秋になるとスーパーや果物屋さんの店頭にずらりと並ぶ、エメラルドグリーンの美しいシャインマスカット。パリッとした食感と口いっぱいに広がる上品な甘さは、子どもから大人まで夢中にさせる魅力がありますよね。すっかり日本の定番フルーツとして定着しましたが、実はその誕生の裏側や驚きの特徴など知られざる秘密がたくさん隠されているのをご存じでしょうか。
今回は、そんなシャインマスカットにまつわる面白い雑学や豆知識を30個厳選してご紹介します。歴史や名前の由来から、スーパーで甘い房を見分けるコツ、鮮度をキープする保存方法まで幅広くまとめました。これを読めば、普段食べているシャインマスカットが今よりもっと美味しく楽しく味わえるようになりますよ。
1.実は広島県生まれの果物

ぶどうといえば山梨県や長野県、岡山県などのイメージが強いですが、シャインマスカットが誕生したのは意外にも広島県です。東広島市安芸津町にある国の研究機関「農研機構」の研究拠点で育成されました。1988年に交配が行われ、長い年月をかけて選抜と試験が繰り返された末に2006年に品種登録された比較的新しいぶどうなのです。昔からある品種のように見えますが、実は平成になってから世に出たルーキーなのですね。
2.完成まで33年もかかった

シャインマスカットがこの世に誕生するまでには、気の遠くなるような歳月が費やされています。大元となる親品種の交配研究がスタートしたのは1973年のことで、そこから何世代にもわたって掛け合わせが行われました。ぶどうの木は種をまいてから実がなるまでに何年もかかるため、研究開始から品種登録まで実に33年もの月日がかかっています。研究者たちの執念と努力の結晶が、あの一粒一粒に詰まっているのですね。
3.欧米のぶどうをいいとこ取り

ぶどうには大きく分けてヨーロッパ系とアメリカ系の2種類があります。ヨーロッパ系は味が良くて皮ごと食べられますが日本の雨や病気に弱く、反対にアメリカ系は丈夫で育てやすいものの皮が厚くて渋いという弱点がありました。そこで農研機構が両者を掛け合わせ、ヨーロッパ系の美味しさとアメリカ系の育てやすさを両立させて作ったのがシャインマスカットです。まさに夢のようなハイブリッド品種といえます。
4.祖母にあたる品種は甲斐路

シャインマスカットは、「安芸津21号」という品種と「白南(はくなん)」という品種を掛け合わせて生まれました。さらにその家系図をさかのぼると、母方である白南の親、つまり祖母にあたるのが赤い高級ぶどうとして有名な「甲斐路(かいじ)」です。また、父方の親には「マスカット・オブ・アレキサンドリア」や「スチューベン」が入っており、名だたる名품ぶどうたちのサラブレッドとして誕生しました。
5.名前は輝く太陽に由来する

キラキラとした高級感あふれる「シャインマスカット」という名前ですが、これには育成者たちの素敵な願いが込められています。ぶどうは太陽の光をたっぷり浴びることで甘く美味しく育つため、英語で「輝く」を意味するシャイン(Shine)が選ばれました。また、艶のある美しい果皮が太陽のように輝いて見えることや、日本の果樹農業に明るい光を照らす存在になってほしいという意味も込められています。
6.本来は種があるぶどう

シャインマスカットといえば「種がなくて食べやすい」のが大きな特徴ですが、実はもともと種が存在しない品種というわけではありません。自然のまま普通に育てると、粒の中にしっかりと種ができます。私たちが普段種なしで食べられるのは、農家さんが栽培の途中で「ジベレリン」という植物ホルモンの水溶液に房を浸す処理を1房ずつ手作業で行っているからです。あの食べやすさは農家さんの手間暇のおかげなのですね。
7.皮がむけないから丸ごと食べる

皮ごとパリッと食べられる理由は、単に皮が薄くて渋みが少ないからだけではありません。巨峰などのアメリカ系ぶどうは指でつまむと皮と実がつるんと剥がれますが、シャインマスカットは皮と果肉がぴったりと密着していて剥がれない構造になっています。そのため、むこうとしても綺麗にむくことができず、結果としてそのまま丸ごと食べるのに適したぶどうになったというわけです。
8.緑色よりも黄色い方が甘い

