螂牙彫根付』、10.211.1271/饅頭形の由来。画像:CC0 1.0。

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5.たばこ入れに舶来の革

オランダ製の装飾革を使ったたばこ入れと煙管の道具一式

江戸時代の喫煙道具には、海外から届いた素材を使う豪華なものもありました。この18世紀の一式では、ポーチと煙管(きせる)入れにオランダから伝わった装飾レザーが使われています。根付も淡水真珠を金の波模様で包んだぜいたくな作りです。この「金唐革(きんからかわ)」は、ヨーロッパでは主に部屋の壁を飾る材料でしたが、日本では粋な小物として珍重され、持ち歩くおしゃれに取り入れられました。

画像・参考:メトロポリタン美術館『Tobacco Pouch and Pipe with Netsuke of Freshwater Pearl in Gold Mount』、14.40.843a, b/国立国会図書館「暮らしの中の異国」金唐革の解説。画像:CC0 1.0。

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6.カニを金属で表す

丸まったハスの葉と小さなカニを表した、象牙と金属を組み合わせた根付

根付の細工は、ひとつの素材を彫るだけとは限りません。19世紀初めのこの作品では、象牙の土台に精巧な彫金のパーツをはめ込む技法が使われています。中央の円盤には複数の素材や金色の細工が施され、小さな水辺の生き物と、縁が丸まったハスの葉が表現されています。銅と金を混ぜた「赤銅(しゃくどう)」など、合金の色彩を生かす作り方もあり、異なる素材のコントラストを味わえるのが魅力です。

画像・参考:メトロポリタン美術館『Crab on a Lotus Leaf』、91.1.940/根付の金属と合金。画像:CC0 1.0。

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7.異国の人も題材に

雄鶏とともにオランダ人を表した18世紀末の象牙製根付

日本の動物や物語だけでなく、オランダ人をモチーフにした作品も残されています。こちらは18世紀末の根付で、人物と雄鶏(おんどり)を組み合わせています。こうした品が作られたのは、外国人に直接会った日本人がまだ少なかった時代でした。抱えている鶏はオランダの植民地で行われた闘鶏に関係する可能性も指摘されていますが、正確な意味は断定できません。当時の人々の「海の向こうへの好奇心」が伝わってきますね。

画像・参考:メトロポリタン美術館『南蛮人牙彫根付』、10.211.1444。画像:CC0 1.0。

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8.根付そのものが小箱

風景の中の人物や牡丹を彫った赤い漆の箱形根付

本来は入れ物を支えるためのストッパーですが、フタを開けて中に物をしまえる構造にした作品もあります。この18世紀の赤い漆の根付には、風景の中の人物や牡丹(ぼたん)が美しく彫られています。高さは約3.9センチほど。中には常備薬や印章に使う朱肉などを収めた可能性があるとされていますが、実際に何が入っていたかまではわかっていません。留め具にも収納場所を設けるという、一石二鳥の発想がユニークです。

画像・参考:メトロポリタン美術館『Box with figures in a landscape and peony』、10.211.2081。画像:CC0 1.0。

 

9.掛け軸から鬼退治

掛け軸から現れた鍾馗が、小鬼に剣を振り上げる象牙製根付

高さ約4.5センチの空間に、劇的な物語の一場面が収められています。19世紀前半のこの作品では、魔除けの神様として知られる鍾馗(しょうき)が、描かれた絵の中から現実へ飛び出して小鬼を追う姿が彫られています。剣を振り上げられた鬼とは別に、裏側へ逃げる鬼も表現されているのが見どころです。「鍾馗の絵には悪霊を遠ざける力がある」という信仰を、表と裏で展開する立体的なユーモアに変えた名品です。

画像・参考:メトロポリタン美術館、Shūōsai『Shōki Comes to Life from a Hanging Scroll』、10.211.513。画像:CC0 1.0。

 

10.ネズミはお守りにも

親ネズミと三匹の子を表した19世紀半ばの象牙製根付

親子を表したこちらの根付は、ただのかわいい動物の細工というだけではありません。当時の人々にとって、この小動物は富をもたらす大黒天や十二支の「子(ね)」と深く結び付く縁起物でした。この19世紀半ばの作品は、親と三匹の子を表した象牙製です。子年生まれの人が幸運を願って身に着けたと考えられていますが、持ち主の名前までは判明していません。好みのデザインと願掛けが、ひとつの道具の中で重なっています。

画像・参考:メトロポリタン美術館『Rat with Three Young』、81.1.34。画像:CC0 1.0。

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11.たばこ道具が詩の題に

たばこ入れ、煙管、根付を描き、上部に詩を配した1813年の摺物

根付や提げ物は、実物だけでなく版画のテーマにもなりました。この1813年の摺物(すりもの=特製版画)は、喫煙具と根付のセットを主役に据えた風流な一枚です。作者は窪俊満(Kubo Shunman)。上部に記された狂歌では、お寺の火と、番人が煙管から立ち上らせる煙とが粋に結び付けられています。道具の美しさを描くだけでなく、言葉の連想も添えて使う場面を想像させる、江戸文化ならではの楽しさがありますね。

画像・参考:メトロポリタン美術館、Kubo Shunman『Tobacco Pouch and Pipe』、JP1954。画像:CC0 1.0。

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12.丸さにも実用の理由

19世紀半ばにŌhara Mitsuhiroが制作した象牙製のウサギの根付

コロンとした愛らしいフォルムには、見た目の良さとは別に、身に着ける道具ならではの大切なワケがあります。実用される根付には、大切な絹の着物を引っ掛けて傷めない滑らかな表面や、落としても欠けにくい頑丈さが求められたのです。このウサギは19世紀半ばの大原光広(Ōhara Mitsuhiro)の作品で、高さは約2.5センチ。常に衣服に触れるパーツだからこそ、手触りや耐久性を気にする細やかな配慮が込められています。

画像・参考:メトロポリタン美術館、Ōhara Mitsuhiro『Rabbit』、91.1.975/実用の根付に求められた形と丈夫さ。画像:CC0 1.0。

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まとめ

根付は、提げ物を帯に留めるための小さな道具でした。それでも、その中には動く仕掛けや秘密の収納場所、縁起のよい動物、物語の一場面までがぎゅっと詰め込まれています。印籠やたばこ入れと組み合わせて見ると、彫刻の美しさだけでなく、小物を持ち歩くための江戸の知恵も見えてきますね。

また、同じ根付でも、木、象牙、磁器、金属では表現の仕方がまったく違います。今度、スマホのチャームやキーホルダーを選ぶときには、江戸の人も「便利さ」と「自分の好み」を一緒に楽しんでいたことをぜひ思い出してみてください。手のひらほどの小さな道具にも、暮らしを彩る工夫はたっぷり入るのです。

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