新しい年の始まりを祝うお正月といえば、色とりどりのごちそうが詰まった「おせち料理」が欠かせませんよね。毎年何気なく食べている定番のメニューですが、実は具材の一つひとつから重箱の詰め方に至るまで、驚くほど深い意味や歴史の秘密が隠されていることをご存じでしょうか。
今回は、お正月の食卓で家族や友人に思わずクイズを出したくなるような、おせち料理の面白い雑学や由来に関する豆知識を30個厳選してご紹介します。知れば知るほどおせちがもっと美味しく、楽しくなるトリビアばかりですので、ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
1.元々はお正月限定ではない

現代では「おせち=お正月料理」というイメージが定着していますが、元々は季節の変わり目である「節日(せちにち)」に神様へお供えする料理全般を指していました。奈良時代や平安時代の宮中行事では、年に5回ある五節句などのたびにお供え物である「御節供(おせちく)」が振る舞われていたのです。時代が下るにつれて、1年で最も重要なお正月の料理だけが「おせち」と呼ばれるようになりました。
2.正式な重箱は実は5段重ね

デパートや通販などで見かけるおせちは3段重が主流ですが、日本の伝統的な正式スタイルは「五段重(ごだんじゅう)」とされています。上から順番に「一の重」「二の重」「三の重」「与の重」「五の重」と呼び、それぞれに詰める料理の役割が細かく決まっています。現代では核家族化が進んだことや、4段目を「四(死)」と忌み嫌う感覚から、奇数の3段重にまとめる形が一般的になりました。
3.4段目を「与の重」と呼ぶ訳

五段重のおせち料理では、上から4番目の段を「四の重」とは書かずに「与の重(よのじゅう)」という漢字を当てて呼ぶのが正式なマナーです。これは、日本では古くから「四」という数字が「死」を連想させる不吉な忌み数とされてきたためです。おめでたい新年の祝いの席で縁起の悪い文字を避けるため、同じ「よ」と読む「与」の字を使うという先人の細やかな配慮が込められています。
4.五段重の5段目は空っぽにする

正式な五段重のおせちでは、なんと一番下の5段目である「五の重」には料理を一切詰めず、空っぽの状態にしておくのが本来のしきたりです。これは「今はまだ一番上が満たされていない状態であり、これからさらに繁栄して年神様からたくさんの福を授かりますように」という未来への余白を意味しています。現在のお류や家庭では、5段目を控えの料理入れとして活用することも増えています。
5.黒豆の東西で異なるシワの意味

黒豆には「まめ(健康的・勤勉)に働けるように」という願いが込められていますが、その仕上げ方には関東と関西で「シワ」に対する考え方に大きな違いがあります。関東では「顔にシワが寄るまで長生きできるように」とあえてシワを残して煮ることがあるのに対し、関西では「シワが寄らないように若々しく」とふっくらツヤツヤに煮上げるのが良しとされています。
6.黒豆を黒くする釘の科学

黒豆を家庭で煮る際、錆びた鉄釘や南部鉄器を一緒に入れるという昔ながらの知恵があります。これは単なるおまじないではなく、黒豆の皮に含まれる「アントシアニン」と鉄分が化学反応を起こし、鮮やかな黒色を定着させるという科学的な根拠に基づいた調理法です。鉄イオンと結合することで色素が安定し、煮崩れや色あせを防いで美しいツヤのある黒豆に仕上がります。
7.数の子はニシンの卵である

プチプチとした食感が楽しい数の子は、子孫繁栄を願うおせちの定番ですが、実は「ニシン(鰊)」という魚の卵だということを知らない人も少なくありません。ニシンは漢字で「魚に春」と書くように春先に産卵のために北海道などの沿岸に押し寄せ、江戸時代には「カド(またはカドイワシ)」と呼ばれていました。その「カドの子」という言葉が訛って「数の子」になったと言われています。
8.田作りの材料はカタクチイワシ