スーパーで選ぶとき、つい鮮やかな濃い緑色のものを手に取ってしまいがちですが、実は甘さを重視するなら少し黄色みを帯びたものがおすすめです。シャインマスカットは樹の上で完熟が進むにつれて緑から黄緑や黄色へと変化する性質を持っています。緑色が濃いものはマスカット特有の爽やかな香りが強く、黄色に近いものは糖度が高くて濃厚な甘みがあるため、好みに合わせて選ぶと失敗しませんよ。
9.糖度は20度近くにもなる

一般的な果物の糖度は、いちごやみかんで10〜12度前後、甘いとされるメロンや桃でも13〜15度ほどといわれています。それに対してシャインマスカットは、平均的な糖度が18〜20度前後とトップクラスの甘さを誇ります。しかも、甘さを打ち消す酸味が非常に少ないため、実際の数値以上に強い甘みをダイレクトに感じられるのが特徴です。ひと粒食べただけで幸せな気分になれるのも納得ですね。
10.表面の白い粉は新鮮な証拠

粒の表面にうっすらと白い粉のようなものがついているのを見て、「農薬が残っているのでは?」と心配になったことはありませんか。実はこれ、農薬やカビではなくぶどう自身が作り出した「ブルーム(果粉)」という天然の脂質成分です。雨や乾燥から実を守り、水分の蒸発を防ぐ大切な役割を果たしています。手で触ると落ちてしまうため、白い粉がしっかりついているものほど収穫されたばかりで新鮮な証拠ですよ。
11.房の下よりも上の方が甘い

いちごやパイナップルは先端(下側)の方が甘いといわれますが、ぶどうの場合はまったくの逆になります。ぶどうは枝に近い方から順番に熟していくため、房の肩にあたる「上側」の粒ほど糖度が高くて甘いのです。そのため、上から食べてしまうと最後の方に甘みが物足りなく感じてしまうことがあります。最初は一番下の先端から食べ始めて、だんだん上へと食べ進めていくと、最後まで美味しく味わえますよ。
12.収穫した後は追熟しない

バナナやキウイ、メロンなどは、買ってきてから部屋に置いておくと追熟してどんどん甘く柔らかくなりますよね。しかし、ぶどうは収穫した瞬間から追熟しない果物なので置いておいても甘くならないという特徴があります。それどころか、時間が経つほど水分が抜けて鮮度も味も落ちていってしまいます。買ってきたときが一番美味しい状態ですので、熟成を待たずにできるだけ早く食べるのが鉄則です。
13.軸が緑色で太いものが新鮮

粒の色やハリだけでなく、房の真ん中を通っている「軸(枝)」の部分を見るのも、美味しいシャインマスカットを見極める重要なポイントです。収穫したての新鮮なものは、軸が鮮やかな緑色をしていて太くしっかりとした弾力があります。収穫してから日にちが経つと、軸から水分が抜けてだんだん茶色く細く枯れていきます。売り場で迷ったときは、まず一番上の切り口や軸の色をチェックしてみてくださいね。
14.保存の前に洗うのはNG

買ってきたシャインマスカットを冷蔵庫に入れる際、先に水洗いしてからしまっていませんか。実は、保存する前に洗ってしまうと、鮮度を保つための天然の保護膜であるブルームが洗い流されて傷みが早くなる原因になります。さらに、粒の表面や隙間に残った水分からカビが発生しやすくなってしまいます。水洗いするのは「食べる直前に、その時食べる分だけ」にするのが長持ちさせるコツです。
15.軸を少し残して切ると長持ち

房のままポリ袋に入れて野菜室で保存するのも良いですが、さらに日持ちさせたいときは一粒ずつバラバラにして保存するのがおすすめです。このとき、手で無理やり引っ張ってちぎると、粒の付け根に穴が開いてそこから果汁が漏れたり傷んだりしてしまいます。清潔なキッチンバサミを使って、粒の上に2〜3ミリほど軸を残すように切り離すと、乾燥や雑菌の侵入を防いで1週間以上も鮮度をキープできますよ。
16.冷凍するとシャーベットになる

たくさん手に入って食べきれないときは、冷凍保存してしまうのも賢い方法です。軸から切り離した粒を優しく水洗いし、キッチンペーパーで水気を完全に拭き取ってからジッパー付きの保存袋に入れて冷凍庫へ入れます。食べるときは室温に少しだけ置いて半解凍状態にすると、果肉がシャリッとした絶品の天然シャーベットとして楽しめます。皮も気にならず、お風呂上がりのデザートにもぴったりですよ。
17.冷やしすぎると甘みが減る

冷たいフルーツは美味しいものですが、シャインマスカットを冷蔵庫の奥でキンキンに冷やしすぎるのはあまりおすすめできません。果物に含まれる糖分は、温度が低くなりすぎると人間の舌が甘みを感じにくくなるという性質があるからです。食べる2〜3時間前に冷蔵庫へ入れて程よく冷やす程度にするか、野菜室で保存したものをそのまま食べる方が、本来の芳醇な甘みとマスカット香をしっかり堪能できます。
18.皮にはポリフェノールが豊富

巨峰などの黒いぶどうに比べると少なく見えますが、シャインマスカットの皮にも「プロアントシアニジン」や「レスベラトロール」といったポリフェノールがたっぷり含まれています。これらの成分には細胞の酸化を防ぐ強い抗酸化作用があり美容や健康に役立つといわれています。果肉よりも皮やそのすぐ下の部分に多く含まれているため、皮をむかずに丸ごと食べられるシャインマスカットは栄養面でも非常に理にかなっているのです。
19.むくみ対策になるカリウム入り

シャインマスカットには、ミネラルの一種である「カリウム」も含まれています。カリウムには、体内の余分なナトリウム(塩分)と水分を体の外へ排出してくれる働きがあるため、塩分の摂りすぎによる顔のむくみや足のむくみをスッキリさせる効果が期待できます。また、皮ごと食べることで食物繊維も一緒に摂取できるため、お腹の調子を整えたいときのおやつとしても優秀なフルーツです。
20.脳の栄養になるブドウ糖が豊富

そもそも「ブドウ糖(グルコース)」という名前は、ぶどうの果実から発見されたことに由来しています。もちろんシャインマスカットにもブドウ糖や果糖が豊富に含まれており、これらは体内で分解される手間がほとんどないため、食べてから素早く吸収されて脳や体のエネルギー源になるという特徴があります。仕事や勉強で頭が疲れたときや、スポーツの後の疲労回復に数粒つまむのはとても効果的ですよ。
21.1粒のカロリーは約7キロ

「あんなに甘いのだから、カロリーもすごく高いのでは?」とダイエット中に心配になる方も多いかもしれません。しかし、シャインマスカットは水分が多くを占めているため、100グラムあたりのカロリーは約60〜70キロカロリーほどです。大きさにもよりますが1粒(約10〜12グラム)あたりに換算すると約7キロカロリー前後しかありません。ケーキやスナック菓子を食べるよりもずっとヘルシーですが、食べすぎには注意して1日5〜10粒程度を目安に楽しみましょう。
22.巨峰を抜いて栽培面積日本一に

長年にわたり、日本のぶどう界では「巨峰」や「デラウェア」が栽培面積のトップを走り続けてきました。しかし、シャインマスカットは病気や実割れに強くて育てやすく、しかも高値で取引されることから、全国のぶどう農家がこぞって切り替えを進めました。その結果、10年ほどで栽培面積が約5〜6倍に急増し、2022年にはついに巨峰を抜いて栽培面積が日本一のぶどうへと躍り出ました。
23.主な産地は長野と山梨で過半数

現在、シャインマスカットが最も多く作られている都道府県はどこかご存じでしょうか。収穫量(出荷量)ではフルーツ王国である山梨県が1位、栽培面積では長野県が1位となっており、山梨県と長野県の2県だけで全国の生産量の半分以上を占めています。次いで山形県や岡山県が上位に入っており、これらの主要産地がリレーをするように出荷することで、私たちは長い期間美味しいシャインマスカットを味わうことができます。
24.岡山県の最高級ブランド晴王