甘辛く香ばしい「田作り(たづくり)」は、カタクチイワシの稚魚を乾燥させたものを調理した祝い肴です。かつて日本では、イワシを干したものを田んぼの高級な肥料として使っており、それを使った田んぼでお米が大豊作になったという歴史があります。この出来事にちなんで、五穀豊穣を願う縁起物として「田を作る=田作り」という名前でおせち料理に欠かせない一品となりました。
9.田作りの別名「ごまめ」の語源

田作りは地域によって「ごまめ」とも呼ばれますが、これは漢字で「五万米」と書き、お米が五万と収穫できることを願った言葉が語源とされています。また、古くは宮中で健康を意味する「御忠実(ごまめ)」という言葉が当てられていたという説もあります。小さな小魚でありながら、これほどスケールの大きな豊作と健康の願いが込められているのはとても面白いですね。
10.関東と関西で違う祝い肴三種

おせちの中でも特に重要な「祝い肴三種」ですが、実は関東と関西では3つのうち1つの具材が異なるという特徴があります。関東では「黒豆・数の子・田作り」の3品が定番ですが、関西では田作りの代わりに「たたきごぼう」が入るのが一般的です。かつての江戸が農경을重視した徳川のお膝元だったのに対し、京都を中心とする関西では公家文化の影響が強かったことが理由とされています。
11.栗きんとんは黄金の財宝を表す

子どもから大人まで大人気の「栗きんとん」は、漢字で書くと「栗金団」となります。この「金団」とは金の団子や金の布団という意味があり、輝くような黄金色を「金塊」や「小判」に見立てて、商売繁盛や金運上昇を願うおめでたい料理です。そもそも栗自体が古くから「勝ち栗」と呼ばれ、勝負運を高める縁起物として扱われていたため、お正月にこれ以上ないほどぴったりの一品なのです。
12.伊達巻の由来は伊達政宗の好物

ふんわりと甘く巻かれた「伊達巻」の名前の由来には諸説ありますが、有名なのが戦国武将・伊達政宗が好んで食べていた「平玉子焼き」に由来するという説です。また、長崎から伝わったカステラ蒲鉾が江戸に広まった際、当時の若者たちの間で「伊達者(オシャレで華やかな人)」という言葉が流行しており、「普通の卵焼きよりも華やかでオシャレな巻き物」という意味で名付けられたとも言われています。
13.伊達巻は巻物の書物を表す

伊達巻がおせち料理に入っているのは、その渦巻き状の形が昔の重要な文書や掛け軸である「巻物(まきもの)」に似ているため、知恵や学問の成就を願う意味があるからです。江戸時代以前は本といえば巻物の形をしており、それを食べることで「今年もたくさんの知識が身につき、教養が深まりますように」という願いが込められました。受験生や小学生のお子さんにもぜひ食べてほしい一品ですね。
14.伊達巻の焦げ目を外にする理由

伊達巻を重箱に詰める際、表面のギザギザした茶色い焦げ目が外側に来るように巻かれていますよね。これは単なる見た目のアクセントではなく、「粋(いき)で華やかな様子」をアピールするために、あえて焼き目を表に出して巻いているのです。通常の巻き寿司やだし巻き卵とは違い、「鬼すだれ」という太い竹のすだれで巻くことで、独特の波模様と立体感が生まれ、重箱の中を豪華に彩ってくれます。
15.紅白かまぼこの形は初日の出

おせちの彩りに欠かせない紅白のかまぼこは、半円の美しいシルエットが「初日の出」を象徴している縁起の良い食材です。さらに、赤(紅)色には「魔除け」や「慶び」、白色には「神聖」や「清浄」という意味が込められています。紅白かまぼこを交互に並べるだけでお正月らしい華やかさが出るのは、新しい年の太陽の昇る姿と、邪気を払って清らかな心で新年を迎える願いが表現されているからなのです。
16.昆布巻は語呂合わせの塊