マスカット栽培に130年以上の歴史を持つ岡山県では、シャインマスカットを「晴王(はれおう)」という独自のブランド名で出荷しています。「晴れの国おかやま」で太陽の光をたっぷり浴びて王様のように立派に育ったという意味ですが、名乗るには厳しい基準があります。糖度18度以上で1粒15グラム以上、さらに房の形や色ツヤまで厳選されたものだけが晴王として認められ、贈答用として絶大な人気を集めています。
25.農家にとっても育てやすい品種

シャインマスカットがここまで爆発的に普及した裏には、消費者だけでなく農家さんにとっても嬉しいメリットがありました。巨峰やピオーネなどの黒いぶどうは、実を綺麗に黒く色づかせるための温度管理や日照管理が非常に難しいという悩みがあります。しかし、シャインマスカットはもともと緑色の品種なので色づきを揃える着色管理の手間がかからないうえ、雨で実が割れる「裂果」も起きにくいため、栽培のハードルがぐっと下がったのです。
26.海外流出で種苗法改正の契機に

日本が33年かけて開発したシャインマスカットですが、2006年の登録当時は海外への輸出をほとんど想定していなかったため、海外での品種登録(育成者権の取得)を行っていませんでした。国際ルール上の出願期限が過ぎたことで、中国や韓国へ苗木が流出して現地で大量に無断栽培される事態となってしまいました。この苦い経験が大きな教訓となり、2020年には日本の優良な品種の海外持ち出しを制限する「種苗法」の改正へとつながりました。
27.ハウス栽培なら5月から出回る

シャインマスカットの旬といえば、露地栽培のものが一斉に収穫される8月下旬から10月上旬頃の秋のイメージですよね。しかし、最新の農業技術を使った加温ハウス栽培では、冬のうちからハウスの中を暖めて春の気候を再現することで、早いものでは5月頃から初夏のギフトとして出荷されています。また、収穫後に専用の冷蔵庫で眠らせる氷温貯蔵技術も発達しており、年末のお歳暮シーズンまで楽しめるようになっています。
28.犬には絶対に与えてはいけない

甘くてジューシーなシャインマスカットを食べていると、愛犬が欲しそうに見つめてくることがあるかもしれません。しかし、ワンちゃんにシャインマスカットをあげるのは絶対にNGです。ぶどうやマスカット、レーズンに含まれる成分は、犬が食べると重篤な中毒症状や急性腎不全を引き起こす危険があります。たとえ1粒であっても命に関わるケースがあるため、テーブルの上から落ちた粒を誤飲しないよう十分に注意してくださいね。
29.粒が落ちにくく輸送にとても強い

従来のぶどうは、流通の途中でトラックの振動などによって軸から粒がポロポロと外れてしまう「脱粒(だつりゅう)」が大きな課題でした。ところがシャインマスカットは、果肉がしっかり硬めで軸と粒が強く結びついているため、輸送中に粒が抜け落ちにくく日持ちも抜群に良いという強みがあります。この丈夫さがあったからこそ、全国のスーパーやネット通販、さらには海外輸出へと一気に販路が広がったのです。
30.赤いシャイン系品種も登場中

シャインマスカットの大成功を受けて、現在ではシャインマスカットを親として受け継いだ「次世代の新品種」が次々と誕生しています。例えば、農研機構が開発した赤色で大粒の「マスカットノワール」や、山梨県が開発した真っ赤な「サンシャインレッド」、長野県の「クイーンルージュ」など、皮ごと食べられてさらに糖度が高い赤いシャインマスカット系品種が注目を集めています。これからのぶどう売り場の進化からも目が離せませんね。
まとめ
シャインマスカットの雑学30選をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。何気なく食べていた一粒にも、33年におよぶ開発ドラマや農家さんの丁寧な手作業、そして美味しさを引き出すための科学的な理由がぎっしり詰まっていることがお分かりいただけたかと思います。
今度スーパーや果物屋さんでシャインマスカットを見かけたら、ぜひ「軸の緑色」や「黄色みがかった粒」、「白いブルーム」に注目して選んでみてくださいね。そして食べるときは、房の下から順番に食べていく美味しい裏ワザを、ご家族や友人との会話のネタとして披露してみてはいかがでしょうか。
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