ニシンや鮭などを昆布で巻いて煮込んだ「昆布巻(こぶまき)」には、複数の縁起の良い意味が重なっています。まず「こぶ」が「よろこぶ(喜ぶ)」に通じること、そして「広布(ひろめ)」という古名から「幸せが広がる」、さらには「子生(こぶ)」という当て字で子孫繁栄を願うという意味まで込められています。また、伊達巻と同様に「巻物」の形をしているため、学問成就の縁起物としても親しまれています。
17.エビは長寿と脱皮の象徴

おせちの重箱の真ん中でひときわ目を引くエビは、加熱すると背が丸くなり、長いヒゲがあることから「腰が曲がるまで健康で長生きできるように」という長寿の願いが込められています。さらにそれだけでなく、エビは成長する過程で何度も殻を脱ぎ捨てる「脱皮」を繰り返す生き物であることから、「古い自分を脱ぎ捨てて新しく生まれ変わる」「立身出世する」という発展の象徴ともされています。
18.レンコンの穴は未来を見通す

酢バスや煮しめに使われるレンコンには、輪切りにするとたくさんの穴が空いていますよね。おせち料理においてこの穴は、「向こう側がよく見える=将来の見通しがきく、明るい未来を見通せる」という大変縁起の良い意味を持っています。また、レンコンは泥の中で育ちながらも非常に多くの種(実)をつける植物であるため、どんな環境でもたくましく子孫を残す「子孫繁栄」の象徴としても重宝されています。
19.くわいは芽が出る出世の縁起物

お正月のおせち料理くらいでしか見かけない珍しい野菜「くわい(慈姑)」ですが、丸い塊から力強く伸びた1本の大きな芽が特徴的です。この独特な見た目から、「大きな芽が出る=おめでたい、仕事や学業で頭角を現して出世する」という立身出世の願いが込められています。調理する際も、この大切な「芽」が折れてしまわないように細心の注意を払って皮をむき、形を残したまま煮含めるのが習わしです。
20.里芋は子宝に恵まれる象徴

おせちの煮しめ(お煮しめ)に必ずと言っていいほど入っている里芋(サトイモ)。里芋は土の中で1つの「親芋」の周りに「子芋」、さらにその周りに「孫芋」と、驚くほどたくさんの芋が連なって育つ性質があるため、子宝や家族円満の象徴とされています。特に「八頭(やつがしら)」という品種の里芋は、親芋と子芋が分かれずに1つの大きな塊になることから、「人の頭に立つ(出世する)」という意味も持っています。
21.たたきごぼうは開運と家の安泰

関西の祝い肴三種にも含まれる「たたきごぼう」は、地中深くまで細く長く根を張るごぼうの性質から、「家族や家業がその土地にしっかりと根付き、代々安泰に続くように」という願いが込められています。さらに、茹でたごぼうをすりこぎなどで叩いて身を開く調理工程には、「身が開く=運が開く(開運)」というポジティブな意味が掛けられており、柔らかく味が染み込みやすくなる実用的なメリットもあります。
22.紅白なますは平和を願う水引

大根とニンジンを細切りにして甘酢で和えた「紅白なます」は、お祝いの封筒などに使われる「紅白の水引(みずひき)」を模した料理です。赤(ニンジン)と白(大根)の組み合わせが水引の紐のように絡み合うことから、家族の結びつきや家内安全、そして世の中の平和を願う意味が込められています。濃い味付けが多いおせち料理の中で、さっぱりとした酸味が箸休めとしても重要な役割を果たしています。
23.なますの語源は生の魚や肉

現在は野菜で作るのが一般的な「なます(膾)」ですが、実はその語源は古代に生の魚や獣の肉を細かく刻んで酢で和えた料理「なましし(生肉)」にあります。「なましし」が時代とともに「なます」へと変化し、江戸時代になって精進料理の広まりとともに野菜だけで作る「精進なます(大根とニンジンの紅白なます)」が定着しました。今でも漢字で「にくづき(月)」の偏がつく「膾」と書くのはその名残なのです。
24.ブリとタイが焼き物の定番な訳

おせちの二の重(焼き物の段)には、海の幸としてブリの照り焼きやタイの姿焼きがよく詰められます。ブリは成長するにつれて名前が変わる「出世魚」の代表格であることから、仕事での昇進や成功を願う「立身出世」の象徴とされています。一方のタイは、「めでたい」という直接的な語呂合わせはもちろん、赤い体色が魔除けを意味し、古くから神様への最高のお供え物として重宝されてきた歴史があります。
25.お煮しめを1つの鍋で煮る理由

おせちの三の重に詰められる「お煮しめ(筑前煮など)」は、レンコンや里芋、ごぼう、こんにゃくなど、山の幸を中心としたたくさんの根菜類を一緒に煮込みます。別々に煮た方が見た目は綺麗に仕上がりますが、あえて「1つの同じ鍋で一緒に煮込む」ことで、「家族みんなが仲良く結ばれ、一緒に末永く暮らせるように」という家族団らん・絆を深める強い願いが込められているのです。
26.おせちが日持ちする味付けの訳

伝統的なおせち料理は、砂糖や醤油、みりん、酢などをたっぷり使った濃いめの味付けや、しっかり火を通した料理ばかりですよね。これは冷蔵庫がなかった時代に保存性を高める知恵であると同時に、「お正月の三が日は家に年神様をお迎えしているため、台所で火や刃物を使って騒がしくするのを控える」という宗教的な習わしがあったからです。また、毎日家事をしてきた女性たちにゆっくり休んでもらうという意味もありました。
27.祝い箸が両細になっている秘密

おせち料理を食べる際に使う「祝い箸(柳箸)」は、普段の割り箸とは違い、両方の先端が細く削られた「両口箸(りょうくちばし)」という形をしています。これは、片方は人間が使うため、そしてもう片方の先端は「年神様(としがみさま)」が食事をするために作られているからです。「神人共食(しんじんきょうしょく)」といって、神様と同じおせち料理を分け合って食べることで、神様のご加護をいただくという意味があります。
28.祝い箸の反対側で取り分けない

大皿から料理を取り分ける際、お箸を逆さまにして太い方を使う「逆さ箸」をする人がいますが、お正月の祝い箸でこれをするのは絶対にNGなマナー違反です。先ほどご紹介した通り、祝い箸の反対側の端は「年神様が使うための神聖な場所」とされているため、そこを汚してしまうことになるからです。おせちを重箱から取り分ける際は、必ず専用の取り箸を用意して盛り付けるようにしましょう。
29.大晦日に食べる年取りおせち

おせち料理といえば「1月1日の元旦から食べるもの」というイメージが強いですが、実は北海道や東北地方、長野県などの一部地域では、12月31日の大晦日の夜からおせちを食べる習慣があります。これはかつての旧暦において「1日の始まりは日没から(大晦日の夜から新年が始まる)」と考えられていた「年取り(としとり)膳」の文化が、現代でも色濃く残っているためだと言われています。
30.百貨店おせちは戦後に始まった

現代では年末になるとデパートやネット通販で豪華なおせちを予約するのが当たり前になりましたが、重箱詰めのおせち料理が百貨店で本格的に販売され始めたのは、戦後の昭和30年代後半〜40年代頃と比較的最近のことです。高度経済成長期に女性の社会進出や核家族化が進み、「手間のかかるおせちを少しずつ多種類買いたい」というニーズに応えて誕生し、今では和洋中やキャラクターおせちなど多様な進化を遂げています。
まとめ
おせち料理にまつわる30個の雑学をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。黒豆や数の子といった定番の具材から、重箱の段数、さらには祝い箸の形に至るまで、日本の先人たちが込めた「家族の健康や幸せを願う温かい思い」と「粋な言葉遊びの知恵」がたっぷりと詰まっていることが分かりますね。
意味や由来を知ってから食べるおせち料理は、今まで以上に味わい深く感じられるはずです。ぜひ今度のお正月には、重箱を囲みながら「この具材の意味、知ってる?」とクイズを出して、ご家族や親戚、お友だちと一緒に楽しい新年のひとときを過ごしてみてくださいね!
